みなさん、こんにちは高橋敬三です。応援ありがとうございました。ベルギーGPの報告です。
●TMGに戻らず、モンツァからスパへ直行
ベルギーGPが行われるスパ・フランコルシャンは、我々のチーム本拠地のあるケルンから車で僅か1時間半のところにあるサーキットです。ニュルブルクリンクの次に近いグランプリです。前戦のモンツァから、クルマでそのままスパに直行しました。ファクトリーに寄っても1時間も変わらないのですが、クルマを降ろす手間を考えたら、直接スパに行って作業をした方が効率的だからです。スパ用のエアロパーツなどはファクトリーから直接サーキットに運んで、サーキットのピットで作業を行いました。
今回は、新設計の投入パーツが実はありません。モンツァの空力を外して、空力パーツでは、ダウンフォースレベルがミディアム程度の空力パーツに戻しただけです。エンジンもラルフがフレッシュになっただけで、バージョンアップはされていません。
このスパはF1が行われる19のサーキットの中でも一番全長の長いコースです。山間に作られたコースだけに高低差もあり、非常に難しいコースです。低速のシケイン、中速、高速とあらゆるタイプのコーナーがあり、一方ロングストレートもありますので、クルマの総合的な性能が求められます。ブレーキはそれほど厳しくありませんが、エンジンとタイヤにはとても厳しいコースでもあります。
エンジニア泣かせの部分は鈴鹿に似ていますね。つまり、ここが良ければ、鈴鹿も良い。来たる日本GPを占うには絶好の場所でもありますね。鈴鹿と違うのは天気です。山の中のコースだけに天気が変わりやすく、必ず雨が降るレースです。スパウェザーという言葉は、F1ファンなら聞いたことがあると思います。
●金曜日:スパウェザーで走れず
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雨が少し降る中、ヤルノは会心のアタックで予選4番手のタイム。マクラーレン、ルノーの2強の一角を崩した。 |
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金曜日の午前中は路面がまだちょっとぬれていましたが午後から雨が降るという予報だったので、レギュラーの2人にも少し早めに走ってもらいました。また、ゾンタは午前中から積極的に走らせました。最初はインターミディエイトタイヤで走って、路面が乾いたところで、早めにドライタイヤに履き替えました。オプションとプライムの2種類のタイヤを試せましたが、タイヤの性能差というよりはどちらかといえば路面変化が大きくて、実際のところどちらが良かったのかよくわかりませんでした。午後は大雨となり、どのチームも全く走らなかったので、今回の金曜日はいつもと違い、あまりデータが取れませんでした。天気予報では土曜日が雨の確率が70%、日曜日が80%なので、ドライタイヤの選択と同時に雨にも備えなければなりません。結局、今日の2回目のセッションが走れなかったため、タイヤ選択は土曜日の午前中いっぱいに延ばされましたが、日曜日の天気と相談して決めないとならないでしょう。
●土曜日:予報が外れてドライの予選になるも、セッティングは当たって好位置獲得!
