プロフェッショナルシリーズのシリーズチャンピオン争いは、3年連続で最終戦に持ち込まれることとなった。チャンピオン候補は4選手で、2年連続4度目のシリーズチャンピオンを狙う谷口信輝選手がリードを保ち最終戦を迎える。ここではシーズンの軌跡とチャンピオン候補の声を紹介したい。
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#1 KTMS 86
KTMS KOBE TOYOPET MOTOR SPORTS
谷口信輝選手 - SUPER GTやスーパー耐久などでも複数回のシリーズチャンピオン経験を持つ、国内トップドライバーの一人。ワンメイクレースの出場経験も豊富で86/BRZ Raceには初年度から参戦している。86/BRZ Raceでは2014年、15年、18年にシリーズチャンピオンを獲得していて、シリーズ最多勝利を誇っている。今シーズンは4度目のシリーズチャンピオンを狙う。
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#98 神奈川トヨタ☆DTEC86R
DTEC TEAM MASTER ONE
近藤翼選手 - 2008年に4輪レースデビューし2009年にはF4の東日本シリーズでチャンピオンを獲得。2013年より86/BRZ Raceとポルシェ・カレラ・カップ・ジャパン(PCCJ)のツーリングカーレースを始める。PCCJでは2016年にシリーズチャンピオンを獲得し、SUPER GTやスーパー耐久にも参戦。86/BRZ Raceでは2017年にシリーズチャンピオンに輝いていて、20代でチャンピオンを獲得した唯一のドライバーとなる。
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#7 ADVICS カバナBS 86
T by Two CABANA Racing
堤優威選手 - レーシングカートやジュニアフォーミュラを経て、2015年にロードスターパーティレースでチャンピオンを獲得。その後は、スーパー耐久やGLOBAL MX-5 CUP JAPANなどで活躍し、2018年より86/BRZ Raceのプロフェッショナルシリーズに参戦する。2018年シーズンは初参戦ながらシーズン1勝を獲得し、今シーズンはポイントスタンディングでトップを走る快走を見せた。
3月23日-24日に鈴鹿サーキットで幕を明けた2019年のTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race。令和初となるプロフェッショナルシリーズ、チャンピオンシップの行方は10月19日-20日に岡山国際サーキットで開催される最終戦までもつれ込むことになった。
シーズンを振り返ると序盤戦をリードしたのは、#7 ADVICS カバナBS 86を駆る堤優威選手だった。開幕戦と初の2ヒート制となった第2戦ともに3位で表彰台に登り、第4戦、第5戦でも上位に食い込んだ。
堤選手を追ったのが#98 神奈川トヨタ☆DTEC86Rの近藤翼選手で、第2戦の富士スピードウェイ以外では表彰台を獲得。予選では5番手以降に沈むこともあるが決勝レースでは着実に順位を上げる戦いを見せ、レース巧者ぶりを発揮した。また、1ポイントが加算されるファステストラップを獲得することも多く、どのコースでも高い対応力が見受けられた。
しかし、中盤戦以降からの主役となったのは昨年のシリーズチャンピオンとなる#1 KTMS 86の谷口信輝選手。「ヒーローは遅れてやってくる」という物語を地で行く展開となった。谷口選手は第3戦のスポーツランドSUGOこそ第1ヒート、第2ヒートともに2位となったが第5戦を欠場したこともあり、残り3戦の時点でランキングトップから16.5ポイントのギャップがあった。それでも、チャンピオンシップの山場となった第6戦の十勝スピードウェイでポールトゥウィンを飾って32ポイントを加算。2ヒート制の場合に1戦で獲得できる最大ポイントが33なので、ほぼフルポイントを持ち帰ることとなった。
第6戦を終了した時点でのポイントスタンディングは、首位が近藤選手で84.5ポイント、2位が谷口選手で78ポイント、3位が堤選手で74.5ポイント。シリーズランキングトップから3位の3名が10ポイント差で迎えたのが、9月14日-15日にツインリンクもてぎで実施された第7戦だった。
レース前に3選手にシリーズチャンピオン争いに対して聞くと、「昨年も最終戦ひとつ前はツインリンクもてぎ戦でしたが、そのときは貯金を作った状態でランキングトップでした。チャンピオンを決めたのは最終戦でしたが、リードを保っていたので今シーズンとは異なる状況です。2014年、15年にチャンピオンを獲得したときはシーズン途中にチャンピオンを獲得できました。ランキング争いをしているときは、いつでも重圧を感じてそわそわするものです。とくにトップにいる場合は」と、4度目のシリーズチャンピオンを狙う谷口選手は、チャンピオン争いの心理状況を語る。
