新居レポート - 2009 第16戦 ブラジルGP

ブラジルGP 新居レポート

2009年10月20日

いつもご声援ありがとうございます。F1グランプリは南半球へと戦いの舞台を移し、第16戦ブラジルGPを迎えました。今年のサンパウロは例年以上に天候が不安定で、難しいコンディションの中でグランプリが行われました。それでは、さっそくインテルラゴスで開催された第16戦ブラジルGPの模様を報告しましょう。

精密検査でティモに脊椎損傷が発覚。可夢偉がグランプリデビュー

ブラジルGPのレースレポートを始める前に、まず皆さんにお知らせしておかなければならないことがあります。今回のグランプリでは我々はヤルノ(トゥルーリ)とティモ(グロック)といういつものコンビではなく、ティモの代わりに小林可夢偉を加えて戦いました。日本GPの予選でクラッシュしたティモは、その後ドイツに帰国して再度、精密検査を受けた結果、脊椎に損傷があることが発覚しました。そのため、我々はティモのブラジルGP参戦を見合わせ、リザーブドライバーの可夢偉を代役に立てることにしました。
前戦の日本GPでも可夢偉は、体調を崩したティモの代わりに金曜日のフリー走行を走りましたが、そのときはあくまでも金曜日だけという前提だったので、基本的にクルマはティモの仕様で走ってもらいました。しかし、今回は可夢偉が3日間ともドライブするので、ステアリングなどを可夢偉の要求に合わせたものを持ち込みました。したがって、今回が可夢偉にとっての真のデビュー戦となります。ようやく手にしたチャンスですから、思い切った走りを期待していました。

得意なコースでセットアップ作業が順調のヤルノ。可夢偉もノーミスで初日を終える

にわか雨の影響で、トラック表面の状態が不安定なため、セッション中もコンディションが変わり、クルマのセットアップに苦しんだ可夢偉。しかしその中でもノーミスで確実に競争力を示した。

初めて走るサーキットでしたから、フリー走行1回目の可夢偉には、まずクルマとコースに慣れてもらうためにセッティングをいじらずに、完熟走行に徹してもらいました。午後に入ってからセットアップ作業を開始して、途中で土曜日の予選を見据えたパフォーマンスランを行ってもらいました。本人はセットアップ作業にてこずり、さらに一発アタック時に雨が落ちてきたりして、必ずしも満足のいく初日ではなかったと思います。それでも一日中小雨がパラつく難しいコンディションにコースアウトするドライバーが多かった中、一度もコースオフすることなく初日を終えた可夢偉の走りには、チームスタッフもあらためて高い評価を与えていました。
一方、ヤルノは昨年このブラジルGPの予選でフロントロウを獲得していただけあって、落ち着いたセットアップ作業で午後に6番手のタイムをマーク。今回グランプリが行われたインテルラゴスは鈴鹿よりも若干ダウンフォースレベルが軽い程度で、エアロダイナミクス的に鈴鹿と非常に似たキャラクターのサーキット。そのため、鈴鹿で力強い走りを披露したTF109の鈴鹿スペシャルパッケージは、このブラジルGPでも日本GPに比べて遜色のないスピードを発揮してくれるはずだと信じていました。

赤旗中断が長い予選で、集中力を維持し、4、11番手グリッドにつける

雨と赤旗で何度も中断し、長時間となった予選。集中力を切らすことなく、ヤルノはQ1、Q2を無難に突破。Q3では、インターミディエイト(浅溝)タイヤを履いたアタックで、4位グリッドを手に入れた。

今年のブラジルGPの公式予選は、赤旗中断が何度も出される非常に難しい状況の中で行われました。その中でヤルノは4番手で2列目を確保。可夢偉はあと一歩でQ3進出を逃したものの、初めての予選、しかもウエットコンディションの中で11番手を獲得して、さらにチームから高い評価を得ていました。
ただし、ふたりともあと少しというところで、本来得られるべきポジションを失ったという点ではフラストレーションが溜まる予選となりました。まずQ2でトップ10内にいながら、最後に11番手となってしまった可夢偉。最後のアタックで3コーナーにできていた水たまりに足をすくわれて体勢を崩したのが響いて、自己ベストを更新することができませんでした。あれがなければ、続くセクター2を自己最速で通過していただけにトップ10に入っていたでしょう。
一方ヤルノは最後のアタックに入る前に、前方を走るルーベンス・バリチェロ(ブラウンGP)との距離を保つために、少しスローダウンしたのが響いて、チェッカーフラッグが振られる前までにコントロールラインを通過できずに予選を終了しなければなりませんでした。とはいえ、雨が降るだけでなく、何度も中断して1時間41分も延長されるという難しい状況となった今回の予選で、ふたりのドライバーは大きなミスを犯すことなく、与えられた仕事はきちんとこなしてくれました。
シンガポール、鈴鹿とドライコンディションで2戦連続表彰台を獲得していましたが、今回雨の中でもTF109がコンペティティブであることが証明された土曜日の予選。日曜日のレースには、チーム初の3戦連続表彰台を目標に臨みました。

ヤルノは不運の接触で決勝リタイアも、可夢偉は攻撃的レースを披露

クルマは好調で、序盤はライバル選手とバトルを繰り広げる。1回目のピットストップでタイヤを交換すると、クルマのバランスが変わったように感じて、少してこずったため失速したと可夢偉。しかし最後まで攻め続け、トップ10でチェッカー。

決勝を4番手からスタートしたヤルノは、走行ラインではないイン側からのスタートとなり、斜め後ろのアウト側5番手からスタートしたキミ・ライコネン(フェラーリ)にかわされましたが、ほかのイン側スタートのドライバーと比べれば、それほど悪くないスタートを切っていたと思います。
問題が起きたのは6コーナーでした。直前の4コーナーで前にいたライコネンはスタート直後の接触でクルマにトラブルを抱えており、エイドリアン・スーティル(フォース・インディア)がオーバーテイクを試みたのですが、若干手間取りました。その隙にヤルノは5コーナーで、スーティルのアウト側に並びかけたのですが、不運にもそのまま2台は接触。燃料搭載量を考えれば、日曜日の決勝レースでヤルノは表彰台へ上がるチャンスが十分にあったと思います。
これでパナソニック・トヨタ・レーシングにとってのブラジルGP決勝レースは、可夢偉1台きりになってしまいましたが、可夢偉はヤルノの分まで積極的なレースを披露してくれました。特にレース序盤、セーフティカー解除後の走りは、まるでファイターのように攻撃的で、ピットガレージで戦況を見守っていたピットクルーたちはとても盛り上がっていました。
もちろん、初レースだったため、タイヤの使い方やピットストップの正確性など、課題はありますが、我々が予想していた以上のパフォーマンスを披露してくれたと思っています。
いよいよ次は最終戦アブダビGP。一年を締めくくるグランプリなので、持てる力を出し切って皆さんの期待に応えるような戦いをお見せしたいと思っていますので、ご声援よろしくお願いします。


インテルラゴスでの新居章年。TF109の仕上がりに自信を持って臨むも、不安定な天候や不運も重なり惜しくも3戦連続表彰台を逃す。次戦、1年を締めくくるアブダビに向けてチーム全員で最後まで全力を尽くす!

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2009 チャンピオンシップポイント

ヤルノ・トゥルーリ
32.5pt / 8th
ティモ・グロック
24pt / 10th
小林 可夢偉
3pt / 18th
59.5pt / 5th

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