●ヤルノ、2戦連続で2位ですね! どんな気分ですか?
「パナソニック・トヨタ・レーシングのために2戦連続して2位表彰台を獲得できて本当に素晴らしい気分だ。しかもコンストラクターズ選手権で2位の足固めもできたからね。昨年トヨタと契約を結んだときには施設の素晴らしさに感銘を受けたんだけど、同時にこのチームはまだ50戦しかレースしていないということも念頭に置いていた――フェラーリなんて50年の経験があるんだからね! でもこれほど短期間でここまで強くなれるとは予想していなかった。ちょっと夢のようだ」
●バーレーンGPではアロンソ(ルノー)以外のドライバー全員をうまくコントロールしているように見えました。
「アロンソをのぞけば、自分の競争力が一番高かったと思う。フェラーリの新車に乗るミハエル・シューマッハーが日曜日の2回目の予選でいい走りをして私より前のグリッドになったけど、レースのスタートでは自分のほうがいいスタートを決めて、1コーナーでは彼の外側を走っていた。でもミハエルは引き下がるようなドライバーじゃないし、私のほうも“かなりの上位争いができる”って約束されているレースを無理に2コーナーに突っ込んで事故を起こして台無しにしたくはなかった」
●レース序盤の展開をどう分析していますか?
「自分のほうはかなり余裕があった。ミハエルはかなり攻撃的な走りをしていたね。アロンソにかなり接近していたけど、レース後のアロンソは、“フェラーリは燃料の量がかなり少なかったんじゃないかな”と言っていたよ。でもミハエルは12周でリタイヤしてしまったから、本当のところはわからない。とはいえ、タイヤに関して言えばミシュランは驚異的な仕事をしてくれていたから、私には自信があった。仮にフェラーリがレースを走り切っていたとしても勝てたと思う」
●金曜日の時点ではクルマのバランスがよくありませんでしたが、それにもかかわらずあれほど速かったのは意外でしたか?
「あれだけの競争力があるというのは、とにかく嬉しいことこの上なかったね! レースの週末を迎えた時点で自分たちがマレーシアGPと同じくらい強いはずだ、という感触は持っていた。でも金曜日に走ったときには、ちょっとドライブしにくく感じたんだ――ラップタイムはけっこうよかったけどね。ハンドリングに問題があって対策が必要だったんだ。でも土曜日にはそれも改善できた。サキール・サーキットでは、クルマのセットアップを正確に判断するのが難しいんだ。コースは砂漠の真ん中に作られているし、砂塵の問題があるからね」
●具体的に言うと、砂塵はどういった問題を引き起こすのですか?
「まず、当然のことながらコースが滑りやすくなるよね。金曜日にあれだけの数のクルマがランオフエリアにはみだしていたのはそのせいだ。それに強風が一緒になると路面のグリップが安定しなくなる。そのせいでセットアップを変更したときにその効果を測るのが難しくなるし、タイヤの選択も容易じゃなくなる。だからセットアップの進捗を適切にチェックするためには、一度につき一個所の変更にとどめておく、というのが鉄則だね。でも風向きによってコーナーの別の場所に砂がたまることになるから、それだって完璧なやり方とは言えない。それから今回はテストドライバーのリカルド・ゾンタのクルマにメカニカルトラブルが起こった。金曜日2回目のフリー走行でタイヤの評価プログラムをこなしている最中に彼がそれ以上走れなくなったから、状況がさらに複雑になってしまった」
●ということは、ほぼ空タンクでアタックする1回目の予選でクルマの状態は理想的でなかったわけですね?
「金曜日よりはよくなっていたから、土曜日のクルマの状態はそれほど悪かったわけじゃないよ。でも全開でプッシュするだけの自信は相変わらず持てなかった。実際のところ、あの状態でドライブするのはかなりきつかったね。昔の全員が同時に走って合計12周する予選方式だったら、1回目のアタックは“滑り止め”みたいなものだった。そこから残り3回のアタックで徐々にペースを上げて攻めた走りをしていったんだ。でも今の予選ではチャンスは1度しかないから、ミスをすればその代償はあまりにも大きなものになる。しかも日曜日の午前中には燃料を満タンにしてもう一度走らなければならないんだからね」
●● 空タンクでアタックするのとレースに向けた燃料を積んでアタックするのではどちらが難しいですか?(※日曜日朝の予選2回目から決勝の一回目のピットストップまでは、燃料を給油できない)
「空タンクのときのほうが速く走れる。ミスをしやすいのはレースに向けた燃料を積んで走っているときだね。空タンクで走るということはクルマの重量も軽くなるわけで、そうすると予想よりも大きなグリップを感じることがあるんだ。ミスが怖いので(各予選で、全開アタックは1周のみ。尚更にミスは禁物)、クルマの性能を最大限まで引き出しているわけじゃないけど、でもクルマは理想に近い状態になっているわけだしね。でもレース用の燃料を積んでいるときは当然クルマが重いし、したがってドライビングも難しくなる。速く走らなければならないけど、同時に無茶をせず統制がとれた走りをしなければならない。逆にそれのいい面というのは、クルマよりもドライバーが重要になる、ということだね。もちろんドライバーの腕がよくなければダメだ」
●暑さはマレーシアGPよりもひどいくらいでした。これは問題になりましたか?
「確かに気温は前戦より何度か高かったけど、身体的にはマレーシアGPよりましだったね。レースではクルマをドライブするのが楽しかったし、トラブルもなにひとつなかった。でもクルマにとってバーレーンGPはかなり厳しかったようだ。あるチームが実際にトラブルに見舞われていたけど、ブレーキは限界ギリギリだった。砂塵のせいでコースコンディションが予測不可能だったし、エンジントラブルも引き起こしかねなかった。だからエアフィルターを何種類も持ち込んで、状況に応じてどれを使うかを決めたんだ。目が細かいフィルターは砂塵の侵入を防ぐには好都合だけど、その分エンジンの馬力が犠牲になる。エンジン担当者たちはそのせいで20馬力も落ちる、と言っていたよ。これに関しては適切な判断が必要になる――ご想像の通り、レース用エンジンと砂塵は相性が良くないからね! 繰り返しになるけど、チームのみんなは本当に素晴らしい仕事をしてくれたし、それに、フライアウェイ(ヨーロッパから遠く離れた国で開催されるレース)の3戦で100パーセントの信頼性を実現できたことがどれほどすごいことなのか、これは何度言っても言い足りないほどだ」
●サンマリノGP(イモラ・サーキット)でヨーロッパラウンドが開幕しますが、ここまでの勢いを持続できると思いますか?
「確かに過去3年はイモラとトヨタの相性は良くないけど、でも、このペースを維持できない理由なんて見あたらないね。去年までのトヨタは、コーナーを走り抜ける際のクルマの挙動に問題があったんだ。イモラで速いタイムを出すにはそれが非常に重要になるからね。でもマイク・ガスコインが言っているように、たとえ問題が山積みだとしても、空力パッケージがまともならすべては解決できる。そしてわれわれのクルマの空力は間違いなく進化している。サンマリノGPではさらに空力が改良されるから、これからのヨーロッパラウンドでもさらに成功を積み重ねられるはずだ」
以上、ヤルノQ&Aでした。次回のサンマリノGPでも、パナソニック・トヨタ・レーシングの活躍に期待して下さい。
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