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バーレーンGP レースの舞台裏
2008年4月7日(月)

●レースの舞台裏

競馬はスポーツの王様と言われていますが、今回ティモはバーレーン王室の厩舎を訪問する機会に恵まれました。4つの車輪を持つ乗物ではなく、4つの脚を持つサラブレッド数頭を間近で見ることができたのです。なかには高さが180センチもある馬もいたせいか、ティモとしては(怖じ気づいたわけではないのですが)V8エンジンの馬力の方が好みだったようです。「“乗ってみて”とは言われなかったよ」と笑顔のティモ。「いずれにせよ乗りたいとは思わなかったけどね。実は子どもの頃、馬に乗ろうとしてそのまま反対側から滑り落ちたことがあるんだ! TF108ならいつでも歓迎だけど……」

チームのサードドライバー、小林可夢偉はサクヒールで開催されたGP2アジアの日曜日のレースでまたもや優勝を飾りました。彼は土曜日の第1レースでも、ロメイン・グロージャンとセバスチャン・ブエミに次ぐ3位を手にしています。マレーシアの日曜日のレースで優勝している可夢偉は、これでGP2アジアシリーズの6位に浮上し、2位までわずか6ポイント差まで迫っています。

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース
予選ではポーランド人ドライバーのロバート・クビサが最速ラップを記録し、BMWザウバーに初のポールポジションをもたらしました。レースのスタートで激しくホイールスピンした彼は、マッサのフェラーリに1コーナーで先行されてしまいます。続く2周目のターン10ではオイルに乗ってしまい、ライコネンにもかわされました。その後、力強いペースで走り抜いたクビサは、チームメートのニック・ハイドフェルドを抑えつつ、2位のフェラーリからわずか3.4秒遅れの3位でフィニッシュ。この結果BMWザウバーは11ポイントを手にし、コンストラクターズ選手権でフェラーリに1ポイント差、マクラーレン・メルセデスに2ポイント差をつけてトップに浮上しました。パナソニック・トヨタ・レーシングは合計8ポイントで5位となっています。

オーストラリアとマレーシアで2戦連続ノーポイントだったフェリペ・マッサですが、バーレーンGPでは2年連続優勝を飾り、喜びを隠せない様子でした。「人生では良い時も悪い時もあるが、開幕から2戦は何かと流れが悪かった」と認めるマッサ。「そういった状況はこれが初めてじゃないし、最後でもないわけだから、とにかく乗り越えていくしかない。こうやって優勝できたのは素晴らしいし、スタートから全てが上手く進んでくれたお陰で、このグランプリで2勝目、そして今シーズン初ポイントを手にすることができた」

マクラーレン・メルセデスの2人のうち、バーレーンでポイントを獲得できたのはヘイッキ・コバライネンだけでした。ルイス・ハミルトンはスタートでアンチストールシステムが作動してしまい、出遅れてしまいました。その後、フェルナンド・アロンソのルノーの後部に追突したハミルトンはフロントウィングを痛めてしまいます。緊急ピットインしてフロントノーズを交換した彼は、13位でフィニッシュとなりました。

レッドブルのマーク・ウェーバーは、ヤルノから4.1秒後方でフィニッシュし、2戦連続7位となりました。「中団グループはかなりの接戦だが、チームのみんなは週末の間ずっといい仕事をしてくれた」と話す彼。「私はとにかく自分の仕事に集中して、レースの間は最後までトヨタを追走したが、追い抜ける程速くはなかった」

●レースリポート

2008年FIA F1世界選手権第3戦バーレーンGPでは、ヤルノ・トゥルーリが6位でフィニッシュし、パナソニック・トヨタ・レーシングに2戦連続のポイントをもたらしました。オーストラリアとマレーシアでリタイヤに終わり、厳しいシーズンの滑り出しとなっていたチームメートのティモ・グロックも力強いレース運びを見せ、ポイント圏内にあと1歩の9位でフィニッシュとなりました。

