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Rd.14 Grand Prix of Turkey Keizo Takahashi report
grand prix
高橋敬三リポート:トルコGP
2005年8月23日(火)
みなさん、こんにちは高橋敬三です。応援ありがとうございました。トルコGPの報告です。

●トップチームとの差を縮めたい
今シーズンは空力パーツを毎戦アップデートしていますが、今回もアップデートを行っています。変更点はフロアとディフューザーです。フロアは製造にはかなり時間が必要です。じっくりと開発してきた結果を反映させたものです。

エンジンの変更はありません。ラルフがフレッシュ、ヤルノが2戦目になります。トルコGPに臨むにあたっては暑さを覚悟していたのですが、それほどでもありませんでした。また、実際にコースを歩いてみて分かったのですが、コース幅が非常に広いですね。アップダウンが結構あるので、エンジンやブレーキに対する負荷が思ったよりきつそうだなと感じました。

チームのポイント争いはもちろん重要ですが、来年に向けてクルマをもっと速くしていかなければならないと思っています。基本的にはマクラーレンとの差は空力の差だと思っていますし、空力の開発という面では、よいものを今年投入できれば来年にもつながります。空力の改良は今シーズン最後まで続けていき、なんとか鈴鹿くらいまでには差を縮めたいと思います。勝てるチャンスがあれば、もちろん勝ちたいですね。


●金曜日:新しいサーキットならではのプログラムをこなす

ドライバーも自分の目でコースの状況を確かめる。トゥルーリはまずはスクーターでコースのチェック  

いつもなら金曜日はタイヤの評価を中心に進めるのですが、今回は新しいサーキットということで、普段とは違う確認事項が二つありました。ドライバーがコースを習熟することがひとつ。もうひとつは、事前のシミュレーションデータと実際に走行して得たデータとの確認を取ることです。そのためにはいろんなデータを取る必要がありますので、1日を通じてかなりの量の走り込みを予定していました。それがトラブルなくすべて終了できたので、良かったと思います。

午前中はコースの習熟と基礎データの収集を中心に行いました。路面が非常に滑りやすかったこともあり、とにかくコースを飛び出さないように注意しながら、ドライバーにコースを完熟してもらうことにしました。午後になると路面にもかなりラバーが乗ってきて、走りやすい状況になりました。リカルドはロングランとパフォーマンスランを行いました。

データは十分に取れました。空力やサスペンションの前後のバランス、電子制御、エンジンのマッピングなどについて、いろいろな基礎データが取れましたが、それらをセッション中に確認していたので、いつになく忙しいセッションになりました。事前のシミュレーションとそれほど大きくずれていなかったので、土曜日に向けてはファインチューニングの範囲内で済むだろうという感じを持っています。

一番シミュレーションと違っていたのは、路面のグリップが予想より早く回復したことです。そのおかげで予想よりラップタイムが向上したのだろうと思います。また、前日にコースを歩いて感じたことがデータにも表れており、ブレーキの負担はかなり厳しいことが分かりました。


●土曜日:迷いの道に入り込むが活路を見いだす

  今回TF105はディフューザーを変更。開発の手を緩めることはない

午前中は2台とも混乱してしまいました。金曜日にリカルドが好調だったので、それをベースにセットアップを決めて走り出したのですが、路面がまだほこりっぽく、グリップが足りないということでした。空力や足回りなどを調整したのですが、迷いの道に入り込んでしまい、どんどん悪い方向に行ってしまいました。ラルフが8番手、ヤルノが12番手でプラクティスを終えましたが、セットアップが決まっておらず、ニュータイヤを履いてもタイムが伸びなかったからです。