ランキングトップで第7戦を迎えた近藤選手は、「プレッシャーは感じていますが、ポイントを積み重ねてシリーズチャンピオンを獲りたいです。2017年にシリーズチャンピオンを獲得したときも優勝ゼロ回でしたが、今シーズンも同じような状況ですね。もちろん優勝したい気持ちはありますが、それよりもシリーズチャンピオンを獲得したいです」と意気込みを話してくれた。
プロフェッショナルシリーズへの参戦2年目で初のシリーズチャンピオン争いをする堤選手は、「昨シーズンは、2戦目のスポーツランドSUGO戦で優勝できましたが、それ以降は尻すぼみな戦いとなってしまいました。チームにテスト回数を増やしてもらったこともあり、どのサーキットでも自信を持って挑めました。トップの近藤選手とは10ポイント差で、まだ2年目ということもありシリーズチャンピオンは獲れるなら獲りたいですが、それよりも今シーズンは勝てていないので、残り2戦で優勝を果たしたいです」と、目標であるシーズン1勝を狙っていくとのことだった。
第7戦のツインリンクもてぎはスーパー耐久との併催ということで、ドライバー達はスーパー耐久のマシンが履くスリックタイヤがコース上に残すラバーと、86/BRZ Raceのマシンが装着するラジアルタイヤの相性を気にしていた。9月14日に実施された予選は15分間で競われたが、開始5分が経過しても誰もコースインしない。コースコンディションは後半になれば上昇していくのが明確で、どのドライバーも15分の最後にタイムアタックを行ないたいのだ。ただ、最後にコースインをするとトラフィックや黄旗や赤旗によるリスクもあり、どのタイミングでアタックを行なうかはドライバーやチームの判断になる。そのリスクを負いつつも最後にコースインしたのが谷口選手だった。その狙いは的中し、2番手に0.3秒差をつけてポールポジションを獲得。残り4分ほどでコースインした、堤選手は10番手、近藤選手は17番手と両選手は実力を出し切れない予選となってしまった。
谷口選手がチャンピオンシップで有利な状況で迎えた決勝レース。ポールポジションからホールショットを奪った谷口選手は、終始レースをコントロールしてポールトゥウィンを達成した。予選で17番手となった近藤選手だったが、レースでは着実に順位を上げていき終盤にはポイント圏内の10番手となった。一方の堤選手はレース序盤で7番手まで浮上していたが、終盤にペースが落ちて9番手でファイルラップに突入した。堤選手と近藤選手のシリーズチャンピオン争いを行なうふたりが連なってファイルラップに入ると、5コーナーで衝撃的なシーンが中継に写された。なんと2台が接触してしまい、近藤選手はコース上にマシンを止め、堤選手は右リアを損傷しながら30位でチェッカーを受けた。原因は、近藤選手のマシントラブルで、両者ともにノーポイントのレースとなってしまった。
この結果によりポイントスタンディングは、谷口選手が首位で99ポイント。2番手は近藤選手で84.5ポイント、3番手には第7戦で2位を獲得した#90大阪トヨタ86Racingの阪口良平選手で78ポイント、4番手は堤選手で74.5ポイント。この4選手がシリーズチャンピオンの可能性を残して最終戦を戦うことになる。
「予選でポールポジションを獲れたことが優勝できた大きな要因ですね。獲れると思っていなかったので良かったです。レースは2番手の山下選手が後続を押さえてくれて理想的な展開になりました。最終戦にシリーズランキングトップで、しかも貯金を作った状態でいられるとは思っていませんでした。ずいぶんポイント差が離れたので、しっかりと守り切ってチャンピオン獲ります」と、谷口選手は2年連続4回目のシリーズチャンピオンに向けて盤石の体勢で最終戦を迎える。
近藤選手と堤選手はレース後に言葉少なく、プレッシャーはなかったがコースコンディションに合わせ切れなかったとレースを振り返った。
そしてランキング3位に入ってきたのが阪口選手で、「最終戦の岡山国際サーキットはホームコースで、86/BRZ Raceでも勝ったことがあります。ほかのカテゴリーでもシリーズチャンピオンを決めたり、優勝したりと思い出が多いコースです。ポイント差はありますが粘り強く戦っていきたいです」と最終戦へ向けた抱負を語ってくれた。
7シーズン目を締めくくるTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceの最終戦は、10月19日-20日に岡山国際サーキットで開催される。19日には予選と決勝第1ヒート、20日には決勝第2ヒートが実施され、最大で33ポイントの獲得が可能。4名のシリーズチャンピオン候補は、最後まで激しい戦いを見せてくれるはずなので、ぜひ現地で熱戦を観戦してもらいたい。
- 最終戦は、10月19日-20日に岡山国際サーキットで開催。19日には予選と決勝第1ヒート、20日には決勝第2ヒートが実施される。令和初のチャンピンは誰の手に!?