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Rd.16 Grand Prix of Belgium report
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タイヤ選択が裏目となるもラルフが7位を確保
スパ・フランコルシャンで開催されたベルギーGPでは、パナソニック・トヨタ・レーシングのラルフ・シューマッハーが果敢な走りで7位を獲得した。トヨタの2台のTF105は共にレースで速さを発揮し、レースの前半と中盤ではそれぞれが先頭を行くマクラーレンを脅かす勢いを見せた。しかしタイヤ選択のタイミングが裏目に出たため、いずれも後退を余儀なくされた。
2005年9月11日(日)

予選を終えて3番グリッドを獲得したヤルノ・トゥルーリは、素晴らしいスタートを決めた。全車がインターミディエイト・タイヤを装着する前半は、雨水の残る路面コンディションの中で先頭を行くマクラーレンンの2台を視界に捉えながら見事なドライビングを披露。

いっぽうのラルフ・シューマッハーは、ジャンカルロ・フィジケラのアクシデントが原因でセーフティカーが入る直前に1回目のピットインを敢行。このタイミングが功を奏し、2位にまで浮上した。

「そろそろ自分にも運が向いてきていいはずだとずっと思っていたけど、最初のピットストップはうまくいったね!」と微笑むラルフ。

チームは日曜日の天候を事前に予想し、TF105をハイ・ダウンフォース仕様にしていた。このお陰でラルフのクルマはトップレベルの速さを発揮することができた。

しかし、路面が乾き始めると、2回目のピットストップに向けて、そのままインターミディエイト・タイヤで走行を続けるのか、あるいはドライ・タイヤに変更すべきなのか、難しい決断を迫られることになる。また運悪く、ラルフは2台のマクラーレンよりも先にピットストップしなければならなかった。結局ラルフはドライ・タイヤを選択したが、路面はまだ濡れており、ピットアウトした周にスピンを喫してしまう。

「タイヤの選択はチーム全体としてみんなで決めた」と話すラルフ。「だが残念なことにその判断は間違っていた。スパでは乾いた走行ラインが短時間ではっきりと表れてくるのが普通なのに、今日はそうならなかった。これには驚いたね。ピットから出てすぐに自分に不利な状況になったことはわかった。だからそのまままたピットに戻ってタイヤをインターミディエイトに交換しなければならなかった」

それから15周後にラルフはもう一度ピットストップを行う。この時点ではドライ・タイヤのほうが速く走れることは明らかだった。ラルフはこの日のファステストラップを記録したが、そのタイムは後続をほぼ1秒も引き離していた。だが最後はザウバー・ペトロナスのジャック・ヴィルヌーヴにわずかに及ばず6位を逃している。

いっぽうのヤルノは、セーフティカーがコースに入った際、全車がピットインする中でドライ・タイヤを選択。しかしその1周後に再びピットインしタイヤをもう一度インターミディエイトに戻している。レースの終盤には、前を行く他車がターン7で予測できないほど早めにブレーキングしたため、それを避けようとしたヤルノはコースアウトしタイヤバリアに激突。44周で争われるレースを35周目で終えることになってしまった。

「今日はあまり運がなかった」と話すヤルノ。「序盤はかなりいけそうだと感じていたし、マクラーレンンの2台とのギャップも無理なく一定に保つことができた。今日は2台ともタイヤ選択で苦しんでしまったが、こういったことはレースにはつきものだし、受け入れるしかない。(悪い思い出からは)早く抜け出して前を見ないとね」

レースのほうは、マクラーレンン・メルセデスのキミ・ライコネンが今季6勝目を達成。しかし、残り数周の時点でファン・パブロ・モントーヤがリタイヤし、マクラーレンンは1-2フィニッシュを逃している。この結果、タイトル争いのトップを走るフェルナンド・アロンソは2位となり、2週間後のブラジルGPで3位以上の成績をあげれば史上最年少でワールド・チャンピオンに輝くことになる。ラッキーストライクBARホンダのジェンソン・バトンが3位、4位がBMWウィリアムズのマーク・ウェバー、5位がスクーデリア・フェラーリのルーベンス・バリチェロとなった。6位のヴィルヌーヴと7位のラルフの後ろの8位にはジョーダン・グランプリのティエゴ・モンテイロが入賞している。

チーフ・レースエンジニアのディーター・ガスは次のように話している。「われわれは相当高いレベルの競争力を備えていたが、かなり期待はずれの結果になってしまった。こうした状況を後になってからいろいろと言うのは簡単だが、レースではまさにその瞬間にぎりぎりの決断をしなければならない。もしもラルフが言うように、いつものスパのように、乾いた走行ラインがもう少し早く表れていたら、われわれはかなり上位が狙えたはずだし、あるいは初優勝の可能性すらあったと思う。だがそうはならなかった。今回のことは全員にとっていい教訓になったと思うし、ひとつの経験として積み重ねていかなければならないだろう。不運な結果ではあったがパフォーマンスのレベルはとても満足のいくレースだった。バリチェロが5位になったため、フェラーリとのコンストラクターズ選手権の差は10ポイントに広がったが、まだ3戦残されている。われわれはあきらめずに彼らに追いつけるようがんばるつもりだ」