伝統のインディ500 全米最大のレースへ3週間にわたる競演開幕
初参戦のトヨタエンジンも加わり オープニングとプラクティス
優勝者に代々伝えられる伝統のボルグワーナー・トロフィーを前に
集まった今年のインディ500に参戦する歴代のチャンピオン達
第87回インディアナポリス・500マイル・レース(通称"インディ500")が幕を開けた。今年も長い伝統にならって3週間の開催期間で盛り上がり、5月25日(日)に注目の決勝レースが行われる。
"インディ500"は、IRLインディカーシリーズの第4戦としての位置づけとなるが、アメリカで最も長い歴史を持つモータースポーツ、伝統の一戦でもある。毎年40万人もの観客を集め、莫大な賞金のかかるこのレースは、アメリカン・モータースポーツ最大のレースイベントとして、別格の存在であり、この一戦を制することは、モータースポーツに関わる誰もにとって大きな夢であり目標でもある。
昨年、7年越しの悲願であったCARTチャンピオンを獲得、今季から、IRLシリーズに参戦しているトヨタエンジンにとっても、大きな目標への初挑戦となる。
インディ500の歴史
-長い歴史と伝統を持つ、全米最大のレースイベント-
1909年に、フランスのル・マンで世界最初の「グランプリ」が開催されたその年、当時アメリカの自動車産業の中心地であったインディアナ州のインディアナポリスに巨大な"インディアナポリス・スピードウェイ"が誕生。3年後の1911年に煉瓦敷きの独特のコースで"500マイルレース"が開催された。当時は、500マイルを6時間42分で走破するという壮大な挑戦であったが、1950年から60年まではF1世界選手権の一戦に組み入れられるなど発展。
その後、60年代には、ジム・クラーク(65年)、グレアム・ヒル(66年)など多くのF1チャンピオンドライバーが"インディ500チャンピオン"を獲得し、偉大なレースとして名声を高めた。
経済恐慌や戦争による中断なども余儀なくされたものの、今年で87回目を数える"インディ500"は、毎年、戦没者追悼記念日(メモリアルデー)となる5月最終日曜日に、世界中の注目を集めて開催される。
インディ500の行われるブリックヤード
開催地:インディアナ州 インディアナポリス
1周2.5マイル(4.023km)のスーパースピードウェイであるインディアナポリス・モーター・スピードウェイは、1909年の開設当時は未舗装路面であった。しかし、間もなく320万個もの煉瓦を敷き詰めたコースへと変更された。このことから、アスファルト舗装に改善された現在でもこのコースは「ブリックヤード」と呼ばれ、その名残はスタート/フィニッシュラインの煉瓦の列に残されている。4つのコーナーを持ち、最大バンク角は9度。
コース:インディアナポリス・モーター・スピードウェイ
(2.5マイル:4.023km)
コースレコード:A.ルイエンダイク(2:31.908)
02年ウィナー:H.カストロネベス
02年PP:B.ジュンケイラ(2:35.6136)
エリオ・カストロネベス(ペンスキー・レーシング)のコメント:
初日から順調にクルマのセットアップを煮詰めることが出来た。トヨタ・エンジンは、パワフルで、まったく問題はない。今は、来週の予選用のクルマのセットアップに集中している。これから時間をかけて、ステップ・バイ・ステップで細かいセッティングを施す。さらにタイムを縮められる手応えは感じている。
ジル・ド・フェラン(ペンスキー・レーシング)のコメント:
心配をかけたが、怪我は完治した。レーシング・マシンに乗ったのは、フェニックスでのクラッシュ以来だが、まったく問題なかった。本当に早く復帰したかったから、今日が待ち遠しかった。
スコット・シャープ(ケリー・レーシング)のコメント:
プラクティス初日から、先週のテストでの好調を維持して結果を残すことが出来、とてもいい気分だ。チームは、今までの3レースで安定して実力を発揮しているので、心配はしていない。
トニー・レナ(ケリー・レーシング)のコメント:
昨年、6戦を戦ったケリー・レーシングから、初めて伝統の"インディ500"に参戦することが出来、とても興奮している。先日行われたルーキーテストで、初めてインディアナポリス・スピードウェイを走ったが、手応えを感じている。まだ、来週の予選に向けてやらなくてはならないことが山ほどあるが、最善を尽くす。
高木虎之介(モー・ナン・レーシング)のコメント:
先日のテストで、初めてこの"偉大なる伝統の舞台"を走ったが、いろいろな面で他のコースとは違い、とてもエキサイティングなコースだと感じた。クルマのセットアップが決まっているので、今日のタイムにも満足している。しかし、まだやらなくてはならないことがたくさん残されているので、じっくりと時間をかけてこなしていくつもりだ。長く厳しい3週間になると思うが、初めてインディアナポリス500に出場することが本当に楽しみだ。
