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Rd13. Grand Prix of Hungary
grand prix
新居章年リポート
2006年8月6日(日)
 

いつも応援ありがとうございます。ハンガリーGPの報告をいたします。

2台完走の次ぎは2台ポイント獲得が目標
ハンガリーにやってきましたが、もう夏は終わったのかなと思うくらい涼しくなりました。ハンガリーは例年暑いのですが、2004年も比較的涼しかったんですね。実はホッケンハイムのときから、涼しくなる可能性があることを想定していました。だから、それほど驚きはありませんでした。

ダウンフォースが必要なハンガロリンクでは多くのダウンフォース確保のため、追加のウイングレットなどをモナコ同様に装着している。しかしながら、細部はモナコGP時よりもモディファイを受けている。  

タイヤに関しては、暑くなることを想定して準備をしていましたが、涼しくなったからといって、パフォーマンスが発揮できずどうにもならない、というようなこともありません。慎重に考えて準備をしていました。

ハンガロリンクはモナコと同じでシーズン中最もダウンフォースが必要なサーキットです。外観上はモナコのときと同じように見えますが、できる範囲で改良を施したパッケージを持ち込んでいます。エンジンは、前回のレースでヤルノがフレッシュに交換しましたので、ここでは2レース目、ラルフはフレッシュを積んでいます。

最高速が落ちているのにラップタイムが落ちない。ということは、コーナリングスピードが上がっているということですね。ここはもともとストレートが長いんですが、さらにスロットルを開ける時間も長くなっている。エンジンへの負担は上がっています。また、コーナリングスピードが上がっているので、ドライバーへの負担も高くなります。

空力については、前回もそうでしたが、外から見て分かる範囲では変わっていません。エンジンについても毎回少しずつ手を入れていますが、ドンと大きくは変わってはいません。

覚悟はしていたが、予想以上の低温に苦しむ
金曜日をひと言で言えば「寒かった」になりますね。天気予報を見て、前の週から覚悟はしていたんですが、現実にそうなってみると苦しいですね。うーん、困ったものだなと。いつものハンガリーと違って気温がだいぶ低いので、気になりました。

 
冬用の長袖のウェアを着る関係者もいたほどの寒さとなったハンガリー。あまりの寒さにタイヤをうまく使うところまでいかず、表面がささくれ立って摩耗する、グレイニングが発生した。

フランスで暑かったので、ハンガリーはもっと暑いだろうと予想し、熱関係の準備はしっかりして臨みました。ところが、実際は冷却のために開けた穴をどこまで閉めようかという話になってしまいました。予想と違いましたね。

冷却だけでなく、タイヤも予想外の低温に苦しみました。暑いだろうということで、路面温度が50℃を超えるような暑さを想定したスペックと、大事をとって路面温度が40℃くらい、気温にして25℃から30℃くらいの条件を想定していたのですが、それ以上の低温でした。

結果、タイムの落ち方が激しくなりました。どれくらい燃料を積むとタイムの落ちがひどくなるのか、燃料が少なければいいのか。予選ではそのあたりの見極めが重要になるという認識でした。ただ、難しい状況はどのチームにとっても一緒なので、2台がきっちり走ることが重要だと肝に銘じて、土曜日を迎えました。

思ったより伸び悩んだが、予選で2台トップ10に入る
思ったほど予選順位は良くなかったですね。上位のドライバーが降格したこともあって、6番手、8番手のグリッドを得ましたが、タイムは思った以上に遅かったという気がしました。もう少しスピードが欲しかったというのが実感です。あまり無茶を言ってもいけないと思いますが、タイヤの選択や作戦を抜きにしても前のグリッドの方が気持ちいいですからね。

ハンガリーGPの歴史の中では最初の、そして今季初となるウエットでの決勝を迎えた。レース前タイヤ選択に悩んだが、最終的にインターミディエイトを選択。  

問題はタイヤのグレイニング(ささくれ状の摩耗)です。他と比べてひどい部類ではないのですが、それでも出ることは出ています。タイヤのおいしいところを使うのが難しかったものですから、タイムが出なかったのはそのせいもあるかもしれないと分析しています。我々としては、当然予選での一発のタイムも欲しいのですが、レースを通しての安定性も十分考えて臨みましたので、予選~決勝レースでの状況を考えたらベストなタイヤを選んだつもりでした。

ラルフとヤルノでタイム差が出ましたが、これは運転の仕方による差かもしれません。ラルフの方がヤルノよりもタイヤの温まりが良かったようです。もう少しタイムが伸びてほしかった、という気持ちはありますが、途中でクルマが止まるというようなことはありませんでした。2台そろって完走すれば入賞できる実感はありましたので、その点はうまくいったと思っています。

5戦連続入賞を喜ぶより、ヤルノのリタイアを悔やむ
まず最初に、優勝を果たしたホンダさんにおめでとうと言いたいですね。我々にとっても励みになります。早く勝ちたい、という思いが強くなりました。

レースについては、我々としてはやるべきことはやったと思っています。スタートがうまくいかなかったこと、それに1セット目、2セット目とインターミディエイトタイヤ(路面が少し濡れている状態に適したタイヤ)を履いているときのタイムが遅すぎた。それが結果に反映されていると思います。

 
ドライタイヤに変えるタイミングの判断はよかったと評価できるが、1回目のピットに関しては、不運にもセーフティーカーがピットインのあとに導入されてしまい。1周分損した形となってしまった。
まず、スタートですが、発進した次の瞬間のグリップが低かったのかなという印象です。そのせいで1周目からだいぶ順位を落とすことになってしまいました。その後も止みかけていた雨がまた降ってきたこともあり、タイヤがうまく温まらず、ラップタイムに大きな差が付いてしまいました。

さらにタイミングが悪かったのがセーフティーカーです。ラルフはミハエルと競い合っていたのに、セーフティーカーがその間に入ったことでその差が1ラップ分に広がってしまいました。ラルフは、最高2番手まで順位を上げたミハエルを追い上げる走りを見せていただけに、残念です。

47周目にラルフ、48周目にヤルノをピットに入れ、ドライタイヤに履き替えさせましたが、ドライに替えるタイミングは良かったと思います。あのタイミングでドライに履き替えたことがラルフの結果につながったと思います。逆にあそこで交換していなければ、もう一度ピットに入ることになっていたでしょう。

ラルフが6位に入り、これで5戦連続でポイントを獲得しましたが、それよりも、レース終盤にヤルノのエンジンが壊れたことがショックです。次のトルコGPまでの3週間、テストはできませんが、我々は休みません。今回の結果を見直す時間は十分にありますので、体勢を立て直して次のレースに臨みたいと思います。次戦も応援よろしくお願いいたします。

ハンガロリンクでの新居章年。気象条件とタイヤのグリップ不足の影響で苦戦を強いられたが、なんとかラルフが6位入賞を果たし、トヨタの面目は保った。次戦ではTF106Bの力を出し切り、上位入賞を狙う。