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カナダGP レースの舞台裏
2008年6月8日(日)


●レースの舞台裏

移動手段としてのTF108に満足できなかったティモは、木曜日の夜に2階建てバスに飛び乗り、モントリオールの市街地を周遊しました。実はその頃には既にこの“トヨタ・ファン・バス”が地元の人々や観光客に強烈な印象を与えていました。このバスは月曜日から運行を開始し、モントリオールの繁華街を観光案内よろしく走り回っていたのです。車内は熱狂的なファンで埋め尽くされ、誰もがパナソニック・トヨタ・レーシングの赤と白で着飾っていました。

このバスの登場がモントリオールでのグランプリウィークの始まりを告げ、そしてファンの皆さんは無料で配布されたトヨタギフトをこぞって手にしていました。そして木曜日、サプライズとしてティモがバスに姿を見せたのです。彼はファンと一緒に周遊を楽しみました。

その場の雰囲気に溶け込んだティモはバスの上階のデッキから集まった人々にフリーギフトを投げてあげました。この間、彼はずっとダンサーの女性と音楽に囲まれていました。その上ティモはデッキの上でDJの腕前まで披露してくれたのです。

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース

カナダGPにてBMWザウバーは新たな歴史を作りました。ロバート・クビサがポーランド人として初優勝を遂げ、同時にチームにも初優勝をもたらしたのです。

1993年にザウバーとしてF1に登場して以来、モントリオールでのレースの前までBMWザウバーは一度も勝っていませんでした。しかし今回のクビサは、タイトル争いをしているルイス・ハミルトンとキミ・ライコネンが珍しい形のクラッシュで姿を消すと、レースを支配しそのまま優勝したのです。

1回目のピットストップの際、フェラーリのライコネンが最初にピットレーンの端にたどり着いたのですが、赤信号のためその場に停止しなければなりませんでした。セーフティーカーに先導されたマシンが通過している最中だったからです。しかしマクラーレン・メルセデスのハミルトンはその状況に素早く対応することができず、ライコネンのクルマの後部に突っ込んでしまいました。そしてその場で2台ともリタイヤとなったのです。

これにより優勝したクビサがタイトル争いの単独トップに浮上しました。クビサが42ポイント、ハミルトンとマッサが38ポイントです。チームメートのニック・ハイドフェルドが2位に入ったため、BMWザウバーはコンストラクターズ選手権でもトップのフェラーリに3ポイント差まで詰め寄っています。今回唯一マッサが5位でレースを完走したフェラーリは73ポイントです。パナソニック・トヨタ・レーシングは17ポイントで5位に浮上しています。

●レースリポート

モントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキットで開催されたカナダGPにて、パナソニック・トヨタ・レーシングは見事2台そろってポイントを獲得しました。

難しい状況の中、ティモ・グロックは素晴らしいドライビングをみせ、F1における自身最高の結果を手にすると共に、4位に入賞し今季初ポイントを獲得しました。またヤルノも6位に入賞し、チームが素晴らしい成功を手にした一日に大いに貢献してくれました。

レースのスタートではティモが11位から14位に順位を落とすなどしたため、こういった好結果が手にできそうには思えませんでした。一方でヤルノは1周目にティモを追い越し、14位から13位へ浮上しました。

しかし今回のカナダGPの行方を決めたのは戦略でした。そしてヤルノとティモはいずれも完璧な選択をしていたのです。二人は燃料が重い状態でレースをスタートし、1回ストップで走り切る戦略でした。エイドリアン・スーティルのリタイヤにより17周目にセーフティーカーがコースに入ると、2回ストップを選択していた各車はピットインし始めたのですが、この間にトヨタの2台は大きく順位を上げることに成功します。

ヤルノは6位、ティモもすぐ後ろを走行していましたが、戦略が他車と異なっていたお陰でその後も二人は順位を上げていきました。そして他のドライバーがピットストップを行ううちに、トヨタの2台は突然1位と2位になっていたのです。

ヤルノは39周目に唯一のピットストップを行いましたが、その直前に2周に渡ってトップで周回しました。続いていたティモもまたピットストップの前に2周に渡りトップを走りました。ヤルノより第1スティントを長めにしていたティモはヤルノの前でコースに復帰し、この時点で11位と12位になりました。

すでに予定のピットストップを終えていた二人にとって、残された仕事は前を行くクルマから離されないようについていき、そして2回ストップの各車がピットインした際に更に順位を上げることでした。フェルナンド・アロンソと中嶋一貴がリタイヤすると更にポイント圏内が近づいてきました。そして各車2度目のピットストップが53周目に訪れます。

これによりティモとヤルノは5位と6位に浮上。そして59周目にルーベンス・バリチェロがコースオフすると、更に1つずつ順位を上げました。

しかしレース終盤、フェラーリのフェリペ・マッサが追い上げを見せ、残り僅かというところでヤルノを追い越しました。ターン2でティモ・グロックがやや大回りをしてしまった際に、ヤルノのインをつかれた形になってしまったのです。しかしティモは最後までマッサを封じ込め、価値ある4位を手にしました。ヤルノも6位に入ったことでチームはコンストラクターズ選手権で8ポイント手にしました。

ティモのコメントです。「今回のようなコース状況の中、クルマをコースアウトさせずに走らせるのは本当に大変だった。1度ミスしてしまい、その際にヤルノが順位を一つ落としてしまったが、あれは残念だった。その後、私はミスなく走ってマッサの前のポジションを維持すべくがんばったよ。その結果が4位だったんだ。チームにとっても、私を担当しているクルーにとってもこれは素晴らしい結果だった。私のエンジニア、フランチェスコとデータエンジニアのヨシは、この数週間ずっと完璧な仕事をしてくれた。そして私のメカニックたちもね。獲得したポイントは彼らにあげたいと思う」

そしてヤルノはこう続けました。「厳しいレースだった。クルマに対し自信が持てなかったから、とにかく狙いはクルマをゴールまで導くことだった。全体的に言って私はとてもハッピーだよ。クルマの中ではあまり自信が持てなかったが、最後にポイントを獲得でき、チーム全体にとってとてもいい結果になったからね」