アリ・ルイエンダイク(モー・ナン・レーシング)のコメント:
モー・ナンという素晴らしいチームから、"インディ500"に参戦できることを光栄に思っている。先日行われたテストでは、初めて乗ったトヨタエンジンの素晴らしさに本当に驚いた。良いチームと強力なトヨタエンジンを得て、とても心強い。チームメイトの高木虎之介とフェリペ・ジャフォーネとともに、これからの戦いが楽しみだ。1990年、1997年に引き続き、3度目の"インディ500・チャンピオン"獲得に向けて挑戦する。
服部茂章(A.J.フォイト・エンタープライズ)のコメント:
今年も世界最大の祭典"インディ500"に参戦することが出来て、本当に嬉しい。先日のテストでも2番手のタイムを記録し、幸先の良いスタートを切ることが出来た。これから1週間、予選に向けて、さらにクルマのセッティングを煮詰めていき、ダラーラとパノスGフォースのどちらのクルマを使うか、決めるつもりだ。まだ先は長いが、気を引き締めて、この3週間を有意義に使い、最良の結果を出せるように努力する。
リザルト
プラクティス1日目結果 | |||||||
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順位 | No. | ドライバー | シャシー | エンジン | タイム | 平均時速(マイル) | 周回数 |
1 | 8T | S.シャープ | ダラーラ | トヨタ | 39.3419 | 228.764 | 8 |
2 | 3 | H.カストロネベス | ダラーラ | トヨタ | 39.4585 | 228.088 | 26 |
3 | 12 | 高木虎之介 | パノスGフォース | トヨタ | 39.4937 | 227.884 | 49 |
4 | 26 | D.ウェルドン | ダラーラ | ホンダ | 39.5230 | 227.716 | 21 |
5 | 7 | M.アンドレッティ | ダラーラ | ホンダ | 39.5672 | 227.461 | 19 |
6 | 10 | T.シェクター | パノスGフォース | トヨタ | 39.6110 | 227.210 | 7 |
7 | 21 | F.ジャフォーネ | パノスGフォース | トヨタ | 39.6185 | 227.167 | 53 |
8 | 20 | A.ルイエンダイク | パノスGフォース | トヨタ | 39.6746 | 226.845 | 32 |
9 | 8 | S.シャープ | ダラーラ | トヨタ | 39.7767 | 226.263 | 12 |
10 | 5 | 服部茂章 | ダラーラ | トヨタ | 39.8140 | 226.051 | 12 |
14 | 10T | T.シェクター | パノスGフォース | トヨタ | 39.9925 | 225.042 | 7 |
15 | 6T | G.ド・フェラン | パノスGフォース | トヨタ | 40.0335 | 224.812 | 11 |
16 | 9 | S.ディクソン | パノスGフォース | トヨタ | 40.0799 | 224.551 | 12 |
17 | 32T | T.レナ | ダラーラ | トヨタ | 40.0890 | 224.500 | 11 |
18 | 31 | A.アンサー.Jr. | ダラーラ | トヨタ | 40.0915 | 224.486 | 26 |
20 | 9T | S.ディクソン | パノスGフォース | トヨタ | 40.2712 | 223.485 | 6 |
29 | 14 | A.J.フォイト4世 | ダラーラ | トヨタ | 84.1558 | 106.945 | 2 |
インディ500の特別ルール
-他のレースとは異なる、独特のルールとスケジュール-
"インディ500"は、その歴史、観客数などでも他のレースを圧倒する規模のレースではあるが、それだけに、イベントスケジュールやルールも独自のものを持ち、オープニングデーから決勝レースまでの期間は何と約3週間と長期にわたる。
まず、オープニングデーとなる5月4日(日)からプラクティス(練習走行)が開始され、5月10日(土)には、ポールデーと呼ばれる予選1日目が行われる。10マイル・ルールにより、その日、1周=2.5マイルを4周(合計10マイル)の計測を完了した車両台数分の順位が決定する。そして、ポールデーだけで33台に満たない場合は、タイムに関わらず、残りのグリッドを翌11日(日)の予選2日目で決定する。
しかし、それだけでは終わらないのが"インディ500"。"インディ500"の予選は、ドライバーではなく、出場車ごとに記録されるため、一人のドライバーが複数の出場車で出走したり、ドライバーを交代したりする事も珍しくない。
