みなさん、こんにちは高橋敬三です。今回のこのコーナーでは、鈴鹿GPプレビューというテーマにて、鈴鹿サーキット攻略を報告いたします。観戦時の注目ポイントとしてご覧頂けたらと思います。
●コースの特徴と対策
日本GPの行われる鈴鹿サーキットは、F1が行われるコースの中でも屈指のテクニカルコースのひとつです。エンジニアにとっても、セッティングするのが難しいコースと言えます。シケインやヘアピンのような低速コーナーから、S字コーナーのように3、4速で回る中速コーナー。そして時速280キロは出る130Rのような高速コーナーまで、あらゆるタイプのコーナーがあるからです。クルマの空力にしても、メカニカルにしても、非常に高い次元でのバランスが要求されます。
例えば、低速コーナーならサスペンションは柔らかめにして、トラクションで稼ぎたい。逆に高速コーナーはサスペンションを硬めにして、車を安定させたい。そのバランスをどこに持っていくかで悩みます。セッティングをどこかひとつのコーナーに合わせては駄目で、全体的に良くしないといけないのです。
空力にしても、鈴鹿は比較的ハイダウンフォースですが、2本あるストレートも長いため、最高速も伸ばしたい。だから、ダウンフォースがあってかつドラッグの少ない効率の良い空力セッティングをしたいのです。エンジニアにとっては、あれもこれもというような欲張りな要求を求められるコースなのです。
●予選とレースの戦略は?
路面のグリップは比較的高く、そのためタイヤの磨耗がレースでもポイントになります。特にリアタイヤの磨耗が気になるところです。今年の1セットで予選、決勝を持たせなければならないレギュレーションだと、非常に厳しいかもしれませんね。この辺は戦略とも密接に関係してきます。鈴鹿はピットでのロスタイムが比較的短く、一方、燃料エフェクトが大きいため、2回、もしくは3回ストップのサーキットです。タイヤの負担を考えると、3回ストップも十分ありえる戦略だと思います。
鈴鹿はコース幅が狭く、追い越しが難しいコースでもありますから、予選でのポジションが重要になってきます。その意味では、燃料を軽くして予選をやる戦略が有効でしょう。唯一のオーバーテイクポイントはシケインの入り口です。130Rをうまく立ち上がって、シケインのブレーキングで抜き去る。可能性は低いですが、ヘアピンのブレーキングもオーバーテイクポイントでしょう。観戦時にはそれらのポイントに注目して下さい。
●TF105と鈴鹿の相性は良好
ここはドライバーにとっても非常に難しく、攻め甲斐のあるサーキットです。コーナーの半径が途中で変わる複合コーナーが多いため、ドライビングのリズムがとても大事になります。ひとつのコーナーでリズムが狂うと、その3つ、4つ先のコーナーまで影響し、大きくタイムをロスしてしまいます。でも、今年のドライバー、ヤルノ、ラルフともに鈴鹿を得意としていますので、その辺の心配はしていません。昨年、急遽TF104で走ったヤルノは予選で6番手に入る速さを見せてくれたし、ラルフも1年間日本で走っていますから鈴鹿は慣れたものです。ただ、過去3年間の鈴鹿でトヨタはあまり良い結果を出していません。最初の年はマクニッシュがクラッシュして、決勝レースに出られませんでした。昨年は予選6位を獲りながらも、決勝はペースが安定せず、順位を落としてしまいました。
しかし、今年はかなり自信を持っています。ここまで好調なこともありますが、今年のクルマが鈴鹿と相性が良さそうだからです。昨年までの弱点といわれていたダウンフォースも、今年のクルマはトップレベルの性能を持っていますし、路面がスムーズな鈴鹿のコースにも向いています。鈴鹿までにはⅤ10エンジンの最終バージョンともいえるエンジンを投入する予定ですし、空力パーツもギリギリまで開発を続けるつもりです。鈴鹿スペシャルというよりは、TF105の最終進化形態を持っていくつもりでいます。
●皆さんの応援は大きな力
日本GPといえども、19戦のうちの1戦でしかないという考え方もありますが、我々にとって、やはり日本GPは特別なグランプリの一つです。それは多くのファンが素晴らしい応援をしてくれるからです。毎年、1コーナーにはトヨタの大応援席ができますし、すばらしい速さを見せたドライバーには分け隔てなく多くのファンが声援を送ってくれるからです。今年はなんとしてもいい結果を残し、その応援に応えたいと思っています。
もちろん、シリーズ終盤でチャンピオンシップのコンストラクターズでの争いは白熱しており、そう簡単には結果を出さしてはもらえないと思っています。フェラーリもBSタイヤの地元で、多くのデータを持っているでしょうし、BARもホンダのホームコースだけに気合を入れてくるはずです。マクラーレン、ルノーは相変わらず鈴鹿でも速いでしょう。その一角を崩して、表彰台をとるのは非常に厳しい戦いでもあると思います。そうした中で、今年はハイレベルな戦いをお見せすることができるはずです。応援、よろしくお願いします。
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