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モナコGP レースの舞台裏
2008年5月25日(日)


●レースの舞台裏

いつもながらモナコでは、コース上でもそれ以外の場所でも、チーム全員が慌ただしい週末を送ることになります。パドックとガレージがお互いにかなり離れた位置にあるため、チームスタッフ全員がF1カレンダーのどのレースよりも長い距離を歩くことになるのです。

ですがモナコでは楽しめることも色々とあります。パナソニック・トヨタ・レーシングのドライバー、トップマネージメント、テクニカル部門の代表者たち全員が、金曜夕方にモンテカルロの桟橋に停泊したエボンダックスのヨットで素晴らしいひとときを楽しみました。

モナコはF1がどういったものなのかを披露する最適の場所ですし、また、エボンダックスとのパートナーシップへのチームの感謝の気持ちを表すのにも最適の場所です。

ヤルノにとっては忙しい週末となりました。彼は金曜日のヨットでのパーティーに姿を見せただけでなく、サッカーのチャリティマッチにも参加しています。

更には、フランスのテレビに出演し、ヤマハのバイクに乗って金曜日の朝にモナコ公国のストリートを走ったりもしました。色々と大変だった彼ですが、この際にアルパインスター社製の新製品を一式もらっています。

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース

マクラーレン・メルセデスのドライバー、ルイス・ハミルトンは生涯の夢だったモナコGP優勝を達成し、これによりドライバーズ選手権でトップに返り咲きました。

「間違いなく、これは僕の人生のハイライトだ」とハミルトン。「モナコのF1レースはたくさん見てきたし、F3とGP2のレースではここでも勝っている。でもここでグランプリを勝つのは夢だったんだ。レース序盤に壁に当ててしまったけど、でもずっと勝つ自信があった」

これでハミルトンは38ポイントとなり、ディフェンディングチャンピオンのキミ・ライコネンが35ポイント、フェリペ・マッサが34ポイント、ロバート・クビサが32ポイントとなりました。またマクラーレンはコンストラクターズ選手権で2位に浮上しています。こちらはフェラーリが69ポイント、マクラーレンが53ポイント、BMWザウバーが52ポイントとなっています。

BMWザウバーのドライバー、ロバート・クビサはマレーシアGPに続いて今シーズン2度目の2位を獲得しています。「今日は2位ができ得る限り最善の結果だったと思う。だからハッピーだよ。我々は安定した結果を残してきているし、これは良い徴候と言えるね」とクビサ。

ただし彼のチームメートのニック・ハイドフェルドは今シーズン2度目のノーポイントに終わっています。予選でトップ10入りを逃した彼は、タイヤの熱入れに問題を抱えていたとされています。また、レース序盤にはロウズヘアピンでルノーのフェルナンド・アロンソから追突されました。

フランク・ウィリアムズはモンテカルロでF1参戦600戦目を祝いました。フェラーリは1950年からずっとF1世界選手権に参戦していますが、エンツォ・フェラーリは1988年に他界していますので、サー・フランクは現在どのチーム代表よりも数多くのF1グランプリを経験していることになります。

フォースインディアのエイドリアン・スーティルは素晴らしいドライビングを続けていましたが、それも徒労に終わってしまいました。レース全般を通じて一つのミスも犯さなかった彼は4位が確実かと思われていたのですが、残り9周の時点でキミ・ライコネンに追突され戦列を離れなければなりませんでした。ニコ・ロズベルグのアクシデントによるセーフティーカーピリオドの後、ライコネンは港側のシケインでのブレーキングでコントロールを失い、そのままフォースインディアのスーティルに追突してしまったのです。

●レースリポート

劇的な展開となったモナコGPでしたが、パナソニック・トヨタ・レーシングはノーポイントでレースを終えることとなりました。2時間のレースを戦い抜いたティモ・グロックとヤルノ・トゥルーリはそれぞれ12位と13位でした。

