グランプリ > 2005グランプリ > ハンガリーGP > リポート
Rd.13 Grand Prix of Hungary report
grand prix
ラルフ・シューマッハー ハンガリーGPを振り返って
ハンガリーGPの後、3位表彰台を獲得したラルフ・シューマッハーにレースの感想や、テスト時の安全面について質問した。
~TMG広報スタッフ

●ハンガリーGPでは3位入賞を果たし、トヨタで初めての表彰台を獲得したわけですが、どんな気持ちでしたか?
「素晴らしかったね。そしてさらにポジティブだったのは、われわれが実力で表彰台フィニッシュを達成したということだ。周囲からはこれまで“予選は速いがレースではそれほど強くない”と言われていた。でもハンガロリンクでは予選とレースの両方でわれわれに速さがあることを証明できた。これは、チーム全体がすべての面で素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれたお陰だ。それに、1週間前のホッケンハイムでのレースを振り返ってみると、クルマはそのときからかなり速かったことがわかる。だからTF105というクルマ自体がとてもいいレースカーなのだと私は思うね」

●ハンガリーであれほどの速さがあったのは意外でしたか?
「みんなが心配していたのはタイヤの限界がどこかということだったと思う。とにかく非常に暑くなるのはわかっていたからね。それ以外については何も不安はなかったし、レースの週末は全体的にすべてうまくいった」

●しかし明らかにあなたは一歩前進した感じでしたよね。その要因は何だったと思いますか?
「気温とタイヤ選択の幅を考慮すると、ハンガリーではすべてがうまく噛み合うだろうと予想していた。そして実際にそういう結果になったわけだ。ただし、正直に言えば、ルノーと比較してあれほど速いとは予想していなかった。かなりの部分がタイヤの使い方と、タイヤとサーキット、そしてクルマとの相性に左右されるからね。ホッケンハイムでは、レースでそういった部分のバランスがよかった。ハンガリーではそれがさらによくなっていた」

●フェラーリの速さには驚きましたか?
「彼らのパフォーマンスのほうが上だったし、おそらくポールポジションを獲得した際の後続との差に関しては、彼ら自身も驚いていると思う。たぶん、フェラーリはすべてを正しい方向にまとめあげたのだろう。そういったことはたまに起こるからね。予選セッションの終盤に速さを発揮できたのは彼らのクルマだけだった。コースのコンディションはセッション中盤から悪化していたからね。気温や路面温度の上昇がその原因だったのかもしれない」

●ハンガロリンクを走ることについてはいかがですか? 身体的にキツイのでしょうか?
「確かにそうだ。ストレート以外は1周のなかでリラックスできる部分がまったくないからね。でも今の段階ではいいサーキットだと思う。追い越しの可能性があるし、それに安全だからね」

●実際の所、あの1コーナーでは本当に追い越しが可能なのでしょうか?
「可能だ。2003年のレースでは私も何台かあそこで追い越している。今でも可能だと思うけど、ただし問題なのはあそこで追い越すためには、最終コーナーを抜ける間、ずっと前のクルマに接近し続けなければならないということだ。でも実際にそうした走りをすると、フロント・ウィングが効果を失ってしまい、クルマがずっとアンダーステアになってしまう。こうした傾向は今シーズンになってさらに顕著になっている。というのは、空力に関するレギュレーションが変更になって、フロント・ウィングの空力効果が低下しているからだ。ストレートにつながるのが低速コーナーの場合にはそれほど大きな問題にはならないが、ハンガリーの場合、最終コーナーはそれほど低速ではないからね。今回のレースでも最後の数周に渡ってミハエルを追い越そうとしたときは、これが問題になった。自分のクルマのほうが速かったにもかかわらず、彼がミスしない限り追い越しは無理だった。もちろん彼はミスをしなかったしね」

●ハンガロリンクのコンディションは過去数年よりもよくなっていたでしょうか?
「コース全般を再舗装したわけだけど、それでもいくつかバンプは残っている。でもレイアウトは間違いなくよくなったね」

●今週、FIA会長のマックス・モズレーと安全について話し合う会合に出席しますか?
「私も出席する予定だ」

●あなたが話し合いたいと思っている主な議題は?
「特に大きな議題があるわけではないが、主にテスト時の安全についてと、これからのF1の方向性に関する意見や質問といったところだ。カンヌが会場になるはずだが、サーキットから離れて落ち着いた雰囲気に浸れる機会を持つことはいいことだね」

