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Rd.6 Grand Prix of Canada
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カナダGP テクニカル・プレビュー パスカル・バセロン Q+A

●モナコGPでは木曜日にヤルノが4位でしたが、その後は予想外の展開となりました。何が起こったのでしょう?
「それについては明確に説明できる。2回目の予選セッションが決定的だった。ヤルノは1回目の走行でキミ・ライコネンがクラッシュした後の渋滞に巻き込まれてしまったが、あのアタックが問題なくいっていれば十分トップ10に入れたはずだ。だが彼がラスカスにさしかかったとき、ルイス・ハミルトンとヘイッキ・コバライネンがゆっくりと走行していた。その後ヤルノは重量測定の場所で2度も停止させられた。そんなことは普段なら起こらないんだけどね。モナコでそういった状況になると特にブレーキ温度に対して悪い結果をもたらすことになる」

●特にモナコでそれが大きな問題になるのはなぜですか?
「なぜならブレーキを冷却するための空気を得られるようなストレートが実質的に皆無だからだ。ヤルノが1回目に止まったとき、データからブレーキ温度は130~135度だとわかっていて問題はなかった。だが2度目に止まったとき、彼のキャリパーの温度は200度を超えていた。そしてヤルノはすぐに無線でブレーキに問題を抱えていると訴えてきた。“ブレーキペダルが深くなった”とね。彼の最後のアタックは、彼によれば、そのブレーキペダルのせいでミスだらけだったんだ。彼は速く走れるという感触をつかんでいただけに、大変なフラストレーションを感じていた。車速を計測する唯一の地点、第2セクターの2つのシケインの間のスピードトラップで彼は4番手だったんだからね」

●ラルフはモナコで厳しいレースを強いられました。何が問題だったのですか?
「セッションの一番最初の時点から、われわれはラルフに対してバンプやカーブを問題なく走れるクルマを提供することができなかった。それが彼の自信に影響してしまった。それに彼はグリップがかなり低いと感じていた」

●その原因はなにかひとつだけなのでしょうか?
「実際のところ、数多くのパラメーターがありチェックする要素はたくさんある。重量配分、キャンバー、サスペンションの硬さ、などに関しては、対応閾がかなり幅広いし、どこかに制約があるわけではない。今回の問題は全般的なグリップと自信が持てるかどうかに根ざしていたわけだが、何かひとつの要素にこれといった明確な制約があったわけではない」

●今回のモナコは“予選順位が低ければ決勝の順位も低い”という典型的なモナコのレースでしたが、ヤルノの状況を考慮すると、15位と16位という結果は実力を反映したものではない、と言えるでしょうか?
「そうだね。ヤルノはもっと上位で予選を通過できたと私は思う。モナコでグリッドのあの位置からスタートする場合、唯一できることと言えば第1スティントを長くするため、できる限り多くの燃料を搭載してあとは幸運を祈ることだけだ!」

●ラルフはTF107に関してセットアップの問題をずっと引きずっているように見受けられます。ここまでのテストで何かヒントは得られているのでしょうか?
「モナコでわれわれはいろいろと問題を抱えていた。バルセロナのフリー走行の後、ラルフは自信の面で一歩前進していたのだが、それとは別の要因があり、予選第1セッションで問題を抱えてしまった。スペインGPではコンペティティブな走りをすることができたが、1周目にいくつか順位を上げた直後に他車からぶつけられてしまった。前にクルマがいない状態のときの彼のペースはよかったので、われわれも一歩前進したことを確認できた。モナコについては原因を調査中だが、いずれにせよモナコのコースはあそこだけの独特なものだからね。いっぽうでバルセロナで進化できていれば、たいてい他のサーキットでもそれが反映されてくるものだ」

●モントリオールに向けてですが、あそこでもブレーキが課題になるのでしょうか?
「その通りだが、モナコの場合とは理由が異なる。モナコで苦しいのは実際のブレーキングではなく冷却がうまくできないことだ。ブレーキディスクは高温になるが、それほど摩耗はひどくならない。だがカナダでは高速走行から一気に急ブレーキしなければならないため、ブレーキそのものが問題となる。巨大なエネルギーを抱えることになるため、その分摩耗も激しくなるわけだ。またブレーキは高温になれば非常に短時間でだめになってしまう。だから安全なマージンの範囲内で使うほうが賢明と言えるだろう。素材の限界を超えてしまうと問題が起こりかねないからね。ディスクを摩耗させればさせるほど、温度もさらに上昇し、その結果悪循環に陥ってしまう。過去にはモントリオールとモンツァのために別のディスクサプライヤーの製品を使うチームもあった。だがブレーキディスクはドライバーのフィーリングに対してとても重要な要素だから、そういった状況にうまく対応するのはかなり困難になる。ブレーキペダルを踏み込む際の圧力係数は温度変化と共に変わるからね。ドライバーにはそれに慣れる時間が必要になる。いったんドライバーが特定のカーボンディスクの特性に慣れてしまうと、それをレースのたびに変えるのは難しいんだ。だからディスクを変更するならよほどまともな理由がなければだめだ。以前はある企業が他社よりも摩耗に関してすこしだけうまく対応できていたため、カナダのレースの際にディスクを変更せざるを得なかったチームがあったが、われわれに供給しているブレーキ会社、ヒトコは、要求されている仕事を完璧にこなせるだけの製品を持っているからね」

●カナダでは他にどういった要素が重要になるのでしょう?
「モントリオールでは、われわれの中~低ダウンフォース仕様の空力パッケージを初めて走らせることになる。これまでのところ、モナコを除くと、全レースがわれわれが言うところの“基本仕様の”空力パッケージだった。このためわれわれがまずやらなければならない仕事は、今回の空力パッケージから最大限の効果を引き出すことだ。また、シケインとカーブがたくさんあるのでこれについても検討しなければならない。その準備のためわれわれはポールリカールでテストをした。あそこではかなりいいシミュレーションができるからね。そして最後に、全般的にタイヤのグリップが低いという問題もある。コースは再舗装されているが、以前は本当に路面のグリップが低かったんだ」

●モントリオールでのレースは楽しいですか?
「私にとっては間違いなくモナコに次ぐベストなレースだね。雰囲気が素晴らしいし、ある意味ストリートコースと言ってもいいくらい市街地の真ん中に位置している。カナダの人たちはとてもよく応対してくれるし、いつだって歓迎してもらえるんだ」