227LAP2018.9.12
サーキットレースが五輪種目になる日がすぐそこに…
ジャカルタで開催されたアジア大会は、スーパー高校生・池江璃花子の6冠など、競泳陣の大活躍が話題の中心だった。だがその陰で、もうひとつのウォータースポーツが行われていた。かつてはその競技をかじりかけた木下隆之は、新たに加わったそれを観て体が固まったという。サーキットレースが五輪競技になる日を夢見たのだ。
アジア大会は、新種目が目白押し
日本選手団が数々のメダルを獲得し、アジアでの圧倒的な強さを発揮して閉幕した「第18回アジア競技大会2018ジャカルタ・パレンバン」は、多くの感動を僕らに与えてくれた。
大会が開催されたジャカルタは、東南アジアの南側に位置するインドネシア共和国の首都だ。国土は広く、人口は2億5000万人。中国、インド、アメリカに次ぐ世界4位の巨大国家である。日本からだと7時間30分のフライトだ。
五輪とのテレコで、4年に一