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Rd.6 Grand Prix of Monaco Keizo Takahashi report
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高橋敬三リポート:日曜日

2005年05月22日(日)

応援ありがとうございました。モナコGPの予選2回目と決勝についてご報告いたします。

今回のモナコは思ったよりも荒れたレースとなりました。結果は、期待したヤルノはアクシデントで10位となってしまいましたが、予選でのペナルティやクラッシュなどを乗り越えて6位に入ったラルフは非常にうれしい結果となりました。この調子でTMGにとって地元となる、次のドイツ、ニュルブルクリンクのレースも頑張ってもらいたいと思います。相変わらずマクラーレンは調子が良いようですが、必ず追いつけると思っています。

●ヤルノは予選ポジションを2つ上げ、5位へと躍進!
モナコは抜けないコースだけに予選が非常に大事なのですが、今回は予選でちょっとつまずいてしまいました。それでもヤルノは2回目の予選で頑張って、前日7番手よりポジションを2つ上げ、5番手を獲得しました。予選2回目の彼の走りは完璧でした。燃費もタイヤの減りも悪くなかったので、我々は1回ストップの作戦を採ったため、燃料はかなり積んでいての結果ですから、本当にドライバーの頑張りです。

ラルフは最後尾からのスタートが決まっていたため、2回目の予選はアタックせずに1周でピットに入れました。今回の予選を終えた時には、ウィリアムズとザウバーだけが燃料を軽くしてきたと感じていました。意外と1回ストップが多いという印象でした。ただ、ルノーあたりは1回でも、2回でもいけるような感じではありました。モナコは抜けないコースだけに、予選と戦略が大切です。

● 前半は順調だったが、誤算はルノーの1回ストップ
スタートではヤルノがうまくウェバーをかわしてくれて、序盤は狙い通りの展開になっていました。ラルフの方は最後尾からの追い上げでしたから、予想どおり遅いクルマに手を焼いていましたが、それでも徐々に順位を上げていました。25周目にミラボーでミナルディがスピンしてコースを塞いでしまい、セーフティーカーが出たとき、ウィリアムズ、ルノーはピットインして燃料を入れましたが、我々の戦略では意味がないと判断してそのまま行かせました。この判断はいまでも正しかったと思います。ただ、その時点ではウィリアムズとルノーは2回ストップと読んでいました。まさかルノーが1回だとは思いませんでしたね。それが大きな誤算でした。

セーフティーカーが入ったため、多少燃費が良かったのでピットインは少し引っ張って39周目にヤルノを入れました。そのピットアウト後に、ルノーのフィジケラの後ろになってしまってから予定が狂いました。ルノーは早目にピットインしていましたが、1回ストップの戦略を採ったため、燃費を気にして後半はペースを大きく落としたからです。さらにルノーのマシンは、ピットから見るとリアタイヤを磨耗して苦しそうでした。そのため、ペースを抑えられてしまい、2回ストップの、ウィリアムズ2台の前に出られるはずが、出られなかった。さらに、遅いフィジケラに痺れを切らしたヤルノが、ヘアピンのインで縁石に乗り上げて抜いたのは良かったのですが、ちょっと無理があったようです。
その後、無線でリアサスペンションがおかしいと訴えてきました。データでは何もおかしいところはなかったのですが、すぐにピットに入れて、タイヤとリアサスペンションを点検しました。結局、どこにも異常はなくそのままピットアウトさせましたが、それでもヤルノは違和感があるというのでそこからはペースを落として走らせました。

レース後、冨田務TMG会長と握手するラルフ。  

ヤルノが入賞圏内から落ちた後、ラルフが頑張って6位まで上がって入賞したことは非常にうれしいですね。最後はラルフの実兄のミハエル・シューマッハーとチェッカー前で競り合って、ホイール同士が接触する一幕もありました。その差0.04秒。最後の瞬間まで勝負は続きました。

モナコは我々のクルマとの相性が悪いこともあって苦手意識がありましたが、今日のようなレースでラルフが6位に入ってくれたことは、非常にうれしいことです。苦手意識もちょっと克服できたかなと思いますね。それにしてもマクラーレンは速かった。トップに出て速ければ、レースは楽な展開で勝てるのは当然ですね。気になるのはルノーで、2台ともタイヤ的にきつかったようですし、意外でしたね。いままでは我々よりもタイヤ的にアドバンテージを持っていた部分もありましたから。こうなると、最大の敵はマクラーレンということですね。ただ、フェラーリも不気味な存在です。レースでは安定して速いペースで走っていましたから。モナコだからあそこまででしたが、普通のサーキットならもっと上に来そうな感じです。そして、1チーム2台をここまでリタイア無しで終えているのは、我々パナソニック・トヨタ・レーシングのみ、というお話を前回のGPでもお伝えしましたが、今回もノーリタイアのその記録を更新できました。タイヤを始めとするパーツサプライヤーの高い技術力に本当に感謝するとともに、その記録の理由には、エンジンの耐久性、車体といったメカニカルな面、それを走らせるヒューマン的な面の結束の強さもあるでしょう。

● TMGの地元ニュルブルクリンクで、空力もエンジンも一新!
次はTMGのあるドイツ・ケルンから一番近い、ニュルブルクリンクです。電話一本で1時間もあればパーツも届きます。空力はもちろん、エンジンも新スペックとなります。ただし、ラルフは予選でのクラッシュによるエンジン交換により、次戦も今回のエンジンを搭載しますので、新スペックエンジンはヤルノだけになります。空力はギリギリまでやって作ってきます。地元ですから金曜日の朝に出来上がっても間に合います。優勝するまで少しも気は抜きません。開催はモナコGPより一週間後です。
次戦も、パナソニック・トヨタ・レーシングへの応援よろしくお願いいたします。

高橋敬三プロフィール
苦手なコースで確かな手応えを感じ取った高橋敬三。