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[ビデオ特集] One Team, One Aim:
2008年10月6日(月)チーム一丸となり、唯一の目標に挑む パナソニック・トヨタ・レーシングの本拠地はドイツのケルンに位置していると言えます。ただし、その精神的な中心となっているのは日本です。だからこそ、日本GPはチームにとって非常に特別なイベントなのです。 チームは1979年以来、ドイツを拠点にしていますが、現在に至るまで日本とは強い結びつきを保っています。そして2008年の現在もその結びつきの深さは変わりません。日本とチームのつながりは、近年、“トヨタウェイ”がケルンの拠点にも益々取り入れられるようになると共に一層強化されています。 トヨタウェイの理念に従うパナソニック・トヨタ・レーシングは、今シーズン、調子を取り戻してきました。2度の表彰台を獲得した他、コンストラクターズ選手権では4位争いを展開しています。TMG会長兼チーム代表の山科忠にとって、その理由は明白です。 「我々の結果が上向いてるのにはいくつか主立った理由がある」と話す彼。「一つはチームのオペレーション、つまりチームワークだ。今は全員が協力してチームを引っ張っている。これにはレースの現場に赴く人間とファクトリーに留まる人間の両方が含まれる。オペレーションが改善されたため、誰もがチームをより良くするために仕事をしてくれている」 改善、つまり継続的な向上作業は、トヨタウェイの哲学の礎石と言えるものです。そしてこの哲学がパナソニック・トヨタ・レーシングにおいてもまた重要な基本理念になっているのです。では、この理念はチームのテクニカルセンターでは実際の所、どのような形で実現されているのでしょうか? 山科忠は単純明快にこう答えています。「他者と情報交換をして自分の仕事を楽しむという原則が、トヨタの基本だ」 この哲学の一端の表れとして、彼は一つのオフィスをチームのトップマネージメントの面々と共有し、直接的なコミュニケーションができるようにしています。こうして他者に対し心を開く態度を見せることによって、革新が加速し、そして将来の成功の種まきができるのです。 「どれだけ相手が遠くにいようと、日常業務のコミュニケーションは電子メールでできる」と続ける山科忠。「だが実際に顔を突き合わせて話し合いをすれば、人はすぐに結束することができる。誰かに直接何かを伝えたいと思ったら、その場ですぐにできるわけだからね」 「もう一つ言えるのは、みんなの日々の仕事に自分も一層関わるようになるということだ。我々3人が同じ部屋にいるということは、つまり、社内の別の場所で何が進行中なのかをより良く理解できるということでもある」 30カ国以上の人々が働くパナソニック・トヨタ・レーシングは、F1における国際連合のようなものです。ケルンの約650名のスタッフのうち日本人も多くいますが、山科忠は各国出身のスタッフ全員がお互いから貴重な教訓を学んでおり、それがチームにトヨタならではの可能性を生み出している、と信じています。 「日本人エンジニアたちの強みは、彼らがトヨタウェイのやり方で仕事をした経験を豊富に持っていることだ」と話す彼。「ヨーロッパやその他の国々出身のエンジニアたちの強みは、F1やその他のモータースポーツで長年仕事をしてきた経験があることだ。我々はそれぞれの強みを組み合わせ、たとえばトヨタ流の仕事のやり方が一番適切な場合は日本人エンジニアたちが同僚にそのやり方を教え、F1流のやり方が最適な場合はこちらのエンジニアたちから学ぶようにしている。そしてそこで学んだことを日本にフィードバックしている。ここではこうしたミックスしたアプローチを採っているわけだ」 チームにいる日本人は、エンジニアとメカニックだけではありません。日本人ドライバー、小林可夢偉もいるのです。彼はチームのサードドライバー務めている他、GP2でも成功している新進気鋭のスターです。 日本の兵庫県出身で22歳の彼は、今シーズンのGP2アジアシリーズとGP2の両方で優勝しています。しかも今シーズンは、F3ユーロシリーズからステップアップした初年度なのです。F1への非公式な人材供給カテゴリーとも言えるGP2だけでは物足りないと言わんばかりに、彼はテスト走行での仕事を通じて今シーズンのパナソニック・トヨタ・レーシングの好調振りにも貢献しています。 可夢偉のF1への道程は、数年に及ぶトヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム(TDP)と共にありました。TDPの枠組みはトヨタにとって可能な限り最高のドライバーを輩出するように作られていますが、可夢偉が日本人だという事実は嬉しいボーナスと言えるでしょう。 「トヨタのクルマに日本人ドライバーが乗り、選手権を勝ち取るのは我々トヨタの夢だ。そして現在、我々にはテストドライバーの小林可夢偉がいる」と話す山科忠。「チームは彼をすぐ後ろで支えており、彼がトップドライバーになれることを期待している。ただし、私が彼を優先的に扱うことは決してないし、彼が日本人だからという理由で我々のクルマをドライブさせることもない。彼には一生懸命働き、そして実力でそこまで辿り着け、と言っている」 もちろん可夢偉は一生懸命に仕事をしています。既に今年の彼はGP2のレースを30戦走り、また、パナソニック・トヨタ・レーシングのために11日間のテストをこなしています。「小さな頃からF1ドライバーになることを夢見てきた」と話す彼。「いわゆるTDPオーディションに14歳で合格し、それ以来ずっとトヨタと共にある」 「こうした環境で仕事ができることがどれほど幸運なことなのかは十分に理解している。特にそれがプレッシャーにはなっていないが、ただし、自分自身には常にプレッシャーを与えているし、また、これほどのレベルに到達できた自分が、他人より遥かに幸運だったということを忘れてはいない」 「今はF1でのレースに近づいているし、そこまでなんとか突破しようと努力している。世界で僅か20人のドライバーしか参加できないF1という舞台に立つということが、どれほど素晴らしいことなのか理解している」 彼の急速な成長については言うまでもなく、パナソニック・トヨタ・レーシングでの彼の努力については多くの人が感心しています。 TMG副社長の木下美明はこう語っています。「彼は素晴らしく聡明だ。特に突出しているのは彼の最初の周回だ。レースがスタートした直後の1周目に、ドライの状況なら3台は抜いてくるし、ウェットの場合なら7台から10台も抜いてくることがある。私はこれまでこんなドライバーは見たことがない」 技術コーディネーション担当ディレクターの新居章年はこう話しています。「ドライバーとしてのスキルと判断力の部分について、彼は大きく向上している。彼がこの調子を続けることができて、そしてレースで良い結果を出してくれるのであれば、私としては何も不満はない」 “大きな改善”はパナソニック・トヨタ・レーシング全体に浸透しているテーマですが、ただし、これが意図しているのは過去12カ月間における大幅な進化だけではなく、これから続く年月への野望のことでもあるのです。
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