●スパでは2位を走行し、ファステストラップも記録したわけですよね。あるいは優勝も可能だったのではないでしょうか?
「状況がわれわれのほうに都合よく転がってくれれば、それも可能だっただろう。レースではわれわれのクルマがかなり速かった。で、2度目のピットストップでドライタイヤを選択したわけだ。あれはぎりぎりの選択だったけど、もしもあの戦略が成功していれば、マクラーレンの2台に対して決定的なアドバンテージを持つことができたはずだ。でも実際にはこちらがタイヤを元のインターミディエイト・タイヤに戻さなければならなかった。残り4周の時点でもう一度ドライタイヤに変えたから、合計で4回もピットストップを行ったことになる。それでも7位でフィニッシュしてポイントを獲れたわけだから、われわれがどれほど速かったのかがわかると思う」
●スパは短時間でコースが乾くこともありますが、今回はそうなりませんでしたね。
「そうだね。これも運かな。過去のスパでは、かなり濡れた路面でレースが始まったのにわずか2~3周で走行ラインが乾いたこともあった。基本的に、ある程度太陽が顔を出しているか大気が暖まっているときはそうなるんだと思うけど、今回の場合(陽射しもなく)大気中は湿気でいっぱいだったからね。早めにドライタイヤを履いて出るのは、いずれにせよちょっとギャンブルになってしまうものだ。でも今回のわれわれはかなり上位を走っていたから、積極的に攻めの戦略を選択したんだ」
●金曜日のフリー走行は雨のためにほとんど走れませんでしたが、その点でいつもよりキツかったですか?
「そういう状況になればやはり難しくなるよね。タイヤ選択の締切が土曜日の昼まで延長されたけど、でも午前中の走りではどちらのタイヤを選ぶべきか確信が持てなかったし、とにかく大変だった。今シーズン初めて予選直前にコンパウンドを変更したけど、自信はそれほどなかった。でも結果的にはかなりいい具合に落ち着いてくれた」
●予選の走りでは第1セクターと第3セクターが非常に速かったですが、第2セクターでは何か問題を抱えていたのでしょうか?
「ターン8ですこしリアのグリップがなくなって、それからは第2セクター全体を通じてアンダーステアに悩まされた。だから対処のしようがなかったんだ」
●予選がドライでレースがウェットになる場合でも、セットアップの変更はわずかしかできませんよね。この場合はその中間のセットアップにするわけですか?
「レースがどういう状況になるのかを考慮するわけだけど、どうしてもある程度の推量を基に作業を進めることになる。だから……、そうだね、レースでは完全なドライ用セットアップではなかった」
●雨が予想されるときはウィングをもう少し立てた状態で走るわけですよね?
「それはチーム毎に空力効率をどう考えるかだ。われわれの場合は、確かにウィングをもう少し立てたけどね」
●雨のスパで特に気を付けなければならない個所はありますか?
「オールージュやブランシモンなどの高速セクションではコントロールを失わないように気をつけなければならない。ただし最大の問題は水がたまっている場所だ。そういう場所ではアクアプレーン現象が起こってかなり危険になる」
●雨のスパでは視界の問題が大きな支障になるのでは?
「そうとも言えるね。特にオールージュの後に続くストレートからシケインに入る個所ではそうだ。あそこは以前のホッケンハイムに似ていて、木々の間にモヤが立ちこめる。そのせいで視界がかなり悪くなるんだ。ときには自分の両手すらはっきり見えなくなることがあるし、そうなるとかなり難しい状況になるね。自分の判断よりも運頼みになるような状況は好ましくないわけだから……」
●その場合は、運を天に任せてアクセルを踏んでいくしかないと?
「(レースが)金曜日の2回目のフリー走行のような状態になったらそういうこともある得る。あのときは、アントニオ・リウッツィがアクアプレーン現象に見舞われたし、アロンソもゆっくりインスタレーション・ラップをこなしただけで、あとは誰もコースインしなかった。みんなでチャーリー・ホワイティング(FIAの安全管理責任者)に話をしたし、天候が本当に最悪になった場合には躊躇せずに早めにセーフティカーをコースインさせるよう彼も了承してくれた。実際のレースでは、コース表面は最後まで濡れたままだったけど、結局大雨にはならず、コース状況に関しては何も問題なかった」
●スパに先立って、ミシュランの最新型のレインタイヤを試す機会はあったのでしょうか?
「それが実はほとんどなかったんだ。メルボルンでの予選を除けば、ほぼ全員にとって今回が今年初めてのウェットレースになったしね。幸いにもヘビー・ウェットが必要なほどではなかったけど、それでもミシュランのインターミディエイト・タイヤはうまく機能していたと思うし、ミシュランの担当者たちも満足していたと思う」
●個人的にスパは好きですか?
「スパはみんなにとってとてもいいコースだと思う。あそこはいい高速コースだよね。どんなドライバーにもそれぞれの好みがあるわけだけど、自分にとってはそれが鈴鹿なんだ。でもスパはもちろんそれにかなり近いレベルにある。とはいえ、どのコースであれ私にとっては問題は何もない」
●日本GPでの走りを楽しみにしていますか?
「もちろん。というのも、われわれは高速コースで調子がいいようだからね。間近に迫った鈴鹿でトヨタのために素晴らしいパフォーマンスを発揮して、できれば表彰台を獲得できたらと思う」
●今年1年をどう評価していますか?
「ここまではかなりいい調子できている。われわれが予想していたよりもかなりいいしね。スパでもクルマの戦闘力は高かったし、かなりの速さを見せることができた」
●パナソニック・トヨタ・レーシングでの仕事について、どんな印象を持っていますか?
「非常に良好だ。仕事をするのがとても楽しいチームだし、過去に体験したよりももっと気持ちよく仕事ができる。トヨタの場合、ドライバーとの仕事の仕方がウィリアムズとは違うんだ。どちらのチームもそれぞれのやり方でうまくやっているわけだけど、でも個人的にはトヨタのやり方のほうが好きだね」
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