●トヨタの母国GPとなる鈴鹿でポールポジションを獲得しましたが、これには大いに満足できたのでは?
「トヨタの母国GPである鈴鹿でポールポジションを獲得できたのは最高の満足感があったね。ヘレス・テストの後、チームはTF105Bを鈴鹿に投入することを決めたが、新車にとっても素晴らしいスタートになった。これまでのクルマとは異なる部分も多いため、金曜日はいつもより多めに周回した。始まってすぐの段階から、自分たちはかなりよさそうだということを感じていた」
●改良型のクルマを日本に持ち込むのはリスクもあったのでは?
「イエスでもありノーでもある。われわれがコンストラクターズ選手権でフェラーリを抜いて3位になれる可能性はかなり低いことがわかっていたから、あれは理に適った決定だった。それにTF105Bは来年のクルマを開発する冬のテストの基礎になるわけだから、最後の2レースに走らせることには大きな意味がある。なによりも、レース・ディスタンスになれば今までよりも安定したパフォーマンスが得られることが証明されていたからね。唯一の問題は、当然のことながらTF105B用のスペアパーツが十分にそろっていなかったこと、それに輸送の面でも海外のレースということで不確定要素への対処で何か問題が出る可能性があったことだね。でも従来のTF105のバックアップもあったわけだから、やはり理に適っていたと思う」
●鈴鹿に対して特別な気持ちはありますか?
「そうだね。あそこは自分にとって得意のコースだ。ドライバーというものは、どんなコースに行ってもプロとしての仕事をしなければならないわけだから、特定の“お気に入り”のコースを作りたがらないものだ。でも鈴鹿はあれだけの高速サーキットで、かつチャレンジングなコースでもあるだけに、うまく走れたときはいつもにも増して特別な刺激を感じるんだ」
●何がそれほど特別なのですか?
「速くてテクニカルなコースだということもあるし、ドライバーが真剣に取り組めばそれに対する見返りが得られるサーキットでもある。S字セクションはターン2からターン7まで続くコーナーだが、あそこはF1全戦の中でも一番挑戦のしがいがあるすごいコーナーの連続なんだ。最初にちょっとしたミスでもしでかせば、最後までずっとその代償を払い続けることになる。それにあのセクションを抜けるにはかなりの時間がかかるしね」
●3回ストップという戦略は、どのくらいポールポジション獲得に貢献してくれたのでしょうか?
「もちろん燃料搭載量が軽かったのは助けになった。ただし詳細にデータを分析してみた結果、レース戦略としてもあれがかなりいいやり方だという結論が出ていたんだ。予選が濡れた路面もしくは雨になるのはわかっていたし、そういった路面コンディションでは燃料搭載量によるタイム差がいつもより大きくなる。また、レースペースがトップ集団にかなり近いこともわかっていたので、予選で1位か2位を得られる可能性に賭けてみることにした。3回ストップの戦略を成功させるためにもそれが必須だったしね。お陰でプレッシャーはあったけど、でも今回は攻撃的にいくことに決めたんだ。路面はとにかく滑りやすかったし、クルマのほうはオーバーステアがひどかった。やりすぎてしまうか、ちょうどいいところまで攻め込めるか、その境目はギリギリといったところだったけど、嬉しいことにうまくやれたわけだ」
●レース序盤のセーフティーカーはどのくらい悪影響があったのでしょう?
「あらゆる面で最悪だった。大損害だったよ。鈴鹿ではレース序盤にセーフティーカーが入ることが比較的多いことは認識していたが、今回はそうならないことを期待していた。もちろんあれほど長いセーフティーカー・ピリオドなんて願い下げだった。私の元チームメートの壊れたクルマを撤去し終わるまでの時間はとてつもなく長く感じた。結局7周目の終わりまでずっとセーフティーカーについていったんだからね!」
●あれだけのいいスタートを決めただけに、フラストレーションも大きかったのでは?
「その通りだね。1コーナーでジェンソン・バトンの前に出る自信はあったし、実際、最高のスタートを決めた。1周目で後続に2秒の差を付けることができたし、あそこまでの展開はかなり上々だった。戦略上、1回目のピットストップを終えたときに後方集団に沈まないためには、当然、燃料が軽いうちに可能な限りギャップを広げておくことが肝心だった。セーフティーカーが入ったことによって、2回ストップだったライバル勢はみんな私と同じスピードでクルージングできたし、そのせいでこちらの戦略のメリットは失われてしまった。セーフティーカーが長くコース上にとどまればとどまるほど、事態は悪化していった」
●その後、2回ストップに切り替えることは考えましたか?
「チームのほうでその可能性を検討したんだけど、時すでに遅しだった。予定通り自分のペースで走れていたときよりも後方に沈むのは目に見えていたし、それに、燃料が重い状態ではそこから追い上げるのも現実的ではなかった。われわれは3回ストップ戦略以外、身動きができなかった。でもすくなくとも最後までハードにプッシュしてなんとか1ポイントを獲得できたからね。とはいえ、臨んでいた結果はそんなものではなかった。表彰台が狙いだったんだ」
●中国で今シーズンを終えることになりますが、これについてはどう思いますか?
「長い1年だった。19レースというのはF1の歴史の中でも最長だった。でもある意味では予想よりもいいシーズンを送れたということで、うまく釣り合いはとれたと思う。トヨタがわずか4年目のシーズンにしてディフェンディング・チャンピオンであるフェラーリにここまで迫ることができたのは、ケルンと日本にいるスタッフみんなの素晴らしい努力の賜物だ。中国GPの後に短い休暇をとれるのはみんなにとってもいいことだ。でもその後はまた仕事に戻る。来年は今年よりももっと強いチームになれるよう、エンジン全開で仕事に取り組むよ。上海サーキットの設備に関して言えば、中国の人たちは素晴らしい仕事をしたと思うし、日本のみんなに見せたようないいレースを彼らのためにも見せたいと思う」
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