ルカ、マレーシアGPに向けて今はどんな思いなのでしょう?
「マレーシアでのレースを楽しみにしているよ。今回は2レース1エンジンという新ルールの影響を目にできる初めての機会になるからね。オーストラリアとマレーシアの2戦に向けて、われわれは出来る限り最高の仕事をしてきたが、当然のこと私はすこし不安も感じている――今まで1基のエンジンで2レースを走りきったことはないわけだからね。ただし不安といっても同時にワクワクするような気分でもある。期待と予感でいっぱい、といったところだ。今週末に、われわれが冬の間に計画し、開発し、実現してきたことが十分足りていたかどうかがはっきりするわけだ」
メルボルンでは各チームともにエンジンの信頼性の問題は皆無でしたが、これには驚かれましたか?
「正直なところ、オーストラリアでは“どのチームのエンジンも信頼性には問題ないだろう”と私は最初から思っていた。実際にレースの週末全体を通じてエンジンの信頼性は素晴らしかった。去年の時点ですら、ほとんどのチームは1レースを1エンジンで乗り切ることに何ら不安は持っていなかったしね。だからメルボルンで大変な事態になることを予想していた人間がいたとは私は思わないよ」
あなたの視点から見て、新しいエンジン・レギュレーションは十分に厳格なものだと言えますか?
「2005年のエンジン・レギュレーションには曖昧な部分が残っている。レースを終える前にドライバーがピットインすれば、何も問題を抱えていないクルマをリタイヤさせることができるし、そうすれば次のレースのために自由にエンジンを交換することも可能になる」
このレギュレーションの抜け穴に関して、トヨタの考えは?
「テクニカル・レギュレーションにこのような抜け穴があること自体にトヨタは反対している。トヨタは、新しい2レース1エンジンのルールの精神と意図を十分に理解している。オーストラリアではチームに対して4回のフリー走行すべてに出走する機会を与えた。これはコース上でのクルマの挙動をチェックすることが重要だからだけではない。われわれが週末のすべてのセッションに参加することが、F1というショーの一部でもあるからだ。われわれのドライバーはレースでポイントを獲ることができなかったが、われわれは新レギュレーションの精神を汲んで、チェッカーフラッグを受けることにした。このことは当然マレーシアGPでのエンジンのトラブルの可能性を高めてしまうことになるが、それでもこれが今年のレースの考え方なのだとわれわれは理解している」
オーストラリアGPで1回目の予選後にラルフのクルマのエンジンを交換しなかったのもそれが理由だったのでしょうか?
「その通りだ。ラルフの1回目の予選は、悪天候の影響で台無しにされてしまい、その結果グリッドの後方に下がることになった。ああいった状況であれば、ペナルティもそれほどたいしたものではなくなるわけだから、エンジンを交換してしまったほうが話は簡単だった。だがわれわれの考え方としては――特に開幕戦において――そういったことをするのは受け入れがたいことだった。もちろんシーズン中は、何らかの技術的問題や不安を感じたときにエンジンを交換することもあるだろう。だが、シーズン開幕前に同意されている紳士協定を鑑み、そういった事態を避けることができる場合であればエンジンは交換せずに済ますだろう」
メルボルンでラルフとヤルノはかなりの周回を重ねましたよね。彼らが使用しているRVX-05エンジンの現在までの走行距離はそれぞれどの位ですか?
「オーストラリアの週末で最も長い距離を走破したチームはわれわれのはずだ――すくなくともわれわれとジョーダンだろう! ラルフはすでに約570キロ走っているし、ヤルノのほうは約670キロだね」
ジョーダンとの関係はいかがですか?
「オーストラリアでジョーダンとトヨタの仕事は非常にスムーズに進んだと思う。ジョーダンはわれわれの貢献にとても満足しているようだった。われわれとしても彼らの運営の仕方には特に満足している。ジョーダンには経験の浅いドライバーが3人いるが、これはエンジンの使い方の面でミスを生む可能性が高いということになる。だが、彼らの仕事ぶりはとてもよかったし、また彼らがこれから腕を上げていくことを楽しみにもしている。運のいいことに、パドックでわれわれは隣同士だから仕事上の関係も非常に緊密になっている。エンジン部門のテクニカル・ディレクターとしては、レースの週末に2基ではなく4基のエンジンの面倒を見なければならないから、その分ストレスは増えているけどね」
これからエンジンは2レース目を迎えるわけですが、そのパフォーマンスにはどういった影響が出てくるのでしょうか?
「エンジンのパフォーマンスというのは通常200~300キロを走ったあたりから上昇していく。1周目と比較するとパフォーマンスのレベルは徐々に上がっていくんだ。ここで言う“エンジン・パフォーマンス”には、パフォーマンスの安定性も含まれている。われわれが目指しているのは、1200キロを走り終えてからも安定して馬力を出せるエンジンだ。エンジン開発にあたってわれわれの指標になったのもこの要素だ。エンジンの寿命が終わりに近づくと、パフォーマンスは低下し始めるが、それを最低限にとどめるのもわれわれの仕事になる」
レギュレーションのほかに、マレーシアでエンジンにかかる負荷としてどんな要素がありますか?
「単純に言えば“暑さ”だね。マレーシアは暑いとみんなが言っているが、われわれが直面する最大の問題はまさにそれだ。クルマやドライバーにはもちろん、ピットで作業するクルーをはじめチームのあらゆる面に影響するからね。マレーシアはシーズンで最初の暑い気候の中で行われるレースになる。もしかしたら一番暑いレースかもしれない。だからエンジン内部の状態が非常に重要になる。セパン・インターナショナル・サーキットには長いストレートが2つあるため、ダウンフォースと同じくらい最高スピードも重要になる。だが最大の問題はやはり暑さだ。実は、ケルンにある設備ではトランジェント・ダイナモ(*Transient dynos:トルクが増加していく状態を計測できる)を使ってマレーシアの気温を再現することが可能なんだ。われわれはさまざまな要素を考慮した上で、今週末に予想される気温よりもさらに高い温度設定にして、エンジンが問題なく動くかどうかの確認作業を懸命に行ってきた」
エンジンの冷却に関して、マレーシアを前にどんな注意を払っていますか?
「レースに先立って、空力部門ではさまざまな対策を準備している。たとえば、クルマのリアに開放部分を設けて、より多くの気流がラジエターに流れるようにしたりね。エンジンの冷却に関して、われわれの空力担当チームは非常に効率のよい対策パーツを用意してくれているから、深刻な問題が発生するとは私は思っていないよ」
最後に、マレーシアでの個人的な目標を聞かせてください。
「マレーシアGPで2レース分の距離となる約1400キロをトラブルなく走破できたら私はとても誇らしく思うだろうし、ハッピーにもなれるだろう。その上で何ポイントかを手にすることができたら、私は最高の喜びを感じるだろうね」
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