グランプリ > 2005グランプリ > イタリアGP > 高橋敬三リポート
Rd.15 Grand Prix of Italy Keizo Takahashi report
grand prix
高橋敬三リポート:イタリアGP
2005年9月6日(火)

みなさん、こんにちは高橋敬三です。応援ありがとうございました。イタリアGPの報告です。

●モンツァ合同テスト:発覚した最高速不足
イタリアGPを控え、先週行われたモンツァの合同テストでは、新しいTF105のBスペックをテストしました。これは、今年後半への進化モデルというよりは、来年以降に向けての実験車という意味合いが強いクルマです。それでもテストの結果次第ではイタリアGPから投入する事も視野に入れておりましたが、残念ながら油圧系の初期トラブルで、3日間で12周しか走れず、今回のグランプリに持ち込むことは断念しました。但し今後も合同テストなどでどんどん走らせていくつもりです。V8エンジンもテストを続けておりますし、来年への準備も怠りなく行っています。とはいえ、今年もまだイタリアを入れて5戦ありますし、後半に向けてさらに開発していくつもりです。

モンツァ合同テストでは、TF105の弱点が出てしまいました。今年のクルマはダウンフォースはあるのですが、その分ドラッグが多く、モンツァのような高速コースでは最高速が伸びません。昨年までは得意だったモンツァですが、今年は苦戦しそうなテスト結果が出ておりました。そこで急遽、今週のレースに向けて風洞テストを行ない、さらなるドラッグの低減を図ってきました。元々、フロント、リアのウイングはモンツァ専用の小さな物でしたが、さらに車両全体での効率を向上させるため細部まで見直しをしました。エンジンはヤルノがフレッシュですが、仕様はトルコGPで使ったものと同じものです。

タイヤは先週のテストでは、オプション、プライムとも一長一短でちょっと悩みそうな感じでしたが、先週に比べて気温が上がりそうなので、その辺でどう変わるかが鍵でしょう。ここ、モンツァのコースは開催19戦の中でも非常に特殊な高速サーキットです。平均速度は時速260km、最高速度は360km/hという非常に速いコースです。クルマ的にもブレーキ、エンジン、タイヤにも厳しいコースですし、ピットでのロスタイムも一番大きいサーキットですので、戦略的にも難しいコースです。


●金曜日:対策パーツが功を奏して、最高速は遜色なし

今回モンツァ用にドラッグを少なくするため、小さめのウイングを用意。また、ロールフープウイングは装着していない。  

午前中は先週のセッティングのままで走り始めました。最初のプラクティス1では路面がまだ汚れていたためレースカーは走らせず、ゾンタが走って主にタイヤ評価をしました。午後は最初オイルが出ていましたが、徐々に路面が良くなってきたので、3台でタイヤの評価をいろいろと違った形で試してみました。空気圧を変えてみたり、新品の状態と中古での評価をしてみたり。クルマのバランスも良く、非常に有意義な一日だったと思います。ブリスターの問題もなく、先週のテストよりは状況が良いようです。先週に比べ、気温も3度上がっていますし、その辺りの理由もあるかもしれません。対策してきた空力パーツの効果も出ていて、最高速も向上しましたが、マクラーレンとルノーの最高速は一歩先に行っている、そんな状況です。

セッティング的にはダウンフォースが少ないため、どうしてもブレーキングでの挙動が不安定になるのですが、その辺はメカニカルの部分で対策してきました。ドライバーからはシケインの縁石に乗った後の挙動を指摘されましたが、それは土曜日の課題ですね。今日の結果はあまり参考にはならないのですが、見た感じでは非常に接近戦になりそうな気配です。


●土曜日:ヤルノが完璧な予選を見せる

  トゥルーリは完璧に近いアタックで、予選6番手(グリッドは5番)を獲得。レースでもマクラーレン、ルノーに続く5位をゲット。

予選の結果、ヤルノ6番手、ラルフ10番手(ライコネンのエンジン交換による10グリッド降格のため、スターティングポジションはヤルノ5番、ラルフ9番)というものは、我々にとっては満足できる内容だと思います。

今日は午前中から、ラルフの方はセッティングに少々悩んでいました。逆にヤルノは非常に順調でした。最初のセッションは気温も低く、全体的にグリップがありませんでした。ラルフの方は、昨日からセッティングを変えたのですが、プラクティス3ではスリッピーであまり良くなかったので、プラクティス4までにさらに変更を施しました。それで大分良くなりましたが、まだ満足できるレベルには達しませんでした。そのため、予選に向けてさらにセットアップを変えアタックしましたが、十分に攻め切れなかった部分があると思います。データを見ても多少マージンを取った走りでしたし、アンダー気味だったようです。一方、ヤルノは、プラクティス4で予選シミュレーションもきちんとできたので、完璧な予選アタックができました。

タイヤも戦略も2台とも同じです。他のクルマは、見た感じそれほどわれわれと戦略は変わらないかなという気がしました。特に搭載燃料の印象としましては、フェラーリは軽いようです。BARはちょっと軽いかなという感じです。マクラーレンは結構積んでいるようです。スタートポジションは5番と9番。路面がきれいな側なので、有利だと思います。目標の2台ポイント獲得はできそうです。


●日曜日:2台そろっての入賞で、ポイント争いもコンストラクターズ3位に肉薄

ラルフもトゥルーリに続く6位入賞。リアウイングはドラッグをおさえるため、Panasonicの文字が読めないくらい寝ている。  

ひと言でいうと納得のいくレースでした。マクラーレンには追いつけませんでしたが、争っているフェラーリ、BARより上にいけたし、クルマのポテンシャルも100%引き出せ、戦略的にもうまくいったと思います。

レース序盤、燃料が重い時はちょっと厳しかったようです。ヤルノは、スタートは良かったのですが、後ろから来たBARやフェラーリに抜かれてしまいました。BARもフェラーリも燃料が我々より軽いため、ブレーキングで有利でしたから、あのオーバーテイクは仕方がないと思います。

1回目のピットアウト後は、我々の戦略が功を奏し順位を上げていけました。最後の3スティント目は、燃料も軽くなり、非常に良い走りを見せられたと思います。昨日の予選では、燃料を積んでのアタックでしたが、ドライバーの頑張りもあって良いポジションを得られました。レースでは、序盤、燃料が重くてクルマがスライドしてしまうのにドライバーは苦労したようですが、よく我慢して走ってくれたと思います。タイヤも終始安定していました。2回目のピットインで空気圧を合わせて、ヤルノの方はウイングをちょっと寝かせました。優勝や、表彰台には届きませんでしたが、現時点でのベストの戦いができたと思います。順位もマクラーレン、ルノーに続く、5,6位と狙ったポジションでした。

コンストラクターズ・ポイントは3位フェラーリとの差を8点差まで詰めることができました。残り4戦ありますから十分射程距離圏内です。すでに来年の開発も進めていますが、同時に今年のクルマの開発もできる限り続けていきます。

公式サイトへのアクセスありがとうございました。今後もパナソニック・トヨタ・レーシングへの応援よろしくお願いいたします。

高橋敬三プロフィール
超高速コースでのレースに向けて、高橋敬三の表情も一段と引き締まる。