さらに予選が終わった後の5月14日(水)から17日(土)にかけて再びプラクティスが行われ、5月18日(日)には、バンプデーと呼ばれる"インディ500"独特なタイムアタックが行われる。ここで、ポールデーと予選2日目に決まった予選通過の33台よりも速いタイムを叩き出せば、予選通過車で遅いタイムのマシンから順次はじき出し(バンプ・アウトと呼ばれる)、予選通過を果たし決勝レースへと出場すことが出来る。
今年は、5月25日(日)に決勝レースが行われるが、表彰されるのは優勝した"チャンピオン"ドライバー1人だけであり、この英雄は、シャンペンファイトは行わず、伝統の"ミルク一気飲み"が見られるのも"インディ500"の特徴である。
インディ500日程表 | |||||
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5月4日(日): | オープニングデー/練習走行 | 今年のテーマである"アート・イン・エモーション"に沿ったセレモニーが行われ、練習走行が開始される。 | |||
5月5日(月)~9日(金): | 練習走行 | ||||
5月10日(土): | ポールデー (MBNAポール予選/練習走行) | この日、4周の平均が一番速かったドライバーがポール・ポジションを獲得し、ボーナス賞金の10万ドルを手にする | |||
5月11日(日): | 予選2日目 | ポールデーで33台に満たなかった場合、残りのグリッドを決定する。 | |||
5月12日(月)~13日(火): | 走行なし | ||||
5月14日(水)~17日(土): | 練習走行 | ||||
5月18日(日): | バンプデー(予選最終日) | この日、すでに予選を通過している車よりも速いタイムを出せば決勝グリッドに割り込むことができる。抜かれた車は決勝グリッドから脱落し、これをバンプアウトと呼ぶ。 | |||
5月19日(月)~20日(火): | 走行なし | ||||
5月21日(水): | 500フェスティバル・コミュニティ・デー | ||||
5月22日(木): | キャブレーション・デー | 最終練習走行、ピットストップ・コンテスト、コンサート | |||
5月23日(金): | 走行なし | ||||
5月24日(土): | ドライバーズ・ミーティング/500フェスティバル・パレード | ||||
5月25日(日): | 第87回インディアナポリス500マイル決勝レース | 現地時間 午前11時スタート | |||
トヨタエンジン搭載チーム/ドライバー(5月4日時点:暫定) | |||||
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チーム | ドライバー名 | ||||
マールボロ・チーム・ペンスキー | エリオ・カストロネベス | 01年、02年インディ500チャンピオン。前人未踏の3連覇を狙う。 | |||
ジル・ド・フェラン | 2度CARTのシリーズチャンピオン獲得。01年はインディ500で2位 | ||||
ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング | スコット・ディクソン | IRLデビュー戦で優勝。"もてぎ"での負傷から復帰 | |||
トーマス・シェクター | F1ドライバーJ.シェクターの息子。昨年IRLルーキーながら1勝 | ||||
ケリー・レーシング | スコット・シャープ | 前戦"もてぎ"で優勝。IRLの96年シリーズチャンピオン | |||
アル・アンサー・Jr. | 92年と94年のインディ500チャンピオン。CARTシリーズも2度制覇父はインディ500で4勝、叔父はインディ500で3勝をあげている | ||||
トニー・レナ | 昨年、ケリーレーシングより6レース参戦。インディ500は、初出場。4/21のルーキーテストに合格した。 | ||||
モー・ナン・レーシング | 高木虎之介 | アメリカン・レースは今季で3年目。インディ500は初挑戦 | |||
フェリペ・ジャフォーネ | 01年IRLルーキー・オブ・ザ・イヤー。昨年はIRLで1勝をあげる | ||||
アリ・ルイエンダイク | インディ500のみスポット参戦。過去2度インディ500チャンピオン | ||||
AJフォイト・エンタープライズ | 服部茂章 | 00年よりIRLシリーズ参戦。昨年のインディ500は20位 | |||
A.J.フォイト4世 | チームオーナーはインディ500で4勝の祖父。インディ500の決勝へ出場すれば史上最年少記録 | ||||
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伝統の一戦"インディ500"に初めて挑む"トヨタRV8I"