第63回モナコGPに挑むパナソニック・トヨタ・レーシングは、これまでのところ“未だステップアップの途中”といった状況だ。1回目の予選を終えた段階で、昨年のポールシッターであり優勝者でもあるヤルノ・トゥルーリが7位、ラルフ・シューマッハーは海側の左コーナー――通称“タバコ・コーナー”――でクラッシュを喫しノータイムという結果に終わっている。
ラルフにとってこの週末の状況はますます悪くなるいっぽうだ。最初の不運に見舞われたのは木曜日のこと。チームに供給されたタイヤの1つに識別マークが付いておらず、またFIAの技術責任者に報告せずにミシュランのスタッフがそのタイヤを交換してしまったのだ。交換されたタイヤはフリー走行で使用された他のタイヤと性能的にまったく同じものだったが、スポーティング・レギュレーションの第75項d条に従って、スチュワードはラルフの予選の合計タイムに0.5秒加算する決定をくだした。
他のどのレースにも増して予選の順位が重要になるのがモナコGPだ。ラルフにとっては自分にまったく非のないミスによってペナルティを被ることは受け入れがたいことだっただろう。タイヤを供給するミシュランは公式にその責任を認める旨の声明を発表し、チームとラルフに謝罪している。
土曜日午前中のフリー走行ではかなりの速さを見せていたトヨタの2台だが、終了間際にラルフがデヴィッド・クルサードとジャック・ヴィルヌーヴとの接触事故に巻き込まれる。ラルフはスピードを緩めていたファン・パブロ・モントーヤの後ろを走っていた。チームは昼食の時間を利用してクルマを修復している。
そして迎えた非常に重要な最初の予選では――2台とも有利な出走順だった――タバコ・コーナーでラルフがクラッシュを喫してしまう。
「午前中のアクシデントの影響はまったくなく、クルマには何も問題はなかった」と話すラルフ。「とにかくハードに攻めていて、タバコ・コーナーの進入で壁の内側にタイヤを接触させてしまった。そのせいでクルマがコースの反対側の壁にまで飛ばされた。衝撃もかなり大きかった」
予選セッションはここで赤旗が振られ、ラルフのクルマの破片を撤去し、漏れたオイル、水などを清掃し路面をきれいにするためしばらく中断となった。だが、この直後の出走となっていたヤルノにとっては、まったく不運な状況となってしまう。
「あの状況ではプラスになることは何もなかった」と話すヤルノ。「遅延のせいで路面温度が下がってしまったし、清掃後もコースはかなり埃っぽくて、また、ラルフがクラッシュした周辺は汚れていたからね。そのせいで1周目のウォームアップでタイヤをきれいな状態に保つことができなかった。結果的に予選タイム(1分15秒189)が予想よりも遅くなってしまった」
暫定ポールポジションを獲得したのはスペインGPの覇者、ウェスト・マクラーレン・メルセデスのキミ・ライコネンだった(1分13秒644)。タイトル争いで首位に立つマイルド・セヴン・ルノーF1のフェルナンド・アロンソが1分14秒125で2位、BMWウィリアムズF1チームのマーク・ウェバーが1分14秒584で3位となり、以下、4位にルノーのジャンカルロ・フィジケラ(1分14秒783)、5位にマクラーレンのファン・パブロ・モントーヤ(1分14秒858)、6位にウィリアムズのニック・ハイドフェルド(1分15秒128)と続いた。
チーフ・レース・エンジニアのディーター・ガスが今日のパナソニック・トヨタ・レーシングのパフォーマンスを総括してくれた。「われわれは十分すぎるほどの不運に見舞われてしまった。モナコでは些細なミスひとつがとても大きな代償を払う結果につながってしまう。クラッシュしたラルフは最後尾からタフなレースをしていかなければならない。クルマが修理可能かどうかも、これからよく確認してみなければならない」
「ヤルノにとっても今回の状況は不運だった。ただしレース用の燃料を搭載して行われる2回目の予選を前にして、トップ4との差はわずか0.4秒だ。かなり難しい仕事をこれからこなしていかなければならないが、モナコは予想外のことが起こるレースでもある。できる限りの成果を挙げて、ここまでの5戦で獲得したコンストラクターズ選手権の40ポイントにさらに上乗せするためにも、われわれはベストを尽くさなければならない」 |