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Rd10. Grand Prix of USA
grand prix
新居章年リポート
2006年7月2日(日)
 

いつも応援ありがとうございます。インディアナポリス・モータースピードウェイで行われたアメリカGPの報告をいたします。

昨年PPをとったインディアナポリスでの目標は2台入賞
カナダ、アメリカと連戦ですので、クルマはインディアナポリスのコース特性に合わせ、少しダウンフォースを減らし気味にした程度で移動しました。エンジンは基本的にはこれまでと同じスペックです。ラルフ・シューマッハーのエンジンはカナダで1レース目でしたが、リタイアしたのでフレッシュエンジンに積み替えています。ヤルノ・トゥルーリもフレッシュですが、これはスケジュールどおりです。

前戦カナダから投入された新しいフロントウイング。カナダでは両サイドに追加されていた小型ウイングは、長いストレートのあるインディアナポリスでは取り外された。  

インディアナポリスはインフィールド区間とオーバルコースの一部を利用した長い直線の組み合わせです。直線でタイムを稼ぐにはダウンフォースを減らしたいところですが、インフィールドでタイムを稼ぐにはダウンフォースをつけたい。最高速とダウンフォースのバランスをどのあたりに合わせるかが難しいところです。

ここでは昨年ポールポジションをとりました。今年も当然狙っていますし、カナダで果たせなかった2台入賞を目指すつもりで臨みました。

初日の走行で確認すべきことをきっちり確認
タイムが(リストの)下の方で終わりましたので、ちょっと盛り上がりに欠ける印象を持たれたかもしれませんが、実際は問題があったわけではありません。土曜日に向けて確認すべきことは確認できたので、心配はありませんでした。

P1(フリープラクティス1回目)はインスタレーション(基本機能チェック)のための2周だけしたら終わりと決めていたので、予定どおりです。今回は両ドライバーともフレッシュエンジンということもあり、できるだけ走行をセーブしたいという思いがあったからでした。

午後のセッションではある程度周回を重ね、タイヤなどを確実に確認しようということでプログラムを組んでいました。ところが、ラルフが走り出してすぐ、「振動が出る」と報告してきました。タイヤの回転バランスを取り直したりしていましたので時間がかかり、ばたばたしたところがありました。バランスを取り直してからは問題なく走行しています。

一方ヤルノは車両からピットにデータを送るテレメトリーシステムの電波状況が悪かったので、その確認をするために30分ほどを費やしました。ただ、そのあとは予定通りのプログラムを消化しました。最高速とダウンフォースの合わせ込みや、空力のチェック、足回りの調整を行っています。ヤルノもラルフも「グリップが低い」「前のタイヤにグレイニング(ささくれ摩耗)が出る」などの症状を訴えましたが、土曜日以降は問題なく進むだろうという感触はつかめました。

トラブルで2台そろって最終予選に進めず、課題を残す
2台そろって最終予選に進むのが確実だと思っていただけに、非常に残念です。ヤルノはQ1(予選第1ピリオド)で、計測ラップに入る前の周、ターン12でリアの車高を支える部品の一部が壊れてしまいました。テレメトリーからもどこが壊れたのか伝わってきましたので、すぐに部品を交換する決断を下し、準備を進めていました。Q1では15分のセッション中に計測を終了させなければなりませんが、交換を終える時間が足りないということで、結局諦めました。

このコースはサスペンションに大きな荷重がかかりますが、それが原因で壊れたものではないと思っています。おそらく付いていた部品固有のものでしょう。ヤルノは壊れた部品を交換してレースに臨むことになりました。

  ピットスタートだったヤルノは見事1ストップ作戦が成功し、4位でゴール。2ストップを選択したライバルたちと比較していいタイムで走れたことも入賞の要因となった。

一方、ラルフは午前中のプラクティスでも、前日に感じたのと同じような振動を訴えていたのですが、予選ではねばり強く走ってくれて、予定通りQ3に進むことができました。最終的に、クルマのバランスも良くなったとラルフも言ってくれていますので、レースでは上位を狙える結果でした。

カナダ、アメリカと連続してトラブルが発生していますが、同じ部品が壊れるなら特定の部品が悪いという話になり、集中的に対処できます。ところが、そうではないので、少し根が深いところに問題が潜んでいる可能性もあります。トラブルシューティングの目が粗く、抜け落ちている部分があるのかもしれません。その点はしっかりやり直すつもりで気を引き締めます。

ヤルノが2戦連続で入賞。しかしラルフの不運で喜び半分
ヤルノは本来19番手からスタートするはずでしたが、チームで相談した結果、壊れた部品以外にも一部部品を交換することにしました。そのため、規定によりピットレーンスタートということになりました。慎重を期したということです。このためヤルノは1回ストップ作戦を選びました。それが結果的には良かったと思います。

今日はどこのチームにとってもタラレバの山だったと思います。ラルフはスタートが良くなかったのですが、もし順調にスタートしていれば1コーナーの混乱に巻き込まれたかもしれませんし、ヤルノはピットスタートだったので、状況を見ながら慎重に抜けていくことができました。スタートに関してはいい方向に転がったのかなと思いました。

 
ラルフはスタートの出遅れが結果としてラッキーな展開となり、アクシデントに巻き込まれずに済んだ。ポイント圏内を安定して走行していたのだが、トラブルに見舞われてしまった。
ピットレーンからスタートする場合は、すべてのクルマがピットエンドを過ぎてから走り出すことになりますので、その時点でトップと20秒は差がつくと思っていました。ところが、スタート直後のアクシデントでセーフティカーが入ったおかげで10秒ほどまで差を詰めることができました。ヤルノにとって、あれはすごく大きなポイントでした。

実は、終盤フィジケラをかわして3位になれるかなとちょっと思っていました。もうちょっと、もうちょっとと思いながらラップタイムの推移を見ていたんですが、やっぱり間に合いませんでしたね。でも、ヤルノは苦しい状況から良くやってくれたと思っています。

一方ラルフですが、彼には本当に申し訳ないと思っています。金曜日に振動の問題があったにもかかわらず、レースでは非常に頑張ってくれ、2台そろってポイントがとれると期待していたのですが、左フロントのホイールベアリングが不具合を起こしてしまいした。

あとは信頼性です。これが確保できていればヤルノはもっと前からスタートできていましたし、ラルフはしっかり5位でフィニッシュできたと思います。今後はすべてに目が届くようにし、後半戦どんどん上を目指していきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。

インディアナポリスでの一戦に向けて戦略を練る新居章年。レースでは安定して速さを見せることができたが、信頼性という課題が残った。