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1大会2ヒート制など大幅に規定を変更した7年目の2019シーズン。プロフェッショナルシリーズ初参戦している3名のドライバーに、86/BRZ Raceへ参戦した切っ掛けや魅力、難しさなどを語ってもらった!

  • 中山雄一選手 / #18 GR Garageつくば86R
    #18 GR Garageつくば86R
    IBARAKI TOYOPET RACING TEAM
    中山雄一選手
    幼少期からカートに乗り始め、各年代のカテゴリーでチャンピオンを獲得。16歳で国内限定Aライセンスを取得しフォーミュラレースに参戦する。2009年にはスーパーFJ筑波の、2010年にはフォーミュラチャンレジ・ジャパン(FCJ)のチャンピオンに輝く。2011年から全日本F3選手権に参戦し、2013年にはチャンピオンに輝く。同時にSUPER GTに参戦し、2019年はLEXUS TEAM SARDからGT500に出場。今シーズンは、SUPER GT、スーパー耐久、ニュルブルクリンク24時間レース、インタープロト、86/BRZ Raceに参戦している。
  • 水谷大介選手 / #25 GR TokyoRacing86
    #25 GR TokyoRacing86
    GR Tokyo Racing
    水谷大介選手
    2003年にFJ1600の筑波ともてぎシリーズでチャンピオンを獲得。2004年と2005年はフォーミュラトヨタに参戦し、その後はスーパー耐久でレーシングドライバーとして活躍する。2010年よりヴィッツレースに参戦し、2011年と2013年に関東シリーズのチャンピオンを獲得。86/BRZレースには2014年にスポット参戦し、2018年よりシーズンエントリー。2019年はプロフェッショナルシリーズに参戦している。
  • 宮田莉朋選手 / #80 OTG DL 86
    #80 OTG DL 86
    OTG MOTOR SPORTS
    宮田莉朋選手
    5歳からレーシングカートに乗り、各シリーズで活躍。全日本カートのKFクラスでチャンピオンを獲得し、16歳からFIA-F4選手権に参戦する。2016年と2017年に連続チャンピオンを獲得し、2017年には全日本F3選手権にも同時にエントリー。2018年からSUPER GTにも参戦し、活動の幅を広める。2019年は、SUPER GT、スーパー耐久、全日本F3選手権、インタープロト、86/BRZ Raceの5カテゴリーにエントリーしている。

 シリーズが始まった2013年から多くのドライバーが参戦してきたTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race。開始当初から国内のトップカテゴリーで活躍してきたベテランドライバーやSUPER GTなどで活躍する現役のトップドライバー、上位カテゴリーへの参戦を目指す若手ドライバーなど、これほどの幅広い豪華なメンツを揃えたカテゴリーは他にないといえるほどだった。マシンや装着パーツなどの選択肢があるコンペティションなレースに対して、86/BRZ Raceはタイヤやブレーキパッドなどの一部を除くとワンメイクのイコールコンディションを採用している。そのため、ドライバーがいかにワンメイク車両を操れるかといった腕が勝負を左右する部分が大きく、一部のレーシングドライバーは参戦に尻込みしていると聞くこともあった。
 それでも年を追うごとに参加者は増えていき、2015年からはプロフェッショナルシリーズとクラブマンシリーズの2クラス制を導入。プロフェッショナルシリーズは、シリーズが認定したプロのレーシングドライバーを中心とした熾烈な戦いが繰り広げられている。その激戦に今シーズンから参戦している3名のドライバーに、86/BRZ Raceへ参戦した切っ掛けや魅力、難しさなどを語ってもらった。

 まず一人目はクラブマンシリーズからステップアップし、第2戦の富士スピードウェイラウンドでは並み居る強豪のなかでポールポジションを獲得。第5戦の同じく富士スピードウェイラウンドでは、ポールトゥウィンを飾った今もっとも波に乗っている♯25水谷大介選手。
 水谷選手はトヨタモビリティ東京 GRガレージ室に勤める社員ドライバーになる。モータースポーツの経歴は、20代前半からジュニアフォーミュラに乗り、スーパー耐久にも参戦。2010年からNetz Cup Vitz Raceに参戦し、86/BRZ Raceには2018年からエントリーしている。昨シーズンはクラブマンシリーズで戦い、今シーズンからプロフェッショナルシリーズにステップアップした。
「昨シーズンも会社にはプロフェッショナルシリーズで戦いたいと伝えたのですが、初年度はクラブマンシリーズへというチームの方針がありました。今年はクラブマンシリーズでチャンピオンを採るという選択肢もありましたが、トップカテゴリーに参加して自分の立ち位置を知りたいという気持ちが強かったです」とプロフェッショナルシリーズへの参戦は念願だった。
 しかし、開幕戦の鈴鹿サーキットラウンドではプロドライバーの洗礼を受けたという。「鈴鹿の決勝レースの後半に谷口選手と平中選手にパッシングされたのですが、その抜きっぷりに感動さえ覚えました。クラブマンシリーズやヴィッツレースでは、まず考えられないシーンでのパッシングで、やはりプロドライバーは凄いと思いました。そんな恵まれた環境にいるので、少しでもテクニックを盗んで成長したいと考えています」
 また、第2戦はポールポジションからスタートしたが、第1ヒートで6位までポジションを落としてしまい、第2ヒートも6位でチェッカーを受けた。
「予選で一発のタイムを出すならば、クラブマンシリーズに参戦している上位選手でもプロフェッショナルシリーズで通用すると思います。しかし、レースは別でした。プレッシャーや混戦のレベルが数段高く、ミスを誘発させられました。レース中の駆け引きやブロック、どこでパッシングするという組み立てが、クラブマンシリーズとプロフェッショナルシリーズでは異なりました」というように、開幕2戦目までは新たなステージに困惑したところもあるようだが、第3戦のスポーツランドSUGOでは予選17位から第2ヒートでは7位まで浮上。第4戦のオートポリスでは、自己最高位の第2ヒートで5位を獲得した。そして向かえた第5戦の富士スピードウェイでは、ポールトゥウィンの完勝。クラブマンシリーズからのステップアップでも通用することを証明した水谷選手の躍進は、シーズン後半も続くことだろう。

