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シンガポールGP レースの舞台裏
2008年9月28日(日)

●レースの舞台裏

シンガポールGPの週末における課題の一つが、チームの状態をヨーロッパの時間帯のままにしておくことでした。これは、チームの面々が必要なときにしっかり仕事をこなせるようにしておくためです。これについて「全てが上手く行った」と話すティモ。「シンガポールにはかなり遅く到着したし、ちょうどいい時間に寝ることができた。チャンプカー時代にラスベガスでのレースで照明の下で走った経験も既にあったから、これに関しても私にとっては問題ではなかった。それからバイザーに関してちょっと実験してみたんだ。土曜日にはオレンジ色のバイザーを使ってみた。でも最大の問題はバンプ(路面の凸凹)だったと思う。たぶんみんなにとってこれから一番の挑戦になるのは、アジアの時間帯に切り替えることだろうね。私は日曜日に日本へ向かう前にシンガポールに滞在し続ける。だからここの時間帯に就寝時間を切り替えなければならない。願わくば東京に着く頃にはこれにも完全に慣れていると良いなと思うよ!」

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース

フェルナンド・アロンソは今年初頭にルノーに復帰して以来初めての勝利を収めました。彼は予選第2セッションで燃料ポンプのトラブルのため完走できない不運に見舞われ、15番手からのスタートとなっていました。

アロンソはまずブリヂストン・ポテンザ・タイヤのスーパーソフトを選択し、第1スティントを短めにしました。そしてわずか12周目にチームメートのネルソン・ピケJr.のアクシデントによりセーフティーカーが導入されたのですが、この時既にアロンソは1回目のピットストップを終えていたのです。

フロントローを獲得したマクラーレンのルイス・ハミルトンは、レース序盤、フェラーリのフェリペ・マッサに次ぐ2番手を走行していました。セーフティーカーが導入されると順位が大きく変動しましたが、この際、フェラーリはピット作業の運に見放されてしまいます。一方のハミルトンはより慎重な走りを続け、最後は3位入賞を果たし、6ポイントを手にしました。これで彼はマッサに対するタイトル争いのリードを残り3戦で7ポイントへと広げました。また、マクラーレン・メルセデスはコンストラクターズ選手権でフェラーリを1ポイント差で逆転しています。

マッサはレース序盤にマクラーレンのルイス・ハミルトンに対しリードを築き上げていましたが、1回目のピットストップで燃料補給用のホースがまだつながったままの状態で再スタートしてしまい、散々な顛末となります。彼はピットレーンの出口で一旦停止し、チームのメカニックたちがホースを外しに来るのを待たなければなりませんでした。

更に彼には、“危険なピットレーンからの再スタート”を理由にストップ・アンド・ゴー・ペナルティが科されました。レース終盤にスピンを喫した彼は、最後は13位でレースを終えています。

彼のチームメートのキミ・ライコネンはレース序盤に力強い走りで3位を走行していましたが、セーフティーカーピリオドで各車一斉にピットインした際、マッサの後ろで作業を待たなければなりませんでした。レース終盤、彼は5位を走行していましたが、残り4周でクラッシュを喫し、レースを終えました。

ウィリアムズのニコ・ロズベルグは、セーフティーカーピリオドの際、ピットレーンがオープンになっていないにも関わらず燃料補給したため10秒ストップのペナルティを受けましたが、それにも関わらず自身のF1キャリアで最高位となる2位を獲得しました。またBMWザウバーのロバート・クビサも同じようにペナルティを受けています。

パナソニック・トヨタ・レーシングのチーム代表、山科忠は「セーフティーカーのルールのため、何人かのドライバーのレースが台無しになったと言える。この件について我々は既にかなり仔細に議論を行っている。そのため私としては、もうこの状況を改善すべき時期だと思う」と述べています。

●レースリポート

F1史上初のナイトレースとなったシンガポールGPにて、パナソニック・トヨタ・レーシングは力強いパフォーマンスを発揮しました。ただしポイントを獲得したのがティモ・グロックの1台による4位だけという、幾分期待外れな結果でもありました。

7番グリッドからスタートしたティモは素晴らしいドライビングで見事な結果を手にしましたが、ヤルノ・トゥルーリも気合いの入ったパフォーマンスを見せていただけに、本当なら2台のTF108がトップ6入りしていてもおかしくはありませんでした。ですがヤルノのクルマは油圧系統のトラブルのためリタイヤとなりました。

シンガポールのマリーナ・ベイ・サーキットは今回の歴史的なレースのために素晴らしい舞台を提供してくれました。ただしコースの路面は予想よりもバンプが多く、このため各ドライバーは暑さと湿気の中、更に厳しい仕事をこなさなければならなくなりました。

ティモは予選8番手でしたが、BMWザウバーのニック・ハイドフェルドがグリッド降格のペナルティを受けたため、7番手グリッドからのスタートとなりました。ティモは更にターン3の出口でマクラーレンのヘイッキ・コバライネンを抜いて順位を上げ、その後はネルソン・ピケJr.のアクシデントでセーフティーカーが導入されるまで、トロロッソのセバスチャン・ベッテルを激しく追い立てていました。

17周目にピットレーンがオープンになると、ティモをはじめ、先行していたほとんどのクルマがピットイン。その後、レースが再開されると彼はベッテルを追い抜いて更に順位を上げました。

1回ストップ作戦のため燃料がかなり重い状態でスタートしたヤルノの滑り出しは更に素晴らしく、11番手から9番手にアップしました(ただしその後幾つか順位を落としています)。セーフティーカー導入時も彼はピットインせず、その結果トップ3に浮上。その後唯一のピットストップを行うまで数周に渡りトップで周回を重ねました。

ピットストップ後も再び燃料が重い状態になったヤルノは、守りの走りを続けなければなりませんでしたが、戦う姿勢を終始崩さず、トップ6でフィニッシュできそうに見えました。ところが50周目のこと、彼のTF108に油圧系統のトラブルが生じ、このためピットでリタイヤとなりました。

「5位でフィニッシュできていただろう」と話すヤルノ。「ずっと厳しい週末だっただけに、そうなっていたらうれしいポイントだったのにね。本当に落胆しているし、その分くたくただよ。本当に激しく戦っていたし、いい仕事ができていた。でも不運に見舞われた時はどうしようもなくなる。この後はたくさんの幸運を手にできるはずだと思う」

ティモはこの時点で5位にまで浮上。更にレース終盤にキミ・ライコネンが最後のピットストップを行うと4位に順位を上げました。ここでセーフティーカーが入ると隊列の間隔が更に縮まり、彼は先行するルイス・ハミルトンに迫っていきました。そして最後は今シーズン3回目のトップ4フィニッシュを果たしたのです。

「自分の仕事には満足している。ミスは一つもなかったし、4位というのは良い結果だ」と話すティモ。「こうしたコンディションの中で走るのはかなりキツかったし、これだけバンプが多いコースだとクルマのドライビングもあまり快適ではなかった。あとで何かこれの影響が出るのは間違いないだろうね。今年初めの目標は今シーズン中に20ポイント獲得することだったから、残り3戦となった今これを達成できてとても満足している」

ティモがこれだけ素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれたにも関わらず、フェルナンド・アロンソが優勝したため、コンストラクターズ選手権ではパナソニック・トヨタ・レーシングがルノーに5ポイント差の5位に後退しています。

TMG会長兼チーム代表の山科忠はこう付け加えています。「もちろんここから我々は日本GPに集中していくし、また、富士スピードウェイで良い結果を手にできるよう、自分たち自身を懸命にプッシュしていくつもりだ」