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Rd1. Grand Prix of Bahrain
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新居章年リポート  
 
2006年3月12日(日)  
   

●オフシーズンに蓄えた力をきっちり示すのが目標
今シーズンからパナソニック・トヨタ・レーシングの技術コーディネーション担当ディレクターを務める新居章年(あらい のりとし)です。よろしくお願いします。バーレーンGPの報告です。

テスト初期の頃のTF106とではフロントウィングの形状が大きく異なる  

チームは昨年の12月以来テストを行ってきましたが、2月半ばのバレルンガで実際にレースに使う形の空力パッケージを投入しました。見ていただいて分かるとおり、それまでのものとはまったく違う形になっています。

オフシーズン最後のテストを行ったTF106と、開幕戦に持ち込んだTF106の変更点はフロントウィングです。エンジンをはじめ、メカニカル系の変更はありませんが、バーレーンは砂が多いので特殊なエアフィルターを持ち込んでいます。テスト期間中は、何か変更を加えるたびに狙った効果を確認できています。ドライバーも手応えを感じていますので、実力をきっちり示そうと開幕戦に臨みました。

●エンジンを温存しつつデータ収集に集中する
いよいよ2006年シーズンが開幕しました。ラルフ22番手、ヤルノ24番手というフリープラクティスの結果についてですが、タイムだけを見るとちょっとコンサバに行き過ぎたかなと思っています。ただ、フリープラクティスのタイムを気にしても仕方ありませんし、データは狙った通り取れました。

コンサバに行った理由は、暖かいコンディションでブリヂストンタイヤを履くのが初めてだったからです。エンジンも2レースもたせなければならないこともあり、ペースを抑えめにしたのです。タイヤについては、空気圧などセッティングを変えながら予定通りのプログラムを消化することができました。

午前中のセッションでは、路面コンディションが良くないだろうという予測のもと、ヤルノもラルフもインスタレーション(機能チェック)だけ行って終わりにしました。午後のセッションではタイヤのセットアップをやりつつ、最後にロングラン(連続周回)を行う予定でした。

ラルフは予定通りロングランをこなせたのですが、ヤルノはロングランを始めたとたんに電気系のトラブルが発生して止まってしまいました。その点はちょっと残念でしたね。ただ、土曜日に向けては今日取れたデータで十分対応ができます。やることはたくさんあるので、夜は遅くなるだろうと覚悟を決めました。

●新しい予選方式への対応に課題を残す
予選の結果については残念だとしか言いようがありません。午前中のフリープラクティス(ヤルノ7番手、ラルフ9番手)の手応えから、午後の予選に向けてはそこそこ準備が整ったと感じていました。

新予選方式の最初のセッション(15分)で赤旗が出ましたが、ちょうどそのときラルフはタイムアタックを行っていたのです。赤旗解除後(残り時間5分)に出直しの走行を行った際は渋滞にはまってしまい、思い通りの走りをすることができませんでした。

新方式の予選は、昨年までと違い自分たちのペースで進めることができません。今日のように赤旗中断などという状況になれば、残りの時間は一斉にクルマが走り、渋滞は必至です。そうした不測の事態が起きた際にどう対処するのか。フレキシブルな対応が求められますが、我々にはそのあたりが足りなかったのだと反省しています。

一方、ヤルノについてはコンディション面での問題はなかったのですが、結果としてタイムが出ず、最後のセッションに進むことはできませんでした。まだまだやることはたくさんあるんだ、ということを示しています。

まだ初戦ですので、今回の予選の結果がシーズン全体のパフォーマンスを象徴しているとは思いませんが、今回に限って言えばうまくできなかったということです。クルマのポテンシャルについても、すべてを出し切ったとは思っていません。

予選の結果は2台とも11位以下ということになりましたので、トップ10圏内のクルマと違い、レースに向けた燃料の搭載に自由度があります。つまり、レースについては作戦の幅ができたことを意味します。

●早期復活を目指しデータ収集に切り替える
我々としても残念な結果に終わりましたが、期待していただいた方には本当に申し訳なく思っています。予選の結果、ラルフもヤルノもグリッド後方になったということもありますし、今回のレースのことだけよりも、シーズンこれからを考えた方が得策だろうということで、成績は追わず、データ収集のための走行に切り替えました。ふたりのドライバーと相談し、ヤルノはこのサーキットでは常識的な2ストップ、ラルフは3ストップを選択しました。

レースが始まってからはふたりともペースが上がらなかったので、最初のピットストップでは2台ともフロントウィングの角度を調整しました。タイヤ交換の際には空気圧も変えています。1回目のピットストップの直後、ヤルノのペースは一時的に上がったのですが、その後また落ち込みました。

正直なところ、今週のパフォーマンスはまったく予想していませんでした。次のレースはわずか1週間先ですが、持ち帰ったデータを解析し、小さなことでも解決策を見つけることができればすぐに反映させるつもりです。常にチャレンジの姿勢を見せるのがトヨタです。これからも応援よろしくお願いします。

 
 
今季からTDC(技術コーディネーション担当ディレクター)として開幕戦に挑む新居章年。