新居レポート - 2009 第13戦 イタリアGP
イタリアGP 新居レポート
2009年9月14日
いつも、ご声援ありがとうございます。5月のスペインGPから始まった欧州各国を転戦するヨーロッパラウンドも、今回のイタリアで幕を閉じました。第13戦イタリアGPの舞台となったのは、ミラノ近郊の王立公園内にあるアウト・ドローモ・ディ・モンツァ。平均スピードが17戦中もっとも高い超高速サーキットということで、我々も特別仕様の空力パッケージで臨みました。それでは、さっそくヨーロッパラウンドの締めくくりとなったイタリアGPの模様を報告しましょう。
高さを増したシケイン。高速を保ちつつこのシケインをどう攻略するかがモンツァの鍵
超高速サーキット、モンツァを攻略するには、セクター1での最高速を伸ばすこと、そして今年から高くなったシケインの縁石を乗り越える能力がマシンに備わっていること。そう分析するヤルノは、母国グランプリへの自信をのぞかせていた。
ストレートをシケインと高速コーナーでつないだモンツァに向けて、例年どおりフロントとリアのウイングに関して、イタリアGP専用のものを持ち込みました。またノーズ下に装着しているターニングベインも若干手を加えました。コース自体には変更はありませんでしたが、3つあるシケインのうち、ひとつめとふたつめのシケインの縁石形状が変わりました。バルセロナの最終コーナー手前に設けられたタイプと同様に、通常の縁石の奥にもう一段高いマウンドが設けられたので、いつも以上にシケインの通過に関しては慎重さが必要となりました。
昨年は3日間とも雨にたたられましたが、今年は金曜日の夜に雷雨に見舞われたのを除いて、3日間ともドライコンディションのもと走行することができました。前回のベルギーGPではスタートとピットストップがうまく行かずに、せっかく手に入れた予選ポジションを活かすことができずに終わってしまっただけに、今回のイタリアGPでは前回の反省を活かしてなんとしてでも結果を出すつもりで臨みました。
セットアップのわずかな差が順位に大きく影響するサーキット特性。フリー走行で調整を煮詰める
低ダウンフォースという、似た特性を持つスパから調整を施したマシンに、前後のウイングとサイドパーツはモンツァ仕様のものを取り付けた。滑りやすい路面に苦労しながらも、金曜は予選に向けたセッティングに集中した。
前回のベルギーGPは金曜日の走り出しからクルマにスピードがあったのですが、今回のイタリアGPでは本来のスピードを取り戻すのに、少し時間を要しました。理由は、昨年までグランプリの直前にモンツァで合同テストが行われていましたが、今年はシーズン中のテストが禁止されたために、路面に例年のようなタイヤのラバーがのっておらず、滑りやすいコンディションとなっていたためでした。
そのため、フリー走行1回目が終了した後、メカニカルなセットアップを大きく変更して午後のフリー走行に臨みました。この変更が功を奏し、フリー走行2回目ではヤルノ(トゥルーリ)もティモ(グロック)も本来のスピードを取り戻すことができました。ただし、前回のベルギーGPほどのアドバンテージが今回のイタリアGPでは感じられなかったので、予選に向けてはさらにセットアップを煮詰めなければなりませんでした。今年の予選は非常に接近した戦いが繰り広げられているので、セッティングでのわずかな差が順位を大きく変動させます。だから我々としても気が抜けません。現在のF1はトップ10内からスタートしないとレースでは満足のいく結果を出せないので、厳しい戦いが予想される土曜日の予選で、なんとしてでも2台そろってトップ10内に入ることを目標にイタリアGP初日の作業を終えました。
1秒以内に19台がひしめいた厳しい予選。調整不足と不運が重なりQ3進出ならず
今回持ち込まれたソフト側タイヤは、周回数の半分程度、1ストップ作戦にも十分耐えられるとブリヂストンが事前に予想。このこともあって多くのチームが1ストップ戦略を採り、トヨタは作戦面で他チームと差をつけることができなかった。
金曜日のフリー走行1回目と2回目、そして土曜日午前中のフリー走行3回と、セッションごとにセットアップに変更を施し、クルマの状態は徐々に上向いていました。ただ、トップから1秒以内に19台がひしめき合った今回のイタリアGPの公式予選で、目標としていた2台そろってトップ10に駒を進めるためには、まだ少しだけクルマの調整が足りなかったことは認めなければなりません。
とはいえ、今回の予選では不運があったことも確かです。それはティモのQ1でのタイムアタックでした。最後のアタックのふたつめのシケインで、ミスをしてコースに復帰してきたセバスチャン・ブエミ(トロ・ロッソ)に進路をふさがれるような形となり、クリアラップを取ることができなかったのです。
これでヤルノの1台だけで臨んだQ2ですが、こちらも満足のいくアタックとはなりませんでした。Q2の1回目のコースイン時に装着したタイヤは硬いほうのミディアムでした。各ドライバーが1回目のアタックを終えた段階でヤルノのポジションは10番手。2回目は時間の問題から軟らかいほうのソフトタイヤを装着しました。ミディアムタイヤはタイヤが温まってクリックラップに入るまでに3周を要するためでした。2周連続でアタックをさせる予定でヤルノを送り出したのですが、もっともタイムが出る2回目のアタックでの第2シケインのブレーキングでわずかにミス。セクター1のタイムから自己ベストを更新することができないと判断して、途中でアタックをあきらめてピットインさせました。その時点ではまだトップ10をキープしていたのですが、最後にビタントニオ・リウッツィ(フォース・インディア)がヤルノを上回るタイムをマークしたため、残念ながらQ3へ進出することはできませんでした。10番手のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)とは100分の7秒差だっただけに、悔やまれる結果となりました。
前戦の反省を活かせず。スタート直後のポジション取りが課題
前戦に引き続き、スタート直後のポジション争いが課題として浮き彫りとなった。またセクター1を速く走れるように、マシンのダウンフォースを減らしきれなかったことも原因に。3レース続いてポイントを逃す結果となった。
決勝ではなんとかポイント圏内に足を踏み入れたかったのですが、スタート直後のポジション争いがうまくいかず、大きくポジションアップすることができませんでした。その後、レースは膠着状態となり、また周りのドライバーたちも皆、1ストップ作戦でしたから、為す術がありませんでした。
高速サーキットだった前戦ベルギーGPでの調子の良さを超高速サーキットである、今回のイタリアGPで維持できなかったのは、モンツァに投入したクルマが、ライバルたちよりもダウンフォース量が多い空力パッケージとなっていた可能性があります。そのため、予選ではセクター1でタイムをロスし、レースでは前のクルマをオーバーテイクするまでには至らなかったのです。
ヨーロッパラウンド最終戦となったイタリアGPをいい形で締めくくれなかったのが残念ですが、次戦シンガポールGPは昨年入賞している相性のいいサーキット。さらにシンガポールGPの後には2週連続開催として日本GPが控えていますので、鈴鹿につながるような戦いを行いたいと思っています。引き続きご声援よろしくお願いします。