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Rd18. Grand Prix of Brazil
grand prix
新居章年リポート
2006年10月22日(日)
 

いつも応援ありがとうございます。今シーズンの最終戦、インテルラゴスで行われたブラジルGPの報告をいたしましょう。

日本GPでは出し切れなかったTF106Bの実力をフルに発揮したい
早いもので、もう最終戦。開幕戦のバーレーンGPが「ついこの間のこと」のようで、本当にあっという間の18戦でした。その最後の戦いとなるブラジルGPですが、まずサンパウロに到着してみてビックリしたのが、涼しい気候。確かに南半球のブラジルはいまはまだ春先ですが、昨年よりも1カ月遅く開催されているので、もう少し暖かいことを想像していただけに、正直驚きました。日曜日に向けて、天候は徐々に回復していくとの予報ですが、それでも気温は20℃台、路面温度も最高でも35℃ぐらいしか上がらないとの見込みでしたので、日曜日を除けば、涼しいコンディションといえるでしょう。

TF106そしてTF106Bと1年間進化を続けてきた今年の車両も、日本GPでほぼバージョンアップが完了、また空力的な特性も近いことから、ここブラジルには前戦とほぼ同仕様のものが持ち込まれた。  

クルマは前回の日本GPと基本的に同じで、空力に関しての変更点はありません。鈴鹿サーキットに比べてインテルラゴスは最高速が少し高いですが、ほとんど同じ空力仕様なので、鈴鹿の予選で見せたスピードをここでも披露できると思っています。またエンジンも日本GPがフレッシュエンジンでしたので、引き続き同じエンジンを今回も使用しています。ここで完走すれば、このエンジンが来年用エンジンのホモロゲーション(認証)となるので、しっかりと走りきってほしいというところでした。

金曜日からの天候をしっかり見極めて、パーフェクトなタイヤ選択を目指す
インテルラゴスの特徴といえば、バンピーな路面。したがって、金曜日のフリー走行では、その路面をいかに攻略するかというところにポイントを置いたセットアップ作業となりました。バンプ対策というのは、具体的には前後のサスペンションを調整する作業を行うことです。今日は2人とも、ピットイン&アウトを繰り返して、調整を行っていました。

 
打ち合せをするシャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーのパスカル・バセロンとブリヂストンのエンジニア。今回は金~土曜日にかけて天候が不安定だったこともあり、タイヤ選びは慎重にスタートした。

もうひとつ、金曜日のフリー走行で重要な作業は、タイヤの比較テストです。ただタイヤ選択に関しては、この時点では少し悩むと思っていました。それはタイヤに問題があるのではなく、天候が読めないことにあります。地元の人たちですら、「春とは思えないくらい寒い」と言うほどですから。今後天気が回復していくのか、下降線を辿るのかによって、タイヤを選択は変わります。今年は、予選前までに使用するタイヤを決めればいいわけですから、ぎりぎりまで待って、土曜日以降の天気をしっかりと見極めるつもりでした。

初日を終えた段階では、まだ正確な力関係は語れませんが、トラブルもなく、走り始めからそこそこのスピードを見せていましたから、順調なブラジルGP1日目だったと言っていいでしょう。

タイヤ選択、クルマのセットアップも順調に進み、予選2列目を獲得
金曜日の夜の段階である程度、タイヤ選択は決まっていましたが、午前中のフリー走行では2種類のタイヤを再度履き比べて、最終的なチェックを行いました。ただ、セッション中にパフォーマンスの違いがはっきり出たことと、土曜日の午後から日曜日にかけての天候が比較的安定するという方向に傾いたことで、タイヤ選択は結果的には悩まずに決まりました。

結果的に予選前の段階で天候もはっきりとした方向が見え、正しいタイヤ選択も行え、予選ではヤルノ3番手、ラルフも僅差の7番手と日本GPに続いて一発の速さをアピールできた。  

ただ、午前中の段階では、まだバンプ対策が完璧ではなく、低速コーナーでオーバーステアだったり、縁石でもスナップオーバー(前後のタイヤにかかる荷重が変化した結果現れるオーバーステア)が出ていたので、セッティングの調整を行っていました。午前中にタイムが伸びなかったのは、ユーズドタイヤを使用していたからで、予選に向けては順調でした。

午後の予選は、それを証明した結果だったと思います。2人がそろって最終ピリオドに駒を進め、ヤルノが3番手を獲得したことは、正直うれしいです。昨年の最終戦は表彰台を獲得していますが、相対的なパフォーマンスとしては終盤へ向けて苦しんでいました。今年は結果こそ残すことはできていませんが、予選でのパフォーマンスを考えると上向きなので、日曜日のレースではしっかりと結果を残して、シーズンを締めくくりたいと思っています。

スピードを結果に結びつけられず残念。しかし、クルマは確実に進化できた
アメリカGPの予選でヤルノに発生したトラブルが、今回は2人に発生しました。リアサスペンションの一部であるセントラルエレメントが壊れてしまいました。アメリカGPの後にこの部分はしっかりと見直しを図り、その後はトラブルが出ていなかっただけに、残念です。このサーキットがほかのサーキットに比べてバンピーだったことが、壊れた要因のひとつだったと考えられますが、結果的に再び同じ部分にトラブルを発生させたということは、我々の対策が万全ではなかったということ。その点に関しては、反省しなければなりません。

セーフティカーラン直後に2台に立て続けに発生しているので、タイヤの内圧が関係しているのではないかと調べましたが、2台とも適正範囲内でレースを再スタートしているので、それが原因ではないと思います。また、レース序盤ということで、燃料搭載量も懸念されましたが、当然予選と同じ重さでレーススタートしており、それが原因だったとは考えられません。いずれにしても、サーキットで原因を究明することはできないので、これに関してはファクトリーに帰ってからしっかりと調査し、対策を施したいと思っています。

 
スタートもポジションをキープでき、今シーズンの課題であった「よいスタート」も前戦に続いてクリアできたのだが、このあとのトラブルでトヨタのブラジルGPはわずか10周で終わってしまった。

とはいえ、シーズン序盤で苦しんでいた予選での一発の速さも、今回ヤルノが3番手に食い込み、かなり向上したと思います。また、何度か失速していたスタートも、今日は2人とも好ダッシュを披露してくれたので、クルマのパフォーマンスは年初からかなり進化できたと思っています。残念ながら、今シーズンもうひとつの課題だった信頼性の欠如が、今回顔を出し、まだまだやるべきことがあると思いました。しかし シーズンを通して車を進歩させてきたことはチーム全体の自信につながって来ています。来年は速さと強さを持った車を必ず持って来ます。

皆さんの期待に応えられないままシーズンを終了することになりましたが、本当に一年間、ご声援ありがとうございました。来年も、パナソニック・トヨタ・レーシングを応援よろしくお願いします。

シーズン最終戦に挑む新居章年。予想外のトラブルに見舞われ、厳しい結果でシーズンを終えることとなった。だがこれを糧とし、チーム一丸となって来年の飛躍を目指す。