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Rd15. Grand Prix of Italy
grand prix
新居章年リポート
2006年9月10日(日)
 
いつも応援ありがとうございます。イタリアGPの報告をいたします。

ここイタリアでは車体を路面に押さえつける力であるダウンフォースを付けすぎると抵抗が増えて最高速が落ちるため、最低限のダウンフォースを得るためのフロントウイングとなっている。  
●好感触を得た事前テストの勢いでレースウイークに
モンツァは今シーズン、ヨーロッパで最後のレースです。ストレートが長く、最高速が伸びます。ロードラッグ(空気抵抗の少ないことが必要とされる)のサーキットということで、特別に用意した空力パッケージを持ち込みました。リアウィングを見ていただけると分かると思いますが、「一応、付いているよね」というくらいの薄いエレメントになっています。フロントもフラップが小さなものを用意しています。

先週、モンツァで3日間のテストを行いました。ラルフ(シューマッハー)の体調がすぐれず、十分な走り込みができなかったこともありましたが、ドライバーからはクルマ自体のバランスやスタビリティについて「すごくいい」というコメントを得ていますので、楽しみにしてモンツァにやってきました。ラルフが走れなかった分は、リカルド(ゾンタ)が頑張ってくれました。

このところ、信頼性に懸念されるところがあって、前回のトルコでも予選前にラルフのエンジンを交換しました。あとで確認しましたが、あの時交換して正解だと思っています。イタリアGPに向けては、確実にQ3(予選第3ピリオド)まで進み、いいグリッドポジションを得ることを目標にして臨みました。モンツァのレースでは1周目の1コーナーでアクシデントが発生することが多いので、予選の順位が大切です。その点を踏まえて、作戦を立てました。

●レースに向けて順調にプログラムをこなした金曜日
モンツァに来る前は、雨だとか嵐だとかいう話がありましたが、順調に晴れてくれたかなという感じです。午前中のプラクティスはもともとインスタレーションラップだけのつもりでしたので、その通りに行い、午後に2台を走らせてタイヤ比較を行いました。モンツァでは前の週にテストをしていますので、そのときと実際にレースウィークエンドに来たときの状態を比べました。

 
ウイングを車両正面から見ると、前後ウイングの羽(エレメント)の角度が水平に近い状態であることがよくわかる。エレメントを寝かせて空気抵抗を減らしている。

また、空力についても、どこまで攻められるかということで、ふたりで空力のセッティングを変えたりしました。クルマのバランスについては、両ドライバーとも「問題ない」と言ってくれました。ただ、ターン8のアスカリシケインのアプローチでバウンシングするのが気になるといえば、気になるところでした。

バウンシングしてフロアをこすっているようなクルマもありました。我々もそうで、あそこでバウンシングが残ってブレーキング時にリアがロックしてしまうとか、パラボリカの入口でアンダーステアが出るなどという気になる症状もありましたが、おおむね良好、という印象でした。

●悔しさの残る予選。レースに向けて気持ちを入れ替える
トップ10の真ん中くらいは行けると思っていましたので、予選の結果は本当に悔しいです。P3(土曜日午前中のフリープラクティス3回目)のときにはもっと上に行けるという感触をつかんでいました。ただ、ブレーキング時の不安定さとかアンダーステアが出る場所だとか、縁石に乗ったらオーバーステアが出るとか、細かな課題は残っていました。そのあたりを予選までに解消できなかったのが、2台そろってトップ10に入れなかった要因だと思っています。P3から予選に向けて調整したのですが、思ったほどうまく機能しませんでした。

予選は結果の通りトップからは0.7秒差の僅差の戦いになりましたが、ドライバーにしても3つのセクターでベストタイムをそろえることができませんでした。第1セクターは良くても第2セクターはだめ。第2は良くても第1はだめなど、うまくかみあいませんでした。うまくそろえられるクルマを用意できなかったことが、この結果につながっていると思います。

Q2が終わったあとも、ヤルノ(トゥルーリ)はしばらくクルマの中で待機していました。実はアタックラップ中にラルフがトラフィックに引っかかったので、裁定を求めていたのです。ヤルノはポジションがひとつ上がればトップ10に入りますので、ポジションが確定するまで待機していたということです。しかしながら結局、11番手で確定しQ3へは進めませんでした。

結果は残念でしたが、P3の走りの調子から推し量れば、レースでは追い上げが期待できる状態でしたので、気持ちを切り替えて翌日のレースに臨みました。

●苦しみながらもポイントを獲得。残り3戦での巻き返しを誓う
厳しいポジションからのスタートでしたが、ヤルノが7位に入り、ポイントを取ってくれました。本当に良く走ってくれたと思います。これでホッとしてはいけないのですが、ゼロよりはいいですからね。良かったと思います。

リアのウイングも同様に最低限のエレメントとなっている。ホンダのバリチェロを必死に追うヤルノだが、追いつくと走りづらくなり、パスすることはできなかった。  

ふたりともスタートはそう悪くなかったのですが、1つ目のシケインでラルフが押し出される格好になり、2コーナーの内側に逃げました。そこでポジションを落としたのが結果につながってしまいました。ヤルノに付いていける状態だっただけに残念です。ただ、それも予選でもっといいポジションに行かなかったのがもともとの原因。きちんとしたクルマを用意できなかった我々の責任です。

レース中ラルフはパラボリカで前のクルマに仕掛けたり、ヤルノも積極的に前の車を追い上げていましたが前走車の背後につくとやはり気流が乱れて走りにくく追い越すところまではなかなか行きませんでした。ヤルノもラルフも難しい状況のなか最後まで良く頑張って走ってくれたと思います。

高速サーキットのモンツァでふたりとも最後まで走りきってくれました。予選結果を考えれば、いいレースができたと思っています。次の上海や鈴鹿も我々トヨタのクルマに合っていると思います。それに向けて空力もさらにアップデートします。上海でいい結果を残し、日本に帰るつもりですので、今後とも応援よろしくお願いします。

モンツァの高速バトルに挑む新居章年。ヤルノが7位入賞を果たし2ポイント獲得できたものの、細かな課題が残る週末となった。残り3戦、さらなる戦闘力アップを目指す。