新居レポート - 2009 第14戦 シンガポールGP
シンガポールGP 新居レポート
2009年9月29日
いつもご声援ありがとうございます。17戦で争われる09年のF1グランプリもヨーロッパラウンドが終了し、2週連続開催から始まるアジアラウンドに突入しました。その緒戦は昨年F1史上初となるナイトイベントを成功させたシンガポールGP。それでは、さっそく2年目の開催となったシンガポールGPの模様を報告しましょう。
“日本GP用”大幅仕様変更を実戦確認、シンガポールで投入
日本GPを見据えて、TF109に最後のアップグレードパッケージを使用し、大幅な改良を施した。リア周辺の空力を調整するため、リアウイングの中央にふたつ、新たなパーツが取り付けられている。
1週間後に日本GPが控えていることもあり、鈴鹿に投入するパーツを前倒しして、今回シンガポールに持ってきました。前後のウイングをはじめ、ディフューザーを含めたフロア、そしてエンジンカウルにも変更を加えました。さらにリア周りの空力を改良するために、リアサスペンションにも変更を加え、その周辺のパーツにもいくつか新しいものを導入しました。
シンガポールと鈴鹿ではエアロダイナミクス特性が異なるので、ウイングの角度は大きく変わりますが、全体的な空力パッケージは、鈴鹿を見据えた大幅なアップデートパーツを投入しました。今年、もっとも大きな変更といってもいいだけに、我々も非常に高い期待を持ってシンガポールに乗り込みました。
2台で異なるプログラムでセットアップを進めた初日。ティモの好調さに手応え
金曜日のフリー走行2回目から本格的なセットアップを開始。装着した新パーツがうまく機能していることを確認し、適切な方向性を見つけて満足していたティモとは対照的に、ヤルノはグリップ不足とオーバーステアに悩んでいた。
昨年のシンガポールGPはバンピー(デコボコ)な路面に手こずりましたが、今年は路面が再舗装されて、初日のセットアップはスムーズに行うことができました。金曜日のフリー走行1回目は、持ち込んだ空力パーツを比較したかったことと、赤旗が出てセッションが11分間中断したため、セットアップよりも空力パーツの比較を優先。メカニカルなセッティングは変えず、本格的にセットアップしていったのはフリー走行2回目でした。
その2回目のフリー走行ではティモ(グロック)の調子が良く、8番手のタイムをマーク。ただ、これも渋滞の中で出したものでしたので、土曜日に向けてはかなり手応えを感じていました。一方、ヤルノ(トゥルーリ)はティモとは異なるプログラムでセッティングを行いました。そのため正しい方向性を見つけるまでに少し時間がかかりました。結果、初日は13番手からのスタートとなりましたが、ティモがいい状態で金曜日の走行を終えているので、そのデータを元にすればヤルノも2日目以降はティモと同様、調子を回復してくれると思っていました。
昨年は1台(ティモ)しかQ3に進むことができなかったので、今年は2台そろってQ3に進出しようと、手応えをつかんで初日を終えました。
ティモがQ3進出。赤旗でアタックが阻まれたものの7番手タイムをマーク
ここを得意とするティモは予選Q1でのタイムをQ2で1秒縮める走りを見せた。新しいスーパーソフトタイヤでQ3アタックをしようとしていたところ、赤旗によりセッションは規定時間内に最後のアタックを行うことが不可能なまま終了。それでも7番手に入った。
土曜日は、Q3の最後に赤旗が出たために、ティモが最後のアタックを遂行できず、やや不満の残る予選となりました。あの赤旗でアタックが中断されなければ、あとひとつかふたつはポジションが上がったと思いますが、こればかりは仕方がありません。それよりも、シンガポールGPの予選はコース上が混雑していて、見た目以上に難しい戦いとなりました。
まずティモがQ1の2回目のアタックで渋滞に引っかかって15番手に終わったときは、ヒヤっとしました。またヤルノはコース上の混雑によってうまくタイヤを温めきれずに、いつものようなキレのあるアタックができずにQ2で脱落してしまいました。
逆にティモはQ2に入ってから、うまくタイヤのグリップ力を発揮できるようになり、Q1に比べて約1秒も記録を更新。ところが2回目のアタックになると、今度はグリップを使いすぎたのか、後半のセクターでタイムが伸びず、自己ベストを更新することができませんでした。それでも1回目のアタックでトップ10内をキープできる4番手のタイムをマークしていたので、5番手でQ3へ進出することができました。
Q3では満足なアタックができなかったものの予選で7位を獲得。予選後にルーベンス・バリチェロ(ブラウンGP)がギアボックスを交換して5番手降格することが分かったため、日曜日のレースは6番手からのスタートが予定されていました。久しぶりに表彰台を目指した戦いを繰り広げられると意気込んでいました。
鈴鹿スペシャルで2位表彰台を獲得、日本GPへの流れを作る
6台がリタイアするなか、冷静に走りきったティモ。昨年のハンガリーGP以来となる自身2度目の2位表彰台を獲得した。ヤルノは体調不良に見舞われながらも、予選ポジションから順位をふたつあげての完走となった。
日曜日のレース前に、予選8位のニック・ハイドフェルド(BMWザウバー)がエンジンとギアボックスを交換して、ピットレーンからのスタートとなったため、我々のスタートポジションはティモが6番手、ヤルノは14番手となりました。注目のスタートはレコードラインではないイン側からのスタートとなったにもかかわらず、ティモはアウト側から好ダッシュを決めたロバート・クビサ(BMWザウバー)をうまく押さえ込み、ポジションをキープしたまま3コーナーを通過。続く7コーナーで前を走るフェルナンド・アロンソ(ルノー)とマーク・ウェバー(レッドブル)がバトルした末、コースオフした隙にアロンソをパスして、5番手に浮上。この序盤の追い上げが非常に大きかったと思います。さらにウェバーが(レース審議委員会からの指示で)ショートカットで得たポジションを元に戻すためにアロンソの後ろに下がったので、ティモの順位は自動的に4番手へと押し上げられました。
その後、ティモは担当レースエンジニアからブレーキやタイヤの温度などをコントロールするように指示を受け、冷静なレース運びを展開。ニコ・ロズベルグ(ウイリアムズ)とセバスチャン・ベッテル(レッドブル)がペナルティを受けて降格していったため、ふたつポジションを上げて2位まで順位を上げることに成功しました。
一方、ヤルノは日曜日になって体調が再び悪化して、つらいレースとなりました。それでも最後までレースをあきらめず、チェッカーフラッグまでクルマを運んでくれました。12位という結果は決してヤルノにとって満足のいく結果はないでしょうが、いまは早く体調を回復させて、元気な姿で鈴鹿に戻ってきて欲しいと思っています。
鈴鹿スペシャルを一部、前倒しで投入して戦ったシンガポールGP。そして、そのクルマでティモが2位表彰台を獲得したことは、我々にとって大きな自信となりました。この調子で、次の日本GPでも表彰台を狙いたいと思っていますので、ご声援よろしくお願いします。