|
[ビデオ特集] パナソニック・トヨタ・レーシングの着実な進化
2008年10月27日(月)パナソニック・トヨタ・レーシングの歴史上、2008年シーズンはこれまでで最も大きな成果を残した2005年に次ぐシーズンとなっている。だがチームは決して2番手を目指しているわけではない。 ブラジルGPまでの17戦で既に2度の表彰台と52ポイントを獲得しているこの結果には、チームが大きく進歩したことが如実に表れている。過去2シーズンは、合計で表彰台が1度、48ポイントを獲得するにとどまっていた。 TF108は強力なパフォーマンスを発揮すると同時に、高い信頼性を維持している。ブラジルまでの17戦でメカニカルトラブルのためにリタイヤしたのはわずか3度に過ぎない。 だがパナソニック・トヨタ・レーシングは勝つために存在している。たとえシーズン前に立てた“表彰台に戻り、ポイント合計を増やす”という目標が達成されたとはいえ、未だ満たされていない欲求がチームを継続的な改善へと駆り立てている。 「二人のドライバーが今年表彰台に戻れたのは素晴らしいことだし、クルマも表彰台を狙えるようになっている。だから今年ここまでは良いシーズンだった」と話すTMG社長のジョン・ハウエット。「だが将来目指しているのは表彰台の真ん中の1番の位置だ。我々が将来レースで勝利し、ワールドチャンピオンになれるという私自身の思いに疑いはない」 今季ここまで目立つのはもちろんフランスとハンガリーでの表彰台獲得だが、更に深く統計データを分析してみると、ほぼ全てのコースでTF108の競争力が非常に高いことが分かる。シーズンの大部分においてマクラーレン・メルセデス及びフェラーリに一番近い挑戦者となっているのはTF108なのだ。また、ブラジルGPを前にしたこの時点で9度のトップ6入りと14度のポイント獲得を達成している。 こうした大きな進化は一夜にして成し遂げられるものではない。これは2006年12月にTF108のデザインが決定されて以降、ドイツはケルンにあるテクニカルセンターで働く総勢650名のスタッフ一人一人が何カ月にも亘って努力した結果なのだ。 トヨタウェイの方法論と情熱と献身的な姿勢を基礎に、チームはTF108のコンセプトを練り上げ、その後冬の間にテストコースでクルマに磨きをかけ、更にシーズン中は常に広汎な開発プログラムを推し進め、ほぼ全レースでアップグレードしたパーツを投入してきた。 ジョン・ハウエットが語る。「一番大きな根本的要因と言えるのは、パフォーマンスに繋がる分野に、適切な数の人員がいるということだろう」 「我々には以前よりも遥かに詳細かつ膨大なデータベースがあるため、あらゆるコースについてもっと良く分かっているし、どんな要素がパフォーマンスの鍵になるのかもよく理解できている。基本的に我々のファクトリーにはあらゆる部署に非常に優秀な人材がおり、彼らが重要な仕事を担ってくれている」 「従って我々にはスキルがあるし人材も揃っている。今年の我々のパフォーマンスが向上している理由は、様々な要素の一つ一つ全てが改善しているからだと思う。幾つかの要素だけではなく、全ての要素が改善しているわけだ。全周回の全コーナーで100分の数秒を稼いでおり、それが大きな違いになっている」 つまり、あらゆる要素が適切な形で揃い、そしてトヨタウェイが、創造力とエネルギーを純粋な進化へと繋げていく独特のアドバンテージをチームにもたらしているのだ。更なる効率改善を目指し、また、改善のための継続的な探究心を刺激するトヨタウェイは、オープンな仕事文化をもたらしてくれる。そういった場では諸々の問題が素早く解決され、恒常的に開発が続いてくのだ。 「これはマネージメント哲学ではなく、チーム哲学だ。数多くの流行のマネージメントのアイディアと違うのはその点だ」と話すチームマネージャーのリチャード・クレーガン。「トヨタウェイはいわば生き方であり、物事のやり方であり、それがチームを運営していく際の根源的な考え方になっている。私の目から見ると、この考え方は非常に多くの面で成功しており、特に人々を結束させ、一つのチームとして機能させるために役立っている。今年我々が大いに成功しているのは正にこの点だと私は思う」 2008年シーズンのもう一つポジティブな要素と言えるのが、ドライバーのティモ・グロックとヤルノ・トゥルーリのパフォーマンスだ。この二人は若さと経験の完璧な組み合わせであることを証明しており、コース上ではお互いと競い合い、コースの外では共にTF108を改善するために協力している。 TMG会長兼チーム代表の山科忠はこう説明している。「年齢をあまり強調したくはないが、ドライビングに対するティモの新鮮なアプローチがヤルノを刺激し、そしてヤルノは自分の経験に基づいた様々なことをティモに教えている。二人のドライバーは各々の長所を生かしながら、我々のために懸命に仕事をしてくれている」 リチャード・クレーガンがこう付け加える。「我々には非常にコミュニケーションが良好な二人のドライバーがおり、彼らは一緒になってクルマの開発を行っている。彼らはエンジニアとしっかりコミュニケーションを取り、チーム全体ともお互いともちゃんとコミュニケーションしている。また彼らは頻繁にファクトリーにも足を運んでいる。例えばティモは現在ケルンに住んでおり、市内にいる時はいつも普通の従業員のようにファクトリーに出入りしている。これが全員にとって大きなモチベーションになっていると思う」 2008年シーズンの最終戦に向けて、チームのモチベーションは高まっている。パナソニック・トヨタ・レーシングは良い結果と共にシーズンを締めくくれることを願っているが、一方でF1は決して立ち止まることがない世界だ。それゆえ、チームは既に未来の成功を目指して多大なエネルギーを傾注している。 ジョン・ハウエットがこう結んだ。「チーム内の雰囲気は成功のバロメーターだと思う。成功している時にチームを鼓舞するのは容易だ。私にとって本当に励みになるのは、組織全体のあらゆる要素が一つになって機能していることだ。現在、我々には完全に結束した組織があり、そして勝利という明確なビジョンと共に障壁は打ち破られつつある」
|