F1で最も華やかなモナコGPですが、今回は週末を通じて不安定な天候の影響を受け、2004年のモナコ覇者であるヤルノは、コースが乾いている時もグリップ不足を訴えていました。それでも予選では今シーズンずっと継続しているトップ10入りを果たし、8番グリッドからのスタートとなりました。ティモは0.07秒差でトップ10入りを逃し予選を11番手で終えました。

レースは路面が濡れている状態でスタートとなり、このためヤルノはブリヂストンのウェット用ポテンザタイヤで走行を始め、序盤は力強リ走りを見せ6位で周回を重ねました。またティモもヤルノに続いて周回を続けました。

デビッド・クルサードのレッドブルとセバスチャン・ブルデのトロ・ロッソがマセネと呼ばれるコーナーでクラッシュしセーフティーカーが出動した際、チームはヤルノをピットインさせ、荒天用のエクストリーム・ウェットタイヤに交換しました。

一方でティモは4周目にラスカセでスピンし、フロントウィングを失ってしまいました。様々なアクシデントが起こった今回のレース中、彼は更に2度スピンすることになります(ミラボーで1回、港側のシケインで1回です)。

「とにかく私にとっては良い一日じゃなかった」とティモ。「ポイント獲得も可能だったはずだが、とにかく余りにも多くのミスをしてしまった。チームに対してすまないと思っている。良いスタートを切り、1コーナーまでにウェバーを追いこした。2~3周後にスピンを喫し、ピットに戻らなければならなかった。第1スティント用にエクストリーム・ウェットに交換したが、コースが乾いていくにつれあのタイヤでは困難になっていった。我々のピットストップから間もなくして更にコースが乾き、その後ドライタイヤに交換するため再びピットインした。その後はとにかくクルマをゴールまで導いただけだった。次回はもっと良いレースをしたいね」

予定通りの2度目のピットストップをした際、ヤルノはエクストリームからスタンダード・ウェットタイヤに交換。その後最後のピットストップではコース上に乾いた走行ラインが出来てきたため、柔らかめのオプション・ドライタイヤに交換しました。しかしレース前半に渋滞でタイムを失っていたため、ポイント圏内には届きませんでした。

「厳しい週末になったし、とにかく状況が自分たちの都合の良い方向に転がってくれない一日だった」とヤルノ。「ある段階では非常に激しい雨が降っていたため、我々はエクストリーム・ウェットタイヤで走る賭けに出た。最初のうちはそれが功を奏し、他車より速く走ることができたし、何度か良い形で追い越しもできた。だがその後雨がやみ、乾き始めたコースをエクストリーム・ウェットタイヤで走るのは非常に苦しかった。残念ながらこのコ?スでは常に渋滞に捕まってしまうし、ピットストップの間にかなりの順位を失ってしまった。レースの最後に向けて、我々はドライタイヤを装着し、私はゴールまでクルマを運んだ」

TMG会長兼チーム代表の山科忠は、ポイントを逃した落胆のレースからチームを確実に立て直すため、ファクトリーで相当量の開発作業を行うことを明らかにしています。

「予選で示したパフォーマンスを続けていれば、数ポイントを手にできていたはずだ」と彼。「だが実際にはとても難しい一日になった。二人のドライバーは共に良いスタートを決め、レース序盤は調子が良さそうだった。だがその後ティモが何度かスピンを喫した。これは我々も予期していなかった。ヤルノもまたコ?スが乾いた際、エクストリーム・ウェットタイヤで速く走れず苦闘した。今回はクルマに対して二人のドライバーが自信を持つことができず、また一方で我々のタイヤ交換の戦略が今回直面した天候変化に適していなかった。そのためあらゆる場面でレースの流れが悪い方向へ行ってしまった。我々はたくさんのことを分析しなければならない。カナダではもっと良いレースをすべく、我々はプッシュし続けていかなければならない」