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ゾンタの金曜日
金曜日はサードドライバー、リカルド・ゾンタの日と言っても過言ではない。パナソニック・トヨタ・レーシングが好調の波に乗っている今シーズン、以前にも増して彼の役割が重要になってきている。ここでは、普段あまり目に触れることのない彼の仕事ぶりを紹介しよう。

「金曜日のサーキットはとても汚れているんだ。だから限界まで攻め込むことができない。ある意味ではフラストレーションが溜まるよ」と話すゾンタ。
「でもプラクティスでの僕のミッションは、タイヤの評価とロングランを行うこと。セットアップを見つけることではないから、これはある意味仕方ないことなんだ」
金曜日のフリープラクティスで3台目のクルマを走らせることができるのは、前年のコンストラクターズ・チャンピオンシップで5位以下だったチームだけだ。昨シーズン8位だったパナソニック・トヨタ・レーシングにとって、逆に今年はこのレギュレーションが好調を後押ししてくれるひとつの要因にもなっている。
 
――金曜日のゾンタは実に多忙だ。レースドライバーが使えるタイヤは1セットに限定されているため、サードドライバーであるゾンタは週末のレースに向けてロングランのタイヤ比較テストを行わなければならない。実際、コックピットで過ごす時間は、ヤルノやラルフよりも長くなるほどだ。

●タイヤの選択に大きく貢献しているゾンタ
ゾンタは計120分のフリープラクティスで、エンジニアと共にタイヤチョイス作業を行っていく。ニュータイヤを使用し、2種類のコンパウンドを比較する。単純にグリップレベルだけではなく、どれくらいの寿命が得られるかもテストしなければならない。

オーストラリアやバーレーン、そしてモナコやハンガリーでのレースは、コースが最初から埃っぽい。レースが進行するにつれタイヤのゴムが路面に付着し、コンディションはよくなっていくが、ゾンタは金曜日の時点でレースドライバーよりもいいタイムを出す場合がある。これについてマスコミが誤解することがあるらしい。

シャシー部門テクニカルディレクターのマイク・ガスコインは次のように説明する。
「リカルドはレースカーより高いエンジン回転数のクルマを使えるからね」
ガスコインは続ける。
「ゾンタは素晴らしい仕事をしているよ。レース用のタイヤチョイスに大きく貢献しているし、セットアップもさらに早くできるようになった。ただし3台のクルマは同じ状態ではないから、単純に比較することはできない」

3台目のクルマがより高いエンジン回転数で走れることについて、ルカ・マルモリーニ(エンジン部門テクニカルディレクター)はこう語る。
「レギュレーションの変更で、エンジンは2レースで1基しか使えなくなった。レース前にエンジンを交換すると、予選グリッドで10ポジションダウン、もしくは決勝グリッドで最後尾降格のペナルティが課せられてしまう。だから金曜日のプラクティスでは、レースカーのエンジン回転数は抑え気味にし、最高のパフォーマンスが必要になるまでストレスをかけないようにしているんだ。だからこそリカルドの走りが重要になる。実際に高い回転数で走行してみて、レースカーにリスクをかけずにセッティングできる数値を探し出さなくてはならない」

チームメートの走りをピットで見つめるゾンタ
 

●「獲得したポイントには自分の分も含まれているはず」
タイムシートの上位に頻繁に名前があがるゾンタ。彼は金曜日の午後、クルマから降りなければならないことが最も辛いという。
「レースドライバーに最後のチェックを任せ、自分はそこから去らなければならないんだ。土曜日以降はレースドライバー自身が、ベストチューニングを探し出していくからね」

もちろん、週末のミーティングにはゾンタも必ず出席する。だが、ヤルノとラルフが土曜と日曜日にサーキットを攻めている時、ゾンタは観客に戻り、彼らの走りを見守らなければならない。

「何もできないということも大変なんだ。もちろん技術的なミーティングには参加するし、インタビューとパドッククラブでのファンサービスも大切だよ。でも何もすることがない時間は好きじゃないんだ。いつも忙しく働くのが好きな性格なんだろうね」

  ファンとの交流もゾンタの大切な仕事のひとつだ。

シーズン中はテストとGPの週末が続き、リカルドがリラックスできる時間はそれほどない。それでも彼はF1以外のことも楽しんでいるようだ。
「それほど暇な時間はないけど、モナコのアパートにいる時はトレーニングを楽しんでいるよ。水泳と自転車、そしてランニングをやるんだけど、これは鍛えるためだけじゃなくて、僕の楽しみでもあるんだ。リラックスできるからね」とゾンタ。

スケジュールについてはこんな風に語っている。
「いろんなサーキットでドライブするチャンスがあることは嬉しいし、チームの開発に貢献できることも光栄だよ。でも4日間のテストは長く疲れてしまうこともあるし、移動時間が多いのもちょっと大変かな」

だがゾンタは、自分の役割がパナソニック・トヨタ・レーシングにとって重要であることを理解している。チームの一員として自分の仕事に誇りを持っているからだ。最後に彼はこう語った。
「全力でテストに臨んで、信頼性とパフォーマンスの向上に取り組むのはとても楽しい仕事だ。自分の仕事は成功するために不可欠なものだと思ってる。レースで獲得するポイントは、チーム全体の努力の結晶でもあるんだ。その中には僕の分も含まれているはずさ」

この記事は「OneAim」のバックナンバーに掲載された記事を抜粋し、再構成した
ものです。

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