新居章年リポート
2008年3月17日(月)
パナソニック・トヨタ・レーシングにとってF1参戦7年目となる2008年のF1が開幕しました。今年こそ、頂点を目指して頑張りますので、ご声援よろしくお願いします。それではさっそく、メルボルンで行われた開幕戦オーストラリアGPの模様を報告いたします。
オーストラリアに持ち込まれた車両は、TF108最初の登場からさらに空力関係を向上させている。初日はグレイニングとの格闘もあったが、解消へと向った。
●最後のウインターテストでパフォーマンスが大きく向上
早いもので我々のF1参戦も、今年で7年目を迎えます。アルバートパーク・サーキットのガレージで開幕前日に行ったチームの全体ミーティングでも、「これまで6年間で培ってきた経験を活かしていこう」という挨拶があり、チーム全員が決意を新たにしました。
そんな我々とともに今年一年間F1を戦うTF108は、2月下旬に行った最後の合同テストでヤルノ・トゥルーリがトップタイムをマークして、開発の方向性に間違いがないことを証明してくれました。新車発表会からは、リアウイングが新しくなっただけでなく、バージボードやディフューザーなど車体に装着されている大小さまざまな空力パーツが新しくなりました。開幕戦に向けてのTF108に対してドライバーの印象も良く、まずはトップ2チームの直後につけて、上位に何かあれば表彰台を狙っていきたいというのが今回の目標でした。
TF108のフロントウイングのTF107からの目立った違いのひとつは、上部の羽がフロントノーズでつながらず、ノーズ上部を通る形へと変更されたこと。
●金曜日のフリー走行で思わぬトラブル
オーストラリアGP週末のメルボルンの天候は3日間とも好天、気温が高くなることが予報されていました。ただし、もともと翌週のマレーシアGPを見据えた暑さ対策を施した仕様を持ち込んでいるので、クーリング対策には不安はありません。さらに昨年泣かされたタイヤのグレイニング(めくれ摩耗)も、これだけ路面温度が高くなってくれれば軽減されるはずなで、それほど心配していませんでした。
ところが、初日のフリー走行では思わぬところで足元をすくわれました。まず、午前中はティモ・グロックの後輪タイヤの軸受け部分にトラブルが発生しました。そのため、セッションはまだ30分以上残っていたのですが、午後のセッションに備えてアップライトを交換することにしました。
ところが午後のフリー走行ではふたりがそろって、ほぼ同じ時間にバッテリーにトラブルが発生して交換するという予定外の作業を強いられました。さらにセッション終盤にはヤルノが左リアタイヤをコースから脱輪、芝に乗せてしまってスピン。コントロールを失って、グラベルにつかまってセッションを終了しなければなりませんでした。そのときヤルノはソフトタイヤを装着して、ロングランを開始した直後だったので、今回使用するもう1種類のミディアムタイヤとの比較ができず、残念でした。
ただそんな状況の中でヤルノが7番手、ティモも10番手とまずまずの走りをしていたと思います。もちろん、ライバル勢がどのくらいの燃料を搭載して走行していたのかはわかりませんし、我々もセットアップがまだ完璧ではなかったので、データを見直して、予選へと臨みました。
好走を見せつつも、ペナルティふたつ合計で10グリッド降格となったティモ。レースでもいいところに着けたが、リタイアとなってしまった。
●土曜日も不運……。しかし速さでは納得の出来
シーズン最初の公式予選で2台揃ってトップ10に入り、最終ピリオドに駒を進めることができたというパフォーマンスは評価したいと思います。しかし、前日に続いて土曜日もトラブルを発生させてしまったことは、反省しなければなりません。
今年からレギュレーションが変更され、ギアボックスは4レース連続で使用しなければならなくなりました。そのため、今シーズンに向けて、TF108に搭載するギアボックスは耐久性を上げた仕様にしたのですが、そのレギュレーションが最初に適応されるチームが我々になるとは、想像していなかっただけにショックです。
さらにショックだったのは、予選前にギアボックスを交換して予選ポジションから5番手降格が決まっていたティモが、予選中に他車のアタックを妨害したとして、さらに5番手(合計10番手)降格しなければならなかったことです。第2ピリオドまでは非常にいいアタックを披露していただけに残念です。
ヤルノは午前中クラッチトラブルに見舞われて、満足に走行をできなかったにもかかわらす、予選本番で見事なアタックを行ってくれました。特に第2ピリオドはコンマ2秒に7人のドライバーがひしめき合う非常に厳しい戦いでしたが、9番手で通過したことは評価したいと思います。
ヤルノも不運な形でレースを終えてしまった。金曜日に続いてバッテリートラブルが発生。その他は、大きな問題がなかっただけに残念だった。
●荒れた展開に上位進出の兆しが見えたが、残念ながらものに出来ず
3度もセーフティカーが出動する波乱の展開となった開幕戦。こういうレースこそ、我々のようなチームが生き残って、確実にポイントを獲得しなければならないのですが、金曜日、土曜日に続いて、日曜日のレースでもトラブルを発生させてしまい残念です。
心配していたスタートはふたりとも無難にクリアしてくれました。直後の混乱もうまくかわして、ヤルノは序盤からポイント圏内を走行する力強いレースを展開。ところが電気系部品に問題が発生して、1回目のピットストップの際にリタイアを余儀なくされました。今週末、一度起きていた問題だっただけに、本当に恥ずかしいことです。
ティモは後方からのスタートとなるので、燃料を多めに積みソフトタイヤを履いてレース臨みました。にもかかわらず、ライバル勢のアクシデントにも助けられて、1周目から13番手を走行。その後、セーフティカーが出動するタイミングにも恵まれて、31周目からは10番手を走行するようになりました。ところが、 44周目にコーナーの進入でオーバーステア症状が出て、体勢を立て直そうとしてコースアウト。コースに復帰しようとしたところで、グラベルと芝の段差にはまってクラッシュ。前後のサスペンションが折れてしまい、リタイアとなりました。
とはいえ、トラブルが発生するまで、TF108はポイント圏内を走行。第2集団の中でしっかりと戦っていける手応えを感じながら、開幕戦を終えることができました。リタイア後メディカルセンターへ直行したティモは幸い体に影響を与えるようなダメージではなく、翌週の参戦も問題ありません。次戦マレーシアGPへのご声援をよろしくお願いします。
アルバートパーク・サーキットでの新居章年。TF108のロングランペースは悪くなかっただけに、一層悔しさが募る。今週末のマレーシアでは今シーズン初ポイント獲得を目指す。