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路面状況がよくなっていく中、ラルフはドライタイヤで勝負に出たが、作戦は惜しくも成功せず。 |
結果からいえば、非常に満足いく予選でした。昨日の天気予報は当たりませんでしたが、今日の朝には予選はドライで、降るとしても予選の終わりくらいだろう、ということだったので、それほど慌てることもありませんでした。
午前中は路面が濡れておりましたが、プラクティス4からドライとなったので、ここで2台で一気にドライタイヤのデータ取りを行いました。ヤルノはオプションを、ラルフはオプションとプライムの両方を試しました。どちらも最初はアンダー傾向でしたが、プラクティス4の終了間近にはうまくセットアップでき、予選のシミュレーションも行えました。
予選の始まる頃に雲行きが怪しくなってきたので、5分おきにレーダーを見て、雲の動きを確認していました。ラルフの番が来る頃には雲が来だしたので、早めにコースインさせました。何とか雨には降られなかったのですが、多少アンダー気味だったようで、セクター2でタイムロスをしてしまったようです。その後に出たヤルノはクルマのバランスも良く、ミスなく、完璧なアタックができました。心配だった雨も降りませんでした。
明日は天気予報によると、雨になりそうだったので、雨を想定したセットアップにしました。あまり雨は好きではありませんが、セッティング的には晴れてもらいたくはないですね。ただ、明日どんな状況でも対応できるような準備はしています。ドライの場合でも、多少クルマ的には厳しいですが、走れるように準備してあります。予選順位は4位と6位ですが、3位のルノーのフィジケラが金曜日にエンジン交換しているので、スタート順位は3番と5番手と非常に好位置ですので、更に上を目指す為に、日曜日は頑張りたいと思ってます。
●日曜日:勝つために出た勝負は惜しくも当たらず
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ラルフは最後にドライタイヤに交換して、ファステストラップをマーク。 |
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決勝レース前の天気予報では、レース中の降雨はないというものでした。ただ、それまでに路面は完全なウェットになっていたので、問題はいつ乾くかだけでした。我々のクルマは完全な雨セッティングだったので、路面が濡れているうちに前に出たいというのが正直な気持ちでした。その気持ちを察してか、ヤルノはスタートから前の2台のマクラーレンを果敢に攻め立ててくれていました。さらにラルフもタイヤが完全に温まるまでの間に、いくつか順位を落としてしまっていましたが、2、3周するとペースも戻り、順位も回復してくれていました。
10周目にラルフは早めのピットインを行いました。実は、今回は最初軽めでいって、ピットストップが2回でも3回でも対応できる戦略をとっていたのです。ラルフが入るとラッキーなことにフィジケラのクラッシュですぐにセーフティーカーが出ました。この時にビルヌーブ以外のクルマがピットインしたおかげで、ラルフは難なく3番手まで上がることができました。
この後、ラルフはマクラーレンのモントーヤを攻め立てるのですが、実はこの時最初の小さなミスをしてしまいました。セーフティーカー走行中にヤルノもピットインしたのですが、この時にドライタイヤを履かせました。実は、ピットに入るまでの瞬間にドライバーと無線で協議しての結果だったのです。ただ、ヤルノはまだドライは早いと最初言ってはいたのですが、我々の頭には後半晴れるというのがあったし、フェラーリやBAR、ウイリアムズもドライを選択していました。ただ、ミスはその判断よりも、コースインしてやはり滑ると言ってきたヤルノの言葉に対して対応が遅れたことです。他のチームはすぐに次の周に再度ピットインさせて、インターミディエイトタイヤに換えていたのです。我々は他車よりもう1周余分に走らせてしまいました。これでヤルノは大きく遅れてしまいました。
ラルフはこの時点で、マクラーレンのすぐ後ろの2位を走っていました。ペースもマクラーレンより速く、私達もこれはいけるかもと思っていました。そこで、2回目のピットインで、レース終了までの燃料を給油し、ドライタイヤを履かせて出したのです。レインからドライへの切り替えの目安のタイムは1分55、56秒。その時ラルフは1分55秒、56秒で走っていたので、この時点では間違いないと思ったのです。しかし、路面はまだ乾いておらず、やはりこの時もすぐにピットインして、インターミディエイトにすぐに換えることとなりました。結局、これでラルフは順位を落としてしまいました。しかし、この時の判断は間違ってはいなかったと思っています。勝つためのギャンブルだったのですから。結果は駄目でしたが、あのまま待っていて、乾いてきたらセッティングの差で、今度は離されはじめるのが分かっていました。上位を走るためには、自分たちが主導権を握らなければなりませんが、その時の判断を間違えたということなのです。
いずれにしろ、まだ勝つにはチーム力がなかったということだったのでしょうが、途中まではいけるかもしれないと思えるようなレースができるようになっただけでも、大きな収穫があったと思います。
次戦はブラジルですが、その前にシルバーストンでのテストがあります。ここでは、Bスペックはもちろんのこと、鈴鹿に向けてのタイヤやエンジンなどを試すつもりです。コンストラクター3位の座もまだ射程圏内です。残り3戦も全力を尽くしたいと思いますので、今後も応援よろしくお願いします。
公式サイトへのアクセスありがとうございました。
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