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フランスGP レースの舞台裏
2008年6月22日(日)


●オベの思い出に……

オベ・アンダーソンの急逝を受けて、フランスGPの週末を通じパナソニック・トヨタ・レーシングのチーム内には厳粛な雰囲気が漂っていました。チームの初代代表であり、また、ヨーロッパにおけるトヨタのモータースポーツ活動の礎を築いた父でもあるスウェーデン出身の彼は、6月11日、南アフリカにて天に召され、マニクールでは誰もがその逝去を悼みました。

オベの思い出に敬意を表すべく、チームメンバーは全員が腕に黒い喪章を巻き、また木曜日のチームミーティングでは1分間の黙祷が行われました。TF108のモノコック周りとピットガレージの内装にも喪章を示す黒い線が入れられました。

モーターホームには弔問帳が用意され、他チームの代表、元ドライバー、メディア関係者らを含むF1界の面々が哀悼の意を表しました。入り口付近はオベの思い出で飾られ、また彼の元同僚達は彼のモータースポーツに対する情熱に思いを馳せると同時に、モータースポーツにおける彼の功績に対し最高の敬意を払っていました。

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース

フランスGPではフェラーリのフェリペ・マッサがチームメートのキミ・ライコネンを抑えて優勝し、タイトル争いのトップに浮上しました。

これで彼は48ポイントとなり、一方今回5位だったBMWザウバーのロバート・クビサは46ポイントとなりました。レース中にエギゾーストパイプに問題を抱えトップを明け渡したライコネンは43ポイントです。

フェラーリはコンストラクターズ選手権でも91ポイントでトップ。2位は74ポイントのBMWザウバーです。今回マクラーレン・メルセデスはヘイッキ・コバライネンが4位、ルイス・ハミルトンが10位となり、58ポイントで3位につけています。

パナソニック・トヨタ・レーシングは今回ヤルノが3位に入賞したことで4位のレッドブルまであと1ポイント差に迫っています。レッドブルはマーク・ウェバーの6位入賞により24ポイント、一方でパナソニック・トヨタ・レーシングは23ポイントです。

ルノー勢はネルソン・ピケJr.がチームメートであるフェルナンド・アロンソの一つ前の7位でフィニッシュしています。

●レースリポート

フランスGPでは、レース全体を通じて素晴らしいドライビングを見せてくれたヤルノ・トゥルーリのお陰で、パナソニック・トヨタ・レーシングが表彰台へ返り咲きました。ヤルノの最高のドライビングは3位に相応しい見事なものでした。

予選を素晴らしい走りで終えたヤルノはこれにより4番グリッドを獲得し、ポイント獲得の大きなチャンスを手にします。レースではスタート直後の1コーナーで3番手スタートのフェルナンド・アロンソをかわし、表彰台圏内に浮上。そのまま1周目を3位で通過しました。

ですがその直後からアロンソが大きなプレッシャーをかけ始めたため、簡単な展開にはなりませんでした。しかしヤルノは懸命に戦い続けてライバルを封じ込め、その後、小さなギャップを築いていきます。

その頃、8番グリッドからスタートダッシュを決めたティモも6番手に浮上。彼もまた他車との大接戦を繰り広げていました。

20周目に1回目のピットストップを行ったヤルノは引き続きブリヂストン・ポテンザ・タイヤのプライム(硬めのタイヤ)を選択。1周後にピットストップしたティモも同様の選択をしました。

ティモはタイヤのめくれ摩耗に苦しみ、各車が1回目のピットストップを終えると順位を落としてしまいます。それでも彼はポイント圏内を維持し、オプションタイヤ(柔らかめのタイヤ)に交換すべく最後のピットストップを行った時点では7位でした。

同じような戦略で走っていたヤルノは表彰台を目指して猛烈にプッシュしていました。2回目のピットストップを終えると4位に後退した彼ですが、前を行くヘイッキ・コバライネンもまたもう1度ピットストップを行わなければなりませんでした。そして彼がピットストップを終えると、カーナンバー11のヤルノのクルマが3位に浮上。これはチームの素早いピットストップ作業とその前後のヤルノの速いラップの賜物でした。

そしてレース最後の数周は、表彰台の最後の一角を目指し、コバライネンが激しくヤルノを攻め立てるバトルが続きました。残り2周となった際、コバライネンはヤルノの横に並びましたが、ヤルノはしっかりと自分のポジションを守り抜き、最後までその座を譲りませんでした。

ヤルノは喜びを爆発させたチームの面々の目の前でゴールラインを通過し、表彰台に上がりました。そして3位のトロフィーを受け取ると、元チーム代表である故オベ・アンダーソンにその成果を捧げました。その姿はチームの面々の胸に響くものがありました。

「これはチーム全体の力がもたらした本当に素晴らしい結果であり、本当に素晴らしい週末となった」とヤルノ。「トヨタのモータースポーツ活動に対し多大な貢献をしてくれたオベ・アンダーソンにこの結果を捧げたかったから、チーム全員が本当に全力で仕事をしていた」

「素晴らしいレースだったが、厳しくタフな展開だった。自分達より速いクルマと戦わなければならなかったが、我々にもかなりの速さがあった。ずっとバトルを強いられたが、でもそれこそ正に私とチームに期待されていることでもあるからね」

ティモはタイヤの問題に苦しみ、11位でフィニッシュとなりました。「自分にとっては難しい一日だった」と彼。「良いスタートを切り、第1スティントはクルマの感触も良くて、どんどんプッシュすることができた。ところが最初のピットストップの後、タイヤにめくれ摩耗が生じたため同じ速さで走るのが難しくなり、その後、アンダーステアが生じてしまった」

「でもヤルノが3位に入り、表彰台を獲得できたのは素晴らしいことだ。彼とチームにとって完璧な結果となったね。最後のテスト以来、我々は明らかに進化しているし、これだけの速さがあるのだから、今後のレースでは私も更に良い結果を残せるよう決意を新たにしている」

TMG会長兼チーム代表の山科忠は今回、トヨタ自動車株式会社の株主総会のため、日本からこのレースを観戦。このため2006年オーストラリアGP以来パナソニック・トヨタ・レーシングにとって最高の結果となったこのレースに立ち会うことはできませんでした。彼はチームに祝福の言葉を贈っています。社長であるジョン・ハウエットはチームの喜びについて次のように語っています。

「トヨタのモータースポーツに関わる全ての人々にとって、今日は素晴らしい一日となった。長らく表彰台から遠ざかっていたが、この結果はオベ・アンダーソンに捧げたい。彼はチームに多大な貢献をしてくれたし、多くの人々が彼の不在を寂しく思うことだろう」

「クルマを改善すべく懸命に仕事をしてくれたファクトリーの面々とレースチーム、テストチームの全員におめでとうと言いたい」