 そして、もう一人の初参戦ドライバーは、今シーズンからSUPER GTのGT500クラスでDENSO KOBELCO SARD LC500のステアリング握っている中山雄一選手。ニュルブルクリンク24時間レースではレクサスLCに乗るTGRドライバーの一人になる。
「TGRドライバーとして、86/BRZ Raceはチャンスがあれば参戦したいカテゴリーでした。シーズン開幕前に茨城トヨペット様から声を掛けてもらったのですが、他のカテゴリーと日程が重なっていたため、その時点で全戦エントリーが難しかったのです。その条件を理解してもらったうえで、エントリーさせてもらいました」
 今シーズンもSUPER GTにスーパー耐久、ニュルブルクリンク24時間レース、インタープロトなど多くのカテゴリーに参戦している中山選手は、86/BRZ Raceのレース自体とワンメイク車両をどのように感じているのだろうか。
「やはり、参戦初年度から好成績を残せるようなレースではなかったですね。想像通りに厳しい戦いとなっています。ナンバー付きの車両なので車高が高く一定のロール量があります。またタイヤも公道を走行できる溝付きなので、動きが大きい印象です。どのようにマシンをコントロールすれば速く走れるかを考えながらドライビングしていますが、過重が掛かるコーナーを苦手としています。他のツーリングカーを使ったカテゴリーは、レースカーとして車両を作っていてタイヤもスリックなので、違和感なく走れるのですが、このワンメイクマシンは難しいです」とナンバー付きのワンメイクマシンを操る難しさを実感しているようだ。
「参戦してみて気付いたのですが、スプリントレースに出場するのがF3以来で6年ぶりくらいです。数戦を走ってみて、10周程度のレース距離でタイヤのパフォーマンスを使い尽くすことができていないと感じました。耐久よりの運転をしているようで、レースが20周くらいなら勝てるかもしれないです(笑)」
 苦戦を強いられているが、第4戦のオートポリスでは予選で5位を獲得し、第1ヒートでは4位となり、徐々に特性を掴んでいる印象も受ける。
「今シーズンの目標は、まず表彰台に登ることですね。そのためにはやはり予選が重要となってくるので、速さを求めていきたいです。チームは茨城トヨペットが母体となっているので、チームに技術力やデータを蓄積することも役割のひとつです。結果とともに内容もしっかりと残していきます」と、シーズン後半の目標を語ってくれた。

 最後の一人が8月の誕生日で20歳になる宮田莉朋選手。トヨタヤングドライバープログラムの一人となる宮田選手は、SUPER GTや全日本F3選手権、スーパー耐久、インタープロト、86/BRZ Raceと今シーズンは5つのカテゴリーに参戦していて、ほぼ毎週末に何かしらのレースに出場している。
「SUPER GTでお世話になっている大阪トヨペット様から86/BRZ Raceへ参戦しないかと声を掛けてもらいました。Hパターンのミッションでレースをすることも初めてでしたし厳しいレースなので、当初は気後れするところもありました。それと、厳格なイコールコンディションなので楽できないと思っていました。F3は同じ規定で作られていますが、シャシーやエンジンが異なります。少しでも優位性を持ったパッケージに乗れればドライバーとしては楽ですよね。それでもドライバーとしてオファーをもらって断る理由はないので、参戦を決めました」と独特な表現で、86/BRZ Raceのイメージを話してくれた。
 では、ワンメイク車両の特徴についてはどう感じているのだろうか。
「まずマシンに乗ってみて感じたのが、ボディもタイヤも動くということです。GTやフォーミュラは、ブレーキングをいかに短くしてコーナリング速度を上げるかがタイムを稼ぐ要素です。86/BRZのマシンは、ブレーキングしながらギアをダウンして、同時にステアリング操作も行ないます。ドライビングで共通したところがないので、かなり難しいですね。他のカテゴリーではロガーデータを見る前に気付いて操舵にフィードバックできるのですが、86/BRZのマシンは上手くドライビングしているつもりでもタイムに繋がっていません。タイヤの使い方やシフト操作も独特なので、悩んでいるところです」
 中山選手も似たコメントを残しているが、86/BRZのマシンはナンバー付きでしかもラジアルタイヤを履く。他のカテゴリーと性格が異なるマシンなので、プロドライバーでも最初は乗り方に戸惑うようだ。
「86/BRZ Raceで結果を残したくないと言ったらウソですが、SUPER GTやF3などよりも楽しむということを第一に考えています。チームとしては初年度から参戦していてノウハウもあるので、戦っていくうちに速さも加わってくると思います。今シーズンの残りは、第7戦と8戦に出場するので、トップ10内に食い込んでポイントは取りたいです」と残り2戦は、ポイント圏内に入れるようにするのが直近の目標となる。

シーズン終盤戦に向けてますます盛り上がる2019シーズン。チャンピオンの行方はもちろん、今回取り上げた3選手の活躍にも目が離せない。
シーズン終盤戦に向けてますます盛り上がる2019シーズン。チャンピオンの行方はもちろん、今回取り上げた3選手の活躍にも目が離せない。

 参戦の理由は三者三様だが、純粋なレーシングカーやコンペティションにはない難しさこそが86/BRZ Raceの最大の魅力になる。水谷選手のようなサラリーマンドライバーがプロドライバーに勝つことが可能なのも、このレースだからこそといえる。