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Rd.8 Grand Prix of Canada report
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ディーター・ガス Q+A - カナダGPとアメリカGPを前に
北アメリカ大陸を舞台に2週連続で開催されるカナダGPとアメリカGPを前に、両サーキットの特徴と対策をチーフ・レース・エンジニアであるディーター・ガスに聞いた。~TMG広報スタッフ
2005年6月3日(金)

●カナダGPの舞台となるジル・ヴィルヌーヴ・サーキットの特徴を教えてください。
「ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットはダウンフォースが中~低レベルのサーキットだ。また、トップスピードもそれなりに速い。かなりよくトラクションが効くようにクルマをセットアップしなければならないし、ハードにブレーキするコーナー対策としてクルマの方向転換もスムーズにできなければダメだ。また、スロットルの反応をよくして、ストレートで短時間に、スピードに乗れるようにしておく必要もある。ヤルノとラルフにはそれぞれにぴったりのクルマを用意しなければならない。つまり、メカニカルな面のセットアップに関して、適切な妥協点を見いだす必要があるわけだ」

●カナダGPでクルマのパフォーマンスを左右するのはどんな要素でしょうか?
「コースの特徴からすると、リアタイヤにかなりの負荷がかかることになる。そのため金曜日のフリー走行では、タイヤの選定を的確に行うためにリカルドの走りを十分に活用しなければならない。また、ブレーキにとって最も苛酷なサーキットのひとつでもある。実際の所、バーレーンGPに次いで2番目にブレーキに厳しいサーキットだ。シーズン序盤のバーレーンGPではいいパフォーマンスを発揮できたし、ブレーキに関してもまったく問題は発生しなかった。だからカナダGPでもそれほど難しい状況にはならないと思っている。1周あたりのブレーキの負荷はバーレーンGPと似ているため、おそらく摩耗の度合いとブレーキの温度も似たようなレベルになるはずだ」

●カナダGPのサーキットで追い越しできる可能性はありますか?
「追い越しに関して言えば、カナダはましなほうのひとつだろう。スタート/フィニッシュラインの前のストレートに続くヘアピンは低速の1速ギアのコーナーだが、ここはこのサーキットのユニークな特徴のひとつでもある。おそらくそこで何度かドライバーたちの追い越しテクニックを目にできると思う」

●今シーズンは予選順位が非常に重要になっていますが、カナダGPの予選でラルフは2番目の出走になります。これはどのくらい不利になるでしょうか?
「ニュルブルクリンクでリタイアしてしまったラルフは、新しい方式に変更になった予選で2番目に走ることになるが、これは彼にとって明らかに不利になるね。今度のコースは一部分が公道になっているため、レースの週末のはじめの段階や各セッションの最初ではほこりっぽくなってしまう。残念ながらこの問題を克服できる手段は何もない。ラルフの前に1台だけ先に走ることになるが、これがもたらす恩恵は非常にすくない。コースにタイヤのゴムが吸着してラップタイムが上がってくるまでには、たいてい5台以上のクルマが走らないといけないからね」

●現実的に考えた場合、カナダGPでパナソニック・トヨタ・レーシングはどんな成果を挙げられそうでしょうか?
「ダウンフォースが中~高レベルのサーキットでのレースを終え、次戦のモントリオールでは空力の全体的なパッケージを変える必要がある。そのため各チームの順位は再び入れ替わが激しくなるだろう。過去の戦績を見るとわれわれはカナダであまりいいパフォーマンスを発揮できていないが、今シーズンはうまくいかない理由など私には思いつかないね。今回もかなりいい結果になるはずだと楽観的に考えている」

●モントリオールの数日後にはインディアナポリスでのレースが待っています。この2つのコースの違いを教えてください。
「インディアナポリスはモントリオールと同じように中~低レベルのダウンフォースのサーキットだ。ただしインディアナポリスのほうがさらにダウンフォースが低くなる。非常に長くて超高速のストレートの後にタイトで低速のインフィールド・セクションが続く形は、昔のホッケンハイム・サーキット(ドイツGPの舞台)を彷彿とさせるね。1コーナーに続くストレートではかなりのトップスピードを出せるようにしなければならない。また、低速コーナーを抜けるときの良好なトラクションも必要だ」

●空力的には背反するその2つの要素をどのようにうまくまとめるのですか?
「基本的にはファクトリーで行っているシミュレーションを通じてどちらの方向を選択すべきかを決定する。ただし、実際のコースでもライバルチームのクルマのトップスピードをしっかり確認しておかなければならない。インディアナポリスのひとつの特徴として、ダウンフォースを強めにしても弱めにしてもラップタイムは一定していてあまり変わらない、ということが挙げられる。どこか一個所でタイムを稼いでも、別の個所ではタイムを失うことになるからだ。ラップタイムをぎりぎりまで詰めようと思ったらダウンフォースを強めにすることになるが、ただしレースではこれが足枷にもなる。バンク角がついているメインストレートでは24秒間もアクセルを全開にするわけだが、ここでうまくトップスピードを稼げれば1コーナーで他車を追い越しが容易になる。だがダウンフォースを強めにしておくとトップスピードが伸びなくなるからね」

●アメリカGPは全19戦という苛酷な今シーズンのほぼ中間地点になりますが、インディアナポリスにはどんな目標を持って臨むつもりですか?
「シーズンのここまでを振り返ってみると、レースの週末にはどんなことでも起こり得るということが言えると思う。ポイントを稼ぐためにはクルマの信頼性が非常に重要な要素になる――去年にも増してね。私としては、われわれのクルマのパフォーマンスはまだレースを勝てるレベルには到達していないと思っている。幸運があれば別だけどね。ただしどのレースでも、現実的に考えて表彰台を狙える位置にいるとも言えるね。マレーシアとバーレーンとスペインでは実際にそうなったし、モナコとニュルブルクリンクでもその可能性はあった。だからカナダGPとアメリカGPでも表彰台を獲得することがわれわれの一番の目標になる」