●テストでは1日につき2レース分の距離を走ることもあるわけですが、そう考えると、テスト時にも最低限レースと同じ安全基準が必要だと思いませんか?
「論理的に考えると、確かにそうだね。でもそのいっぽうで現状では(テスト時の安全確保は)FIAの責任の範疇ではないんだ。FIAはいろいろなことを提案することはできるし、実際に今そうしているわけだ。でもそういったアイディアを実現するかどうかは各チームの責任者に委ねられている。これが実現するはずだと私は自信を持っているけどね。それほど心配はしていないよ」

●あなたが2006年用のV8エンジンをテストするのはいつになるのでしょう?
「シーズンが終わってからだと思う。現段階でそれが必要というわけでもないしね」

●残りのシーズンをどう予想していますか? このまま前進を続けられるでしょうか?
「そう願っている。開発プログラムはまだ継続しているし、全てのレースで新しいパーツが用意される。だからとてもポジティブに考えている。ここまでと同じような形で進めば、さらに何度か表彰台を獲得できるかもしれない」

●来年の予選システムはどちらが好みですか?
「ある意味では、1台だけで予選ラップを走るのは、渋滞もないし、とてもいいことなんだ――ただしハンガリーでは前にクルマがいたけどね! そのいっぽうで、空タンクで4回走るという方法もかなりいいと思う。それに一番速いパッケージのクルマがどれなのかが誰の目にもはっきりする。ただし、今提案されている15分おきに周回しなければならない、というアイディアについてはよくわからないね」

●ハンガリーの予選で前にいたクルマというのは、つまり、ピットに戻る途中だったデヴィッド・クルサードのことですか?
「そうだ。大きな問題ではなかったけど、一瞬だけ気になった。自分のドライビングから注意がそれてしまったし、ああいったことは起こるべきではない。でもデヴィッドは謝罪してくれたし、何も問題はない。だから2度と起こらないように願うしかないね」

●あなたの兄、ミハエルは「予選システムが頻繁に変更されすぎている。F1にとってこれは良くないことだ」と言っています。この意見には賛成ですか?
「わからない。昔の予選システムの時は、最後の20分間しか重要じゃないとみんなが不平を言っていた。しかもその20分の間は、走るクルマが多すぎる、とね。でも必要なのは不平を言うことではなく、もっといい解決策を見つけることだ――私自身は持ち合わせていないけどね。予選システムの変更について行ってきたことは、どれもこのスポーツのためを思ってのことだろう。今のところ、まだ完璧ではないけどね。1周限定の予選システムであれば、観客はすくなくとも全てのクルマの走りを見ることができる。でも外から見ていて問題なのは、燃料の搭載量がわからないとか、そういったことだ。技術的な面についても目で見てわかるわけではないから、観客の多くはただたくさんのクルマが同時に走って何かが起こるのを見たいだけじゃないかなと思う」

●つまり、理想的な解決策はないのだと?
「すべての人を満足させることは絶対にできないと思うね。たとえばチームの責任者たちの間でさえ、それぞれ自分の考えを持っているし、それぞれが別の提案をしているわけだから」

●F1に秘密は必要だと思いますか? たとえば、予選の時に燃料搭載量がわかっていれば、テレビではもっといろいろな情報を伝えることができます。それに実際の所、それが知られたからと言ってレースに影響をあたえるわけでもないでしょうから。
「いや、レースには影響がでるよ。第1スティントでは燃料搭載量を変えられないから影響はない。でも、他のチームがどんな戦略でいつピットストップを行ったかがわかれば、それに合わせて自分の戦略を変えることができる。だから機密保持はやはり必要だと思うね。ただし、そのいっぽうで観客や視聴者や読者に対してレース展開を説明するのが難しくなっているのは私にもわかる。それに、場合によってはわれわれドライバーにとっても同じだ。われわれ自身、情報共有が許されていないこともあるから、プレスの人たちの質問にまともに答えることができないんだ。だからドライバー自身も、ときには間違った予想や推測でなんとかするしかないこともある」

●3週間の夏期休暇の間は、どこかに出かけるのですか?
「はっきりと決めていない。自宅にいるだけかもしれない。しばらく旅行しないというのも、私にとってはいい変化になるはずだからね!」