迷いに迷って午前中を終えたわけですが、午後の予選に向けてはセットアップを最初の状態に戻して臨みました。結果的にはこれがうまくいったということです。ヤルノは17番手の出走順で、路面状態はいいだろうと予測していたのですが、午後になって風向きが変わったようで、その点を考慮し、ターン12のブレーキングを安全に行ったようです。そこでちょっとタイムロスした以外はミスなく、完璧なアタックでした。タイムとしてはもう少し向上したかもしれませんが、ルノーまでは届かなかったと思います。結果としてはクリーンサイドからのスタートになりますので、納得の5位だったと思います。

一方ラルフの方は、ターン9のブレーキングでちょっと攻めすぎてしまい、そのぶん、コースを少しはみ出してしまい、その結果1秒くらいロスしました。前半はヤルノと同じようなペースで走っていましたので、順当に行けば5番手、6番手が獲れたかもしれませんが、他車もあちこちでコースオフするような状況でしたので、やむを得なかったと思います。頑張って、そのような結果になったのですから。ラルフにしてもクリーンサイドからのスタートとなりました。2台がトップ10に入れたので、悪くない予選だったと思います。


●日曜日:ドライバーの頑張りでポイント獲得を果たす

予選5番手のトゥルーリは、6位でフィニッシュ。今季8度目の入賞を果たした  

2台ポイント獲得を最低限の目標にしていましたので、期待どおりにはなりませんでしたが、それでもヤルノが6位でフィニッシュして3ポイントを獲ってくれました。

ラルフは9番手からのスタートとなりましたが、1コーナーの特性を考えるとスタートは注意しないといけないと思っていました。しかし残念ながらトラブルに巻き込まれる形で 押し出されてしまいました。その後、クルマのフィーリングがちょっとおかしいというコメントがラルフから上がってきました。チームがデータを調べる間、ラルフは慎重に走っていたうえ、前に遅いクルマが走っていたこともあり、ペースを上げることができませんでした。ペースが上がらないとタイヤの空気圧も適正値まで上がらず、十分なグリップが得られないという悪循環にはまってしまいました。データをチェックした結果、異常がないことがわかり、その点をラルフに伝えると、徐々にペースが上がりました。次のレースを考えて少しでも上位でフィニッシュしようと、最後までしっかり頑張ってくれたと思います。1コーナーでの出来事はアンラッキーとしか言いようがありません。

5番手からスタートしたヤルノは順位を保ったまま1コーナーをクリアしました。第1スティントは我々の思ったとおりで、上位と遜色のないペースで走ることができました。路面の状態も思ったより早く良くなってどんどんペースが上がったので、これは行けるかなと思っていたのですが、第2スティントが予想よりも遅く、この点が今回の反省点だと思っています。

レース後にドライバーと話をしましたが、車両のバランスに問題はなかったものの、ブレーキのフィーリングが悪くなったということでした。コーナーで飛び出さないよう早めにブレーキングをすることになったのですが、その影響が最も強く出たのが第1セクターです。他車と比較するとこの区間でのタイムロスが大きく出ていました。このロスのせいで争っていたフィジケラやバトンとの差を広げられず、その後のピットストップで順位を逆転されていましました。そこが悔やまれるところです。

第2スティントの搭載燃料が重かったのは事実で、そのせいもあるかと思いますが、ブレーキのフィーリングが甘くなったことについては、エンジニア側で対策する必要があります。燃料が軽くなった第3スティントでは問題なく、ペースも上がったのですが、残りの周回数と前後の差を考え、ペースを緩めました。ラルフと同様、ヤルノも頑張ってくれたと思います。

●次回モンツアまでにテストを敢行
水曜日から金曜日まで、モンツアで3日間、3台のクルマを4人のドライバーで走ります。うち1台は来年用のV8エンジンを搭載しています。タイヤ、空力、シャシーとテーマは盛りだくさんに用意しています。残りのレースは5戦となりましたが、最後まで改良を続けます。

公式サイトへのアクセスありがとうございました。今後もパナソニック・トヨタ・レーシングへの応援よろしくお願いします。

高橋敬三プロフィール
初開催のイスタンブール・パークに挑む高橋敬三