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Rd.6 Grand Prix of Canada
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新居章年リポート
2007年6月11日(月)

いつもご声援ありがとうございます。モナコGPを終えたF1グランプリは、いったんヨーロッパを離れて北米大陸に舞台を移しました。それでは波乱の一戦となったカナダGPの報告をいたしましょう。

F1サーカスはヨーロッパを離れ、北米2連戦へ突入。その緒戦カナダでは金曜日に思わぬトラブルが発生。その対策に追われながらもラルフがポイントを獲得したが、悔いの残る戦いとなった。

●独特の路面コンディションを持つカナダ、攻略のカギはタイヤ
モナコGP後、カナダGPまでの間にはテストがなかったのですが、モナコGP直前に行ったポール・リカール合同テストの後半に、我々も他チーム同様にモントリオール用のテストを済ませていました。その結果を踏まえて、今回は通常のサーキットに比べてダウンフォースレベルを下げた空力パッケージを採用。タイヤはモナコGP同様、スーパーソフトとソフトタイヤの2種類です。モナコよりもモントリオールのほうが路面のグリップが低いので、スーパーソフトタイヤをどう使いこなすかがポイントでした。
昨年はレース中に路面が剥がれるというトラブルがありましたが、その部分は改修されており、最初にサーキットをチェックしたところ、今年は問題ないだろうという印象でした。

●ヤルノだけに発生した、不可解なアップライトのトラブル
カナダGP初日、午前中のフリー走行1回目を終えた時点ではラルフ(シューマッハー)が8番手、ヤルノ(トゥルーリ)も12番手と悪くない滑り出しを見せていただけに、午後のフリー走行2回目で発生したトラブルは残念でした。トラブルが発生したのは、いずれもヤルノのクルマで、場所は右フロントのアップライト。しかも、どちらも同じ第3シケインの進入となるターン8で起きました。

金曜日のフリー走行で、ヤルノのアップライトにトラブル発生。急きょファクトリーと連携して調査した結果、ターン8の縁石に乗り上げたときに発生した応力が原因となったようだ。
ただし、今回アップライトの仕様を新しくしたとか、変更したということはなく、今シーズンここまで使用してきたのと同じもので、耐久性・信頼性に関しては実績のあるものです。至急ドイツ・ケルンのファクトリーと連絡を取り合って調査を進めましたが、原因は部品単体の問題というよりは、モントリオールが持つ独特のサーキット形状と、そこのターン8におけるヤルノのドライビングなど様々な条件により発生した特異なケースではないかと考えられました。
実際ラルフには、何の問題もありませんでした。しかし、サスペンションとタイヤをつなぐアップライトのトラブルは安全に関わるため、我々はラルフの走行を中断したのです。そして土曜日以降に向け、どのような対策を施すのか対応を練り、万全を期すことにしました。

●逆境に負けず、ヤルノが3戦ぶりに予選トップ10入り
初日のヤルノに発生したアップライトのトラブルは、その後の調査でTF107のサスペンションと、ヤルノがターン8の縁石を乗り上げたときに発生した応力が、絡み合って引き起こしているのではないかという結論に達しました。というのも、ターン8を通過する際、ヤルノが縁石に乗り上げ、右前輪を大きくはみ出してドライブしていることが確認できたのです。そこには、枕木のような突起物があり、それに右フロントタイヤを衝突させたときに異常な衝撃がアップライトにかかったのではないかと推測されました。

十分にセットアップできないまま迎えた予選。トラブルが再発しないよう、縁石に気をつけながらのアタックとなったが、ヤルノは3レースぶりに予選トップ10へと進出する。
しかし、念のためにドライバーふたりには「ターン8では縁石をはみ出すほど乗り上げないようにドライビングしてほしい」というお願いをしました。さらに金曜日のプログラムをしっかりと消化することができなかったため、土曜日のフリー走行は予選に向けた準備に終始してしまいました。そのため、満足のいくセットアップができないまま予選を迎えることになってしまったのです。
そのような状況にもかかわらず、ヤルノが3戦ぶりに予選トップ10入りを果たしてくれたことには感謝しています。予選第1ピリオドで脱落したラルフについては、渋滞が影響したことも確かですが、やはり彼が満足できるセットアップを施せなかったことが最大の理由だと痛感しています。
トップ10からスタートする決勝では、ぜひポイントを狙いたい。ラルフは18番手からのスタートとなりましたが、カナダGPはセーフティカーが出動する機会も多く、何が起きるかわからないコース。最後まで粘り強く戦おうという気持ちで、レースに臨みました。

●課題を残しつつも、ラルフがバーレーンGP以来のポイント獲得
果たして、レースは4回もセーフティカーが出動するという荒れた展開になりました。その結果、予選18番手のラルフが8位でフィニッシュし、チームとして第3戦バーレーンGP以来のポイントを獲得するという最低限の目標をクリアしたことは素直に良かったと思っています。ただし、金曜日に発生したトラブルによって、満足のいく戦いができなかったことは反省しなければなりません。

ラルフは18番手から燃料を多めに積んでスタート。重いクルマで直線スピードが伸びず苦戦しながらも、波乱の多いレース展開にも助けられて8位、1ポイントを獲得した。
ヤルノはレース再開直後にクビサ(BMWザウバー)に追突されたときなのか、路面に散らばった彼のクルマの破片を踏んだときなのか原因は特定できませんが、右リアタイヤの内圧が下がったため、予定を変更してピットインさせました。その後、セーフティカーランが長引いているうちに、ラップタイムが安定しないことが予想された軟らかめのスーパーソフトタイヤを装着するため、29周目に2度目のピットストップを行いました。結局、59周目にクラッシュしてしまいましたが、金曜日からトラブルに見舞われたにもかかわらず、よく戦ってくれたと思います。ヤルノは決勝でも、ターン8では縁石に大きく乗り上げないよう気をつかいながらドライブしていました。
今回のトラブルを教訓にして、アメリカGPには対策を施した新しいアップライトを持ち込む予定です。北米ラウンド第2戦となる次戦アメリカGPでは、ぜひともパナソニック・トヨタ・レーシングの実力を発揮したいと思っていますので、ご声援よろしくお願いします。


ジル・ビルヌーブ・サーキットでの新居章年。大荒れのレースでグリップ不足に悩まれながらもラルフが1ポイント獲得。次週アメリカGPでは連続入賞を目指す。