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日本GP レースの舞台裏
2008年10月12日(日)

●レースの舞台裏

富士スピードウェイで、ヤルノはいつもの特徴的なシルバーのデザインのヘルメットとは別のものを使用しました。今回彼が被ったのは、キャンペーンで優勝した11歳の日本人の女の子、テラノ・ユウさんによるデザインです。これは、チームのタイトルスポンサーであるパナソニックが主催したコンテストに集まった数多くの案の中から、ヤルノ自身が選んだものです。このデザインには、サーキットからもその壮観な頂が見える富士山が描かれています。 また今回のパドックにて、チームは“寿司イブニング”を開催し、ホンダのロス・ブラウンやニック・フライなどを含むライバルチームの面々のためにホスト役を務めました。ヤルノとティモはいつも使っているナイフとフォークではなく、箸を使うよう説得されていました!

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース

タイトル争い中の二人、フェリペ・マッサとルイス・ハミルトンは共にレース序盤にペナルティを受けましたが、7位となったマッサがその差を5ポイントに縮めました。通算12回目のポールポジションを獲得したハミルトンは、スタート直後の1コーナーで好ダッシュを決めたキミ・ライコネンをかわそうとタイヤをロックさせたものの、フェラーリをコース外へ押し出したためドライブスルーペナルティを受けました。その後、ハミルトンと接触し彼をスピンへと追いやったマッサにも同様のペナルティが科されました。このスピンでハミルトンは最後尾へ後退しました。マッサはその後追い上げ、7位入賞を果たして2ポイントを獲得。これにより残り2戦となった現在、マッサが79ポイント、ハミルトンが84ポイントとなりました。今回、ハミルトンは12位でした。

キミ・ライコネンが3位、マッサが7位となったスクーデリア・フェラーリ・マールボロはこの日8ポイントを手にしましたが、一方のマクラーレンは、ハミルトンがペネルティを受け、ヘイッキ・コバライネンがトラブルでリタイヤとなったためノーポイントに終わりました。これにより残り2戦となった現在、フェラーリが142ポイントでコンストラクターズ選手権のリードを奪い返しました。マクラーレンは135ポイントです。ロバート・クビサが2位に入ったため、3位のBMWザウバーは128ポイントとなっています。

ルノーのフェルナンド・アロンソは、フェラーリとマクラーレンを巻き込んだ1コーナーの混乱を最大限に生かし、INGルノーF1チームに2連勝をもたらしました。1回目のピットストップまでアロンソはクビサのBMWを追いかけていましたが、ピットストップ後にトップに立つと、そのまま最後まで余裕の差で勝利しました。チームメートのネルソン・ピケJr.も力強い走りを見せました。第1スティントを長めにした彼は12番手スタートながら4位でフィニッシュしました。これによりルノーは15ポイント獲得したため、コンストラクターズ選手権で4位争いをするトヨタとの差は16ポイントになりました。残りわずか2戦で逆転するには難しい差になってきました。

トロロッソの2台は富士で揃ってポイント圏内でフィニッシュしました。セバスチャン・ボーデは5秒差でセバスチャン・ベッテルを振り切り6位を手にしましたが、残念なことに、2回目のピットストップからコースに戻る際、ボーデはフェリペ・マッサを妨害したと判断され、25秒のペナルティを受けました。これにより彼は10位に降格となりました。

●レースリポート

富士スピードウェイで開催されたパナソニック・トヨタ・レーシングにとってのホームレースにて、ヤルノ・トゥルーリは5位入賞を果たし、これまでの日本GPで最高の結果をチームにもたらしました。トヨタの2台は予選から揃って競争力を発揮し、4列目グリッドにクルマを並べました。しかしティモ・グロックのレースは長くは続かず、わずか6周でリタイヤとなりました。

富士スピードウェイを初めて訪れたティモの走りは非常に素晴らしく、金曜日のフリー走行では全体のトップタイムを記録しました。また予選第1セッションでも最速タイムを出しています。この時の彼は、最終的にポールポジションを獲得したマクラーレンのルイス・ハミルトンより0.13秒速いタイムを記録したのです。

「燃料が重くなる予選第3セッションでは、軟らかめのタイヤから最大限のものを引き出せなかった」と説明するティモ。「それでも我々の母国のファンの前で2台とも予選で良い走りができたのは良かった。ただしレースでは私のツキが変わってしまった。スタートは良かったものの、不幸にも私はアウト側にいたため、全員が大回りした際に押し出されてしまった。デビッド・クルサードのアクシデントで散らばった破片を幾つか踏んでしまい、その後、クルマの感触がおかしくなった。このためターン6の出口の縁石でコントロールを失ってしまった。クルマが空中に放り出され、そして着地した際にシートの固定具が壊れてしまった。ピットストップをしたものの、我々にできることは何もなく、リタイヤせざるを得なかった」

好スタートを決めたヤルノは、1コーナーで上位勢が大回りしたチャンスを利用し、1周目の終わりにはクビサ、アロンソ、コバライネンに次ぐ4番手で戻ってきました。8周目にはワールドチャンピオンのキミ・ライコネンに順位を奪われましたが、その後も力強い走りを続け、19~21周目にはトップに立ちレースを牽引しました。これは他の上位勢よりも第1スティントが長めだったためです。

チームにとって残念だったのは気温がかなり低く、コースの路面温度が25度以下のままだったことです。こうした状況はTF108のタイヤの使い方にとっては好ましくないのです。このためヤルノはネルソン・ピケJr.を封じ込めておくことができませんでした。彼はヤルノより第1スティントが7周も長めだったのです。ヤルノは50周目の2回目のピットストップまでその順位を守り抜きましたが、ネルソンは更に2周長く走り、ピットアウトの際にヤルノの前に立つとそのまま4位でフィニッシュしました。

「予選後、もしかしたら応援してくれる日本のファンのために表彰台を獲得できるかもしれないと期待したが、状況は我々に都合のいい方へは転がってくれなかった」と説明するヤルノ。「気温が低かったため、クルマのバランスがやや崩れてしまった。私は最初から最後まで持てるもの全てを注いだが、5位が私にできる最善の結果だった」

11月2日にブラジルで開催されるシーズン最終戦の前に、チームはこれから7日後に控えたアジア2連戦の2つ目の舞台となる上海へと直行します。