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ハンガリーGP レースの舞台裏
2008年8月3日(日)

●レースの舞台裏

ドイツGPで高速アクシデントに見舞われたティモ・グロックでしたが、その後、後遺症もなく、ハンガリーGP直前のヘレスではしっかりとテストをこなしました。またハンガリーの金曜朝にはFIAの医療スタッフによる公式検査をパスし、ドライブが正式に許可されました。

この件についてティモはこう話していました。「一番大変だったのはアクシデントの後にたくさん取材を受けて、同じ質問に答えなければならなかったことだ。あのアクシデントでは、最初、自分がミスをしてカーブをちょっとはみ出したのが原因かなと思ったけど、でも実際にはメカニカルトラブルがあったと説明を受けた。実はテストでの食あたりの方が酷かったくらいだけど、でもメディアの見出しを飾るのはクラッシュではなく、良いパフォーマンスをした時の方が良いね。だからハンガリーは遥かに良かったよ!」

シャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーのパスカル・バセロンはこう付け加えました。「アクシデントが起こる前のホッケンハイムでのティモのパフォーマンスはかなり力強かったし、ハンガリーでは素晴らしい仕事をし、予選5番手を獲得した。これはここまでの彼の予選の最高位だ。レースが始まる前の段階から、既に彼は好調振りを発揮していたんだ!」

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース

今回はレースが残り3周となった時点でトップに浮上したボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのヘイッキ・コバライネンが初優勝を飾りました。予選では昨年のモンツァ以来初めてマクラーレンの2台がフロントローを独占したものの、レースではフェラーリのフェリペ・マッサに苦しめられました。ルイス・ハミルトンは激しく追い上げたものの、第2スティントで左前輪がパンクするまでずっと2位に甘んじるしかありませんでした。彼はその後5位に落ちています。

スクーデリア・フェラーリ・マールボロのドライバー、フェリペ・マッサにとっては胸の痛い結果となりました。彼は予選こそ3番手でしたが、素晴らしいスタートを切り、直後のターン1までに2台のマクラーレンをかわしたのです。彼はルイス・ハミルトンに対して僅かな余裕を築き、その後、ハミルトンがタイヤのトラブルに見舞われると完全にレースのコントロールを握りました。しかし、チェッカーまで残り僅か3周となった時、マッサのクルマのエンジンが壊れてしまいました。ワールドチャンピオンのキミ・ライコネンはマッサのペースについていけませんでしたが、レース中、ずっと続いていたルノーのフェルナンド・アロンソとのバトルに勝ち、表彰台の最後の一角を手にしています。

ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスやパナソニック・トヨタ・レーシングと同様に、INGルノーF1チームもまたハンガリーでは2台そろってポイントを獲得しました。アロンソは予選7番手からスタートし、決勝では4位となり、一方、ドイツGPで驚きの2位を獲得したネルソン・ピケJrは6位入賞を果たしました。彼は最後のピットインの直後に、ヤルノ・トゥルーリのTF108の目の前でコースに復帰し、ヤルノの猛追をはねのけました。

ハンガリーGPの結果を受けて、ルイス・ハミルトンが67ポイントでタイトル争いのトップを守り、2位の57ポイントのキミ・ライコネンとなりました。3位は54ポイントのフェリペ・マッサ、続いて49ポイントのロバート・クビサ、41ポイントのニック・ハイドフェルド、38ポイントのヘイッキ・コバライネン、22ポイントのヤルノ、18ポイントのアロンソとマーク・ウェーバー、13ポイントのティモとピケとなっています。コンストラクターズ選手権ではフェラーリが111ポイントでトップ、続いてマクラーレンが100ポイント、BMWザウバーが90ポイント、パナソニック・トヨタ・レーシングが35ポイント、ルノーが31ポイントとなっています。

●レースリポート

FIA F1世界選手権第11戦ハンガリーGPではティモ・グロックが見事2位フィニッシュを果たし、パナソニック・トヨタ・レーシングのF1での最高位に並ぶ結果を手にしました。

ティモはこの週末を通じて好調で、予選では5位を獲得。これにより今シーズンここまでの彼自身の予選最高位を3つも更新しました。レースでも素晴らしいスタートを切った彼は、予選4番手のBMWザウバーのロバート・クビサをターン1でかわし、その後もずっと力強い走りを続けました。

2回ストップ戦略を選択したティモは全70周のレースで20周目と47周目にピットストップを行いました。1回目のピットストップでは燃料リグの接続にやや不具合が生じたため3~4秒失いましたが、それでも最後は2位を手にしました。彼はホッケンハイムでの母国レースで激しいクラッシュを喫した直後のレースで、F1初の表彰台を獲得したことを喜んでいました。

「素晴らしい結果だ」と話すティモ。「我々はスタートが上手くなってきており、非常に良いダッシュを決めることができた。クルマは、ほとんと変更もせず過ごしてきた予選までと同じく、第2スティントまで非常に感触が良かった。2位になった予選第2セッションのタイムを見れば、我々に硬めのタイヤで素晴らしい速さがあったことが分かるはずだ。残念ながら第3セッションでは自分の好み通りにタイヤの温度を上げられなかったが、それを踏まえれば、もしかしたら予選ではあと1~2グリッド上を獲得できていたかもしれない」

「最終スティントでは軟らかめのタイヤを履いたが、それほど容易ではなかった。またキミ・ライコネンのフェラーリのプレッシャーに晒されることにもなった。でも昨年のGP2の経験から、ここで前のクルマを追い越すのがどれほど難しいことなのか分かっていたし、F1ではそれが尚更大変になる。だからとにかく私はミスを犯さないように集中した。表彰台に立てるとは予想していなかったが、自分とチーム全体のためにこうした結果を手にできて嬉しく思う」

一方のヤルノ・トゥルーリも7位でゴールし、これによりTF108は2台そろってポイント獲得となりました。燃料を重めに積んで9番グリッドからスタートしたヤルノは、1周目にルノーのネルソン・ピケJrをパス。23周目と53周目にピットインを行ったヤルノは、5番目の最速ラップを記録する程の速さがあったものの、ピットストップのタイミングと渋滞のため、7位に満足せざるを得ませんでした。

「ティモのことは嬉しく思う。彼はこの週末は非常に調子が良かったし、この結果は十分にその走りに値する」とヤルノ。「私の方も、予選では問題があったものの、レースでは更にいい結果になる可能性があった。今日の私は速かったものの、レース中は1ラップしか前方がクリアにならず、プッシュできなかった。それでも我々がこれほどの力強い走りを見せられたことは嬉しく思っているし、この先もこの良い状態を維持して、こういった好成績を続けられればと願っている」

シャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーのパスカル・バセロンはこう話しています。「今回はティモが見事なパフォーマンスを見せてくれたし、完全に表彰台に値する走りだった。6月のマニクールでは進化したことを実証したが、その後のシルバーストーンでは幾分運試しのような展開のレースになり、ホッケンハイムでも幾つかの不運に見舞われた。だが私は常にハイダウンフォース仕様のコースでも進化できている自信があった。今回のレースはそれを証明してくれたね。チームはこれまで通りモチベーションが高い状態にあるが、今年2回目の表彰台となったこの結果は、更なる励みになる。8月24日には初開催になるバレンシアでのグランプリがあるが、そこでこの結果に更に上積みをし、コンストラクターズ選手権4位の座を維持すべくがんばる前に、まずは夏休みをとることになる」