予選でヤルノは今回もまた素晴らしいパフォーマンスを発揮し、サクヒールの7番手グリッドを獲得。ポールポジションのBMWザウバー、ロバート・クビサまではコンマ9秒差でした。ティモは13番手からレースをスタートしています。

「良いスタートを切り、1コーナーでは2つ順位を上げた」と説明するヤルノ。彼はスタートで出遅れたルイス・ハミルトンをかわし、更にニック・ハイドフェルドのBMWザウバーも追い越していたのです。2周目にハイドフェルドに順位を明け渡したものの、その後もヤルノはプッシュを続け、20周目に1回目のピットストップを行った時点で依然として2台のフェラーリと2台のBMW、それにマクラーレン・メルセデスのヘイッキ・コバライネンに次ぐ6位をキープしていました。

第2スティントでもヤルノは力強い走行を続け、43周目に2回目のピットストップを行った時も、前を走るコバライネンのマクラーレンからそれ程大きく引き離されてはいませんでした。その後、ヤルノは57周のレースの最後までその順位を守り抜いたのです。

「再び安定した走りでトップ6入りできたのはとてもうれしい」と喜ぶヤルノ。「我々はトップ3チームのすぐ後ろにつけていたし、これが考えられる最善の結果だった。自分とチームの両方にとってこの結果は大きな励みになる。また、スペインでヨーロッパラウンドが始まるまで3週間あるが、その間に行われるバルセロナテストに向けて更なる刺激になった。レース序盤は幾分ニコ・ロズベルグのプレッシャーに晒される場面もあったが、自分のクルマが速くてバランスも良く、またレース戦略も良いとわかっていた」

ティモは2周目までにトップ10に浮上し、2回のピットストップ(24周目と44周目)を行った今回のレース全般を通じて、ロズベルグや元チャンピオンのフェルナンド・アロンソとバトルを繰り広げました。

「1周目は第1~第2セクターでオイルに乗った各車がお互いと接触していたが、あれはちょっと面白かったね」とティモ。「幸いにも私はそれに巻き込まれることなく、レースを最後まで走り切る経験を積めたのは良かった。マレーシアでは自分の失敗ではなかったもののレースがすぐに終わってしまったからね。クルマに関しては全体的に満足していた。ただし、1回目のピットストップの後、ギアボックスにちょっとした問題が生じて、そのせいでロズベルグを追い抜いて最後の1ポイントを手にするチャンスを失ってしまった。このため私はアロンソの追撃をかわすためがんばらなければならなかったが、嬉しいことに最後まで上手く抑えることができた。近いうちにヤルノと同じくポイントを手にできることを楽しみにしている」

フェリペ・マッサとキミ・ライコネンはフェラーリに1-2フィニッシュをもたらし、また3位と4位にはBMWザウバーのロバート・クビサとニック・ハイドフェルドが入っています。コバライネンのマクラーレンとヤルノのTF108に続いたのは、レッドブルのマーク・ウェーバー、そしてウィリアムズのロズベルグが最後の1ポイントを手にしています。

シャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーのパスカル・バセロンは次のように語っています。「ヤルノは今回も力強いパフォーマンスを見せてくれたし、また、リタイヤするクルマが少ないレースで3ポイント獲得できたのは我々にとっても良かった。ティモも、1回目のピットストップの後に生じたギアボックスのちょっとしたトラブルがなければ、ポイントを獲得できるはずだった。このため予備の戦略に切り替えることになったが、それがなければニコ・ロズベルグを追い抜くことができただろう。我々の方が4~5周分燃料が多かったし、ティモの方が速かったからね」

ヨーロッパから遠く離れた“フライアウェイ”の3レースを終え、これからF1世界選手権はヨーロッパへと戻ります。次戦のスペインGPは、バルセロナにて4月27日に決勝レースが行われます。