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Rd.6 Grand Prix of Monaco Keizo Takahashi report
grand prix
木・土曜日 日曜日
高橋敬三リポート:木・土曜日
2005年05月21日(土)

みなさん、こんにちは高橋敬三です。いつも公式サイトへアクセスありがとうございます。木曜日、土曜日の報告になります。

●木曜日 フリー走行の報告から
前回のスペインでは、ヤルノ3位、ラルフ4位とダブル入賞を果たし、チームの状況は非常に良い状態です。モナコはどちらかというと、我々のクルマには相性の良くないコースですが、先日のポールリカールのテストでは、モナコ仕様で良いセッティングも見つかったこともあり期待してモナコに乗り込みました。そして、今回のモナコGPは、金曜日に王室主催のパーティが開催されるため、木曜日、土曜日、日曜日というスケジュールのグランプリです。

● 空力はダウンフォース重視、セッティングは特殊なモナコ仕様
今回のモナコに向けて、クルマで大きく変えてきたのは空力だけです。とにかく、路面のグリップが低く、特殊なモナコにはマキシマムのダウンフォースが必要です。そのため、フロントとリアに小さなウイングを追加してきました。サスペンションは、凹凸の激しい一般道に合わせて車高を上げ、柔らかくセッティングされています。タイトなヘアピンに対応するため、ハンドルの切れ角を大きくするよう、アームも変えてきました。また、立ち上がりのトラクション重視とするため、重量配分もリア寄りに変えてあります。エンジンのマッピングもドライバビリティ優先となっています。これが、モナコ仕様と呼ばれる特殊なセッティングです。ドライバーにとってはちょっと乗りづらいセッティングかもしれませんね。

タイヤも特殊で、他では使わないような超ソフトのタイヤを使います。路面のグリップが少ないため、タイヤの減りも少ないし、周回数は78周と多いですが、1周が短いので、距離も短く、タイヤ的には楽なコースといえます。デグラデーションも心配ないですし。距離が短いということは燃費的にも楽なコースと言えます。エンジン全開率も50%くらいです。燃料に関しては、満タンで大体40周から50周の間くらいいけるので、予選の結果次第では、戦略的に1回ストップということも十分ありえるサーキットです。

● セッティングに悩む木曜日。やはり、モナコは苦手なコースか?
木曜日のフリー走行は結果から言えば、3台ともまだバランスがとれていない状態で終わってしまいました。3人ともいえるのは、メカニカルのグリップが足りないということです。特にリカルドのクルマは、今までとまったく違うセッティングを、最初に試してみましたが、クルマが非常にナーバスになり、午後の走行ではいつものセッティングに近いものに戻しました。ラルフとヤルノはセッティングを最初から大きくは振らずに詰めていきましたが、まだバランスは取りきれませんでした。ただ、タイヤに関してのデータは十分取れたので、タイヤの選択はそれほど悩まずにすみそうです。今回のタイヤはコンパウンド3種類、ケーシング2種類あり、どれもが性能的にもかなりの差があって、あとは磨耗との兼ね合いでしょうね。

タイム、順位ともにいまひとつなのですが、ロングランのタイムを見るとそれほど悪くないかなとも思います。ただ、周回数が多いので、レース中はもっと安定する方向にセットアップしていく事が、ドライバーのためにも必要ですね。もともと、モナコは超ソフトのタイヤを使うのですが、今年はタイヤを1レース持たせなければならないので、その分、去年よりは硬く、そのためクルマがナーバスになっているのではないかと思います。それにしても、この結果は想定外ですね。もともとクルマとの相性は良くないコースですが、もう少し良いと思っていましたから。まあ、明日は休みなので一日ゆっくり考えます。

●土曜日 予選一回目の報告です。
金曜日の休日の間にラルフの木曜日に使ったタイヤが登録されていなかったということで、ペナルティを受けてしまいました。これは、ミシュランサイドのイージーミスで、まったく寝耳に水でした。そのため、ラルフは予選タイムから0.5秒加算されることとなり、非常に不利な状況となってしまいました。そして、この出来事から始まって、この日はラルフにとって散々な日となってしまいました。

土曜日の午前中のフリー走行では、ラルフのクルマをよりソフトな方向でセットアップしていったのが当たって、クルマのバランスが良くなっていきました。ヤルノの方も、それを参考にして、最後のアタックではヤルノ4番手、ラルフ6番手と予選前に順調に仕上がりました。ただ、ラルフの方は目の前のモントーヤが急にブレーキをかけ、そのせいで後ろにいたクルサードとビルヌーブが衝突し、その勢いでラルフも巻き込まれてしまいました。この時点では、見た目ほどクルマは壊れていなかったのですが……。

モナコ用に、テールライトの上にも新たにウイングが追加されている。(チームでは、リアクラッシュウイングと呼んでいるようだ)  

午後の予選1回目。15番目のスタートだったラルフは途中まで速く、これはいけるかなと思ったのですが、タバココーナーの手前で左フロントタイヤをガードレールに軽くヒットさせてしまい、その先のアウト側のガードレールに強くクラッシュしてしまいました。やはり、予選でのペナルティがどこか引っかかっていたのかもしれませんね。

その直後にアタックしたヤルノは、慎重にいきすぎてしまったようです。特に、ラルフがクラッシュしたタバココーナーの辺りでは、データで見ても0.4秒もロスしていましたから。その後のアロンソ、ライコネンが好タイムをマークしたのを見ても、惜しい結果となってしまいましたね。特にクルマが決まっていただけに残念です。2人とも2列目までには並べる可能性があったのに。


明日の決勝の戦略は、前とのタイム差があるだけにヤルノの方は悩みますね。ラルフはおそらく最後尾になってしまいますので、燃料を積んでいきます。ラルフのクルマはモノコックも壊れていたので、明日までにモノコックも、エンジンも交換します。Tカーを使うとピットスタートとなってしまうため、モノコック交換します。次のニュルブルクリンクでは新スペックのエンジンを投入するつもりでしたが、ラルフはここでエンジン交換してしまう事になりましたので、次戦のニュルブルクリンクに今回のエンジンを引継ぎますので、新スペックエンジンは、次戦でヤルノだけが使うことになりそうです。

日曜日の午前中は今週で一番雨が降る確率の高いときなので、ちょっと天気が気になりますね。その辺がキーポイントになるかもしれませんね。では、決勝後にまたこの公式サイト「高橋敬三リポート」でご報告いたします。

高橋敬三プロフィール
モナコ用に、フロントウイングのメインフラップ上にT字型の小さなウイングが追加された。