●あり得ないほど厳しいレースとなるモナコGPに向けて準備を進める際、通常と一番異なるのはどんなことですか?
「モナコGPへの準備の中で一番わかりやすい違いは4台目のクルマの存在だ。もうすこし厳密に言えば“2台目のスペアカー”だね。コース幅が非常に狭く、またバリア(保護壁)に囲まれているため、ドライバーがクラッシュする確率が大幅に高まる。したがってヤルノとラルフの両方にスペアカーを準備しておくわけだ」
●クルマのセットアップを進めるときは、安全面についてその他どんなことを事前に気をつけておく必要がありますか?
「安全面で考慮すべき点としては、ステアリング(を切る角度)の最大値に注意しなければならない。というのも、全レースを通じて最もタイトなコーナー、ローズ・ヘアピンがあるからね。同時に、モナコにはシーズンの中でも一、二を争う高速コーナーがある――7速で抜けていくトンネルがそれだ。それから万が一バリアに衝突したときに備えて――こうした事態はいつ起きてもおかしくない――サスペンションにドライバー保護のための対策を施しておかなければならない。必ずしもスペアパーツの数を多めにしておく必要はないが、修理用のサスペンションとボディワークの数は十分に用意しておかなければならない」
●モナコのコースの特徴を教えてください。
「モナコはとにかく得られる限り最大のダウンフォースが必要になるコースのひとつだ。メカニカル・グリップも十分得られるよう、セットアップの際はちょうどいいバランスを見つけなければならない。ストリートサーキットの必然として、モナコは非常にコース幅が狭く、そのため追い越しは事実上不可能になる」
●予選グリッドで上位を得るために燃料搭載量をあえて少な目にしたい気持ちになりませんか?
「予選に特別注意を向ける必要があるわけではない。というのは、予選ラップの1周の間に、ドライバーがクルマのポテンシャルをすべて引き出せるようにしなければならないわけだし、同時にそのクルマとタイヤで78周のタフなレースでいいパフォーマンスを続けなければならないわけだからね。その意味では、予選で燃料を軽くしたい誘惑に負けてレースのペースを妥協する、ということにはならないだろう。今年のモナコでは何台かのクルマが1回ストップを選択してくることも十分に予想できる。もちろん予選は重要だが、かといってそのためにレースのペースを犠牲にしてはダメだ。レース全体を通しての安定感が鍵になるからね。過去のレースを振り返ってみると、燃料搭載量が多くても安定した走りができれば、前を走っているクルマよりすこし長めに走って1回目のピットストップを遅らせることで、結果的にそのクルマを追い抜けることがわかっている。ただし遅いクルマの後ろに引っかかってしまうと、トップ集団から置いて行かれる危険もある。そうなってしまうと、いい順位でフィニッシュすることが難しくなってしまうけどね」
●モナコは事前にテスト走行ができないサーキットですが、この場合はどうやって準備するのですか?
「モナコと比較できるようなサーキットは年間カレンダーの中にひとつもない。だから100パーセントの準備は難しいね。今回のレースに向けたテストはポールリカールで行った。ポールリカールでは超低速コーナーをテストすることができるからね。それに路面の状態も似ているため、モナコGPの事前準備としてはあそこが最適なコースだと考えている。もちろん、昨年までのモナコGPから収集した膨大なデータも参照しているよ。だから、木曜日のフリー走行でどのレベルから始めるべきなのかは、かなりよくわかっている」
●モナコを周回する場合、クルマのどの部分の性能を特に高める必要があるのでしょう?
「モナコの場合、パフォーマンスを左右する要素として“特にこの部分”というのはないと思う。大切なのはヤルノとラルフに1周を通じて簡単にドライブできるクルマを提供することだ。ハンドリングの問題をゼロにして――もし何か問題があればそのせいでバリアに衝突してレースが終わりになってしまう――彼らにTF105から最高のパフォーマンスを引き出してもらわなければならない。ドライブするには本当にきついコースだけに、逆にドライバーにとっては能力や才能を見せるチャンスでもある。だがわれわれエンジニアたちは、彼らがそうできるだけの速さのあるクルマを用意してあげなければならない」
●新しいピット施設の印象はいかがですか?
「昨年新設されたピット施設は、過去のものと比較すると大きな進歩を遂げたと言えるね。お陰で作業が随分快適になった。特に、ピットレーンから20分も歩いて行かなければならない丘の上の駐車場を使っていたチームならなおさらだろう。もちろん私は丘の上の駐車場から徒歩でパドックへ向かい、そしてピットレーンへと歩いていた当時の状況がなくなって残念だなんて思っていない。ただし、夕方ホテルに戻る際に、ローラーブレーダーで坂を滑り下りていった体験なら懐かしい思い出だと認めるけどね!」 |