
新生GR86/BRZ Cupの初代シリーズチャンピオンを狙う若き2人の熱い思いと好調の理由とは?
GR86/BRZ Cup 2022年シーズン最終戦 直前スペシャル!
2022年シーズンからニューマシンと新たなレギュレーションによって戦うこととなったTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup。2013年からスタートした86/BRZ Raceは、2016年シーズンまでの4年間を前期型とよばれるトヨタ86(ZN6)とSUBARU BRZ(ZC6)で戦い、2017年からは、後期型とよばれるマイナーチェンジ後のモデルを追加して競われてきた。
開幕当初から参戦してきたチームは、前・後期型の違いはあるが9年間のセッティングデータを蓄積し、ドライバーも継続することで数多くの経験を積んできた。とくに予選のトップタイムから1秒以内に20台のマシンが入るほど熾烈な争いのプロフェッショナルシリーズは、ドライバーの技術ももちろん必要だがチーム力も勝敗を分ける重要な要素となってきた。だが、ニューマシンを使うGR86/BRZ Cupに移行したことで、蓄積してきたノウハウがある程度リセットされた形になる。
プロフェッショナルシリーズは、新たなレギュレーションとしてサスペンションが自由化され、数多くのメーカーから選択することが可能になった。スプリングレートは共通化されているものの、メーカーごとの特性や減衰力やアライメントの調整など86/BRZ Raceよりセッティングの幅が広くなったことは確かだ。また、GR86/BRZ CupではフロントブレーキにADVICS製の4POTブレーキキャリパーが指定部品となった。ブレーキパッドは以前から自由化されていたが、キャリパーは純正を使用していたのに対して、今季からは車両のパワーアップに合わせて制動力や耐久性の高いブレーキキャリパーが採用された。このように使用するマシンそのものとパーツに選択肢が増えたことで、チームやドライバーは新たに乗りやすくタイムの出る仕様を作り上げることが必要となった。
ノウハウがリセットされたことはシリーズチャンピオン争いにも変化を見せることとなる。ここでは、10月29日~30日に鈴鹿サーキットで開催された第4戦を終了してポイントランキングトップに立っているプロフェッショナルシリーズの#80伊東黎明選手とクラブマンシリーズの#186勝木崇文選手に好調の理由やニューマシンのGR86/BRZ(ZN8/ZD8)の印象をうかがった。
まずは4戦を終えた時点でポールポジション3回、決勝レースでは2回の優勝と2位表彰台が2回と絶好調の勝木選手にその要因を聞いてみた。
勝木選手:
「今季は7月が開幕戦となりましたが、チームに競技車両が届いたのが6月で、開幕戦にはシェイクダウンを含めて2回のテストで挑みました。最初は昨年までのイメージを引きずってドライビングもセッティングも行なっていました。ただ、今季からクラブマンシリーズはタイヤが『DUNLOP DIREZZA ZⅢ』のワンメイクとなり、昨シーズンよりグリップが抑えられています。これまではタイヤのグリップに頼って走っている感覚でしたが、今季はタイヤのグリップをうながすようなセッティングと乗り方を意識しています。セッティングとしてはダンパーを柔らかくしていますし、車高の考え方も大きく変わりました。開幕戦の富士からこの考え方に辿り着いたわけではありませんが、ラウンドを重ねるごとにだんだんとGR86と今季のレギュレーションにあった方向が見つかりました」
このようにいち早く新しいマシンとレギュレーションに合わせた方向性を見つけられた選手とチームがランキング上位に入っている。昨年までのクラブマンシリーズEXPERTクラスでは2位が最上位だった勝木選手だが、順応性の高さを発揮できたことが今季の好調につながっているのだろう。
一方のプロフェッショナルシリーズでは同シリーズでの参戦経験が2年目の伊東選手が、ポイントスタンディングをリードして活躍をみせている。伊東選手にも好調の要因を話してもらうと、「ただ毎戦がむしゃらに頑張っているだけです!!」という返事が返ってきた。もう少し詳しく聞くとさらなる理由がみえてきた。
伊東選手:
「所属するOTG MOTOR SPORTSは最大で4台体制で参戦しています。そのため他のチームより走行データが多いのは当然ですし、選手の間でデータを共有することやフィードバックもあります。開幕戦前には5月に富士スピードウェイでシェイクダウンテストを行ない、その後は各社のサスペンションを試し、セッティングを煮詰めて行きました。開幕戦は僕だけ好みのセッティングが異なっていました。ですが、予選も決勝レースのラップもこれが合っているはずと思っていて、その通りの仕様で表彰台に登れて自信が付きました。次戦のスポーツランドSUGOでは予選で失敗しましたが、上手くまとめられればフロントローに入れていたはずです。そして十勝スピードウェイではポールトゥウィンができて、今季の好調の要因はチーム力とともに自信だと思います」。
今季から様々な要素が変化したことでセッティングデータをイチから作り上げる必要があり、マシンや使用するパーツの性能を発揮させられるチーム体制やドライバーの技術が勝敗を分けているようだ。
勝木選手と伊東選手の2人には、新しくなったマシンの素性や装着している機能パーツについても聞いてみた。
勝木選手:
「排気量が2.4ℓになりパワーアップしたことで、スポーツランドSUGOの最終コーナーの上りはあきらかに加速感が良くなっています。また車体剛性もアップしていて、操作に対してよりダイレクトに動いてくれます。セッティングも今季は車高を1、2ミリ単位で調整していて、ドライバーのセッティング能力が試されていると思います」
伊東選手:
「ブレーキキャリパーが変更できるようになってコントロール性が良くなりました。昨年まではABSの介入をかなり気にしていました。ブレーキで突っ込み過ぎるとABSが急に介入して制動距離は伸びてしまいます。ブレーキをリリースするときも操作に対しての反応で異なることがありましたが、新しいマシンではABSの介入もスムーズで、ドライバーの操作に対し忠実に反応してくれる印象です」
新型のGR86/SUBARU BRZにスイッチしたことで、以前のセッティングのノウハウが通用しないことが多くなった。ただ、マシンは大幅に進化したことでドライバーの操作に対して忠実になり、セッティングも細かい調整に対してマシンが反応していることがコメントから伺える。
新たにスタート切ったGR86/BRZ Cupは5大会6戦のシリーズで競われ、11月19日~20日に岡山国際サーキットで開催される第5戦、第6戦でシリーズチャンピオンが決まる。ポイントスタンディングをリードする若き2人が初代の王者に輝くのか、そして上位カテゴリーへのステップアップを手にすることができるのか注目してもらいたい。
●ドライバー紹介
♯186勝木崇文 (クラブマンシリーズ参戦)
Star5 ダイシン GR86
AVANTECH racingteam
1995年生まれの27歳。カートやレースの経験を持たず普通自動車免許を取得した18歳のときにSRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ)のSTEP1を受講。STEP2となるアドバンス基準を達成するために練習を重ね、20歳のときにSTEP2をクリアしアドバンスコースを受講する。レース参戦のスカラシップは得られず、2016年にスーパーFJの鈴鹿シリーズに参戦。2017年からワンメイクレースに転身し、ヴィッツレースの関西シリーズにエントリーする。2018年はトップ争いに入ることができ、2019年より86/BRZ Raceのクラブマンシリーズにステップアップ。2020年から現在の体制でクラブマンシリーズEXPERTクラスにシリーズ参戦し、今季は4戦を終えてシリーズランキングトップに立つ。遅咲きのドライバーだが、上位カテゴリーへのステップアップとプロを目指して活動している。普段はロータリーチューンで有名な藤田エンジニアリングに勤務する。
♯80伊東黎明(プロフェッショナルシリーズ参戦)
OTG DL GR86
OTG MOTOR SPORTS
2000年生まれの22歳。父親の影響で4歳からカートを始め、15歳、16歳の2年間はFS125の地方カート選手権に参戦する。17歳のときに全日本カート選手権のFS125クラスにステップアップし、翌年も同シーズを戦う。2019年はカートからフォーミュラへ転身し、スーパーFJのもてぎシリーズに参戦。同年のスーパ-FJ日本一決定戦にも出場する。2020年シーズンは、FIA-F4 JAPANESE CHALLENGEドライバーに選出されてFIA-F4選手権を戦う。初年度ながらシリーズ5位となり、2021年、2022年もFIA-F4 JAPANESE CHALLENGEドライバーとして同シリーズを戦う。同時に2020年の86/BRZ Race第7戦にOTG MOTOR SPORTSからクラブマンシリーズEXPERTにスポット参戦し、ポールトゥウィンを達成。2021年からプロフェッショナルシリーズを主戦場とし、今季は開幕戦で表彰台に登ると第3戦の十勝スピードウェイではポールポジションから初優勝を果たす。今後は国内トップカテゴリーでの活躍も期待されるドライバー。
YouTube「T.R.A.事務局公式チャンネル」のライブ配信でレース観戦!
第5大会岡山戦、「T.R.A.事務局公式チャンネル」よりYouTubeでの配信を実施予定です。
公式予選/決勝レースのライブ配信(タイミングモニター or レース映像)です。
現地観戦が難しい方も、下記URLから選手たちの白熱必至の戦いを応援してください!
あわせて、「T.R.A.事務局公式チャンネル」の登録もお願いいたします。
TOYOTA GAZOO Racing
GR86/BRZ Cupを
テレビで観戦!

全戦の模様が、CSスポーツチャンネルJ SPORTS 3の番組「MOTOR GAMES TV」にて放映決定!
レースの模様から裏側まで、観戦がもっと楽しくなる情報をお伝えします。