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Rd.5 Grand Prix of Turkey
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新居章年リポート
2008年5月13日(火)

いつもご声援ありがとうございます。F1グランプリも5月に入り、第5戦トルコGPを迎えました。トルコGPは例年8月の真夏に行われてきましたが、今年は3カ月以上も早い開催となり、かなり涼しい気候の中での開催となりました。それでは、さっそくヨーロッパラウンド2戦目となったトルコGPの模様を報告しましょう。

高速レイアウトのイスタンブールだが、トップスピードを活かすためにもダウンフォースはあまり付けないという方向性。そのため新型の空力セットは当初からここではしない予定だった。実績のあるパーツを持ち込んだ。

●ダウンフォースレベルが近いバーレーンGPの再現を期待
前戦スペインGPと同じように高速コーナーと長いストレートを併せ持つイスタンブール・パーク・サーキットですが、ダウンフォースレベルという点では、カタルニア・サーキットがミディアム・ハイであるのに対して、ここはミディアムからミディアムハイと若干軽めのエアロダイナミクスパッケージとなります。ですから、前回スペインGPに持ち込んだものの、結局レースでの実戦投入を見合わせた新型ノーズとフロントウイングがセットされた新パッケージは、イスタンブールには持ち込みませんでした。似たようなダウンフォースレベルを持つバーレーンGPで、2台ともコンペティティブな走りを披露していたので、その走りが再現できればと思っていました。

●コースが濡れた影響で走行時間が限られたものの、クルマのバランスには満足
金曜日、午前中のフリー走行開始前にサーキットを清掃するクルマがコース上に水を撒き散らした影響で、フリー走行1回目はガレージにとどまっていた時間が少し長くなってしまいましたが、走り出しからふたりのドライバーともにクルマのバランスには満足していて順調な滑り出しとなりました。午後に入ると、今度はにわか雨が降り出し、再び走行時間は限られたものとなりましたが、2台で異なるダウンフォースでの走行データを取るなど、予定していたプログラムをこなすことができ、土曜日以降が楽しみなグランプリ初日でした。
ただ課題も残りました。それは2種類持ち込まれたブリヂストンのタイヤのうち、柔らかい方のミディアムでグレイニング(ささくれ摩耗)が発生していたことです。これは例年よりもイスタンブールの気温が低いことと、コースが濡れたことが関係していて、我々のクルマだけでなくライバル勢たちにも見られた現象でした。予選ではグリップが高いミディアムが中心に使われることは間違いないでしょうが、日曜日のレースでどちらのタイヤが高いパフォーマンスを発揮するのかをしっかりと見極めなければなりません。昨年我々はレースでミディアム、ミディアム、ハードというタイヤの使い方をしましたが、今年は季節も異なっていますから単純に同じ使い方とはなりません。これからデータをしっかりと見て、戦略を立てたいと思いました。

ティモは予選アタックラップでのトラブルで残念なスタートポジションとなってしまった。それまでのコンディションがよかっただけに悔やまれる。幸いマシンの状態は良かったので、ピット戦略をうまく使い上位を目指す作戦を決定した。

●予選アタック中のティモにトラブル発生。ヤルノはバランスに苦しみながらも8番手を獲得
金曜日の段階でクルマの調子が良かっただけに、残念な予選となりました。まず予選第2ピリオドで脱落したティモ(グロック)ですが、第2ピリオドの最後のアタック中に第9コーナーで突然、右前輪に違和感を感じたためにアタックを断念しなければなりませんでした。走行後に右前輪をチェックしましたが車輪の締め付けシステム(ドライブペグ)に不具合がおこってしまいました。ティモは予選第1ピリオドではヤルノ(トゥルーリ)をしのぐスピードを見せていました。それだけに、その問題が発生していなければ、1分26秒台の真ん中ぐらいのタイムは出せたでしょうから、最終ピリオドには問題なく進出できていたでしょう。本当に悔やまれるトラブルでした。

非常に苦しいトルコの週末となったヤルノ。予選日、クルマのセッティングを細かく対応していったにも関わらず、走るたびにタイムが伸び悩む状況だった。こんな中での、Q3進出はベテラン、ヤルノだからできた芸当。
一方、ヤルノは土曜日午前中のフリー走行から、低速コーナーでのバランスに満足いかない様子のまま予選に臨むこととなりました。キャンバーの角度などを細かく調整したのですが、クルマの仕上がりという点に関していまひとつという状態でした。その結果、第1ピリオドの最後のアタックで出した1分26秒695がベストタイムとなったように、第2ピリオドでは走るたびにタイムが遅くなり、満足のいくアタックができませんでした。なんとか10番手で最終ピリオドへ進出することはできましたが、少しハラハラする予選となりました。
満足のいく予選とはなりませんでしたが、ティモはクルマの調子自体は悪くなく、ヤルノも今シーズンは予選とともに決勝レースでも粘り強い走りを披露してくれているので、日曜日のレースが楽しみでした。

●スタート直後の混乱により、4戦連続ポイント獲得ならず
土曜日の予選に続いて、日曜日のレースも残念な結果となりました。まず、ヤルノはスタートでやや出遅れて、斜め後ろの9番手からスタートしたニック・ハイドフェルド(BMW)に並びかけられる形で1コーナーに進入。イン側にいたため、少し減速を余儀なくされてしまい、真後ろの10番手からスタートしたデイビッド・クルサード(レッドブル)にも外側から一気にかわされてしまいました。さらに続くコーナーで前を走っていたクルサードが少しバランスを崩したためにヤルノも減速を強いられている間にニコ・ロズベルグ(ウイリアムズ)にもオーバーテイクを許す結果となりました。スタート直後の1周目はかなり激しいポジション争いが展開されていたようで、レースを終えたヤルノのクルマにはその傷跡が残っていました。結局、この1周目の順位がその後のレース結果に大きく影響を与えることとなり、残念なオープニングラップとなりました。しかしクラッシュしていても不思議はなかっただけに、しっかりとクルマをチェッカーフラッグまで運んでくれた点は評価したいと思います。

決勝では、ヤルノは前を行くクルマの動きに翻弄され、順位を落したりとつきのない展開ながら、10位フィニッシュ。ティモは「今日のペースは悪くなかった」と走りのパフォーマンスそのものはまずまずだったが、周回遅れとなったことで、自分のペースで走ることが難しく13位でレースを終えた。
一方、ティモは1ストップ作戦を採用しました。これはスタートポジションが後方だったことも関係していますが、ティモのほうがクルマのバランスは良く、燃料を多く積んだ状態でもそれほどラップタイムが落ちないことを見込んでの作戦でした。スタートでミディアムタイヤを選択したのは、スタート直後のグリップの高さと、もしもグレイニングが出ても、渋滞の中ではそれほどラップタイムに影響が出ないだろうと考えたからでした。その作戦自体はうまくいったのですが、1回目のピットストップで給油リグを抜くのが一瞬遅れてしまい、同時にピットインしたジェンソン・バトン(ホンダ)を抜くことはできませんでした。週末を通して、ティモのほうがクルマのバランスは良かっただけに、昨日の予選でのトラブルが本当に悔やまれる結果となりました。
いよいよ次は伝統の一戦モナコGP。グランプリ直前にはポール・リカールでモナコに投入する予定の新しい空力パーツをテストする予定です。引き続き、ご声援よろしくお願いします。

イスタンブールパークでの新居章年。今回は混乱したスタートで躓き、ポイント獲得ならず。次戦はサーキットの性格が全く異なるモナコGP。ヤルノが得意とするコースだけに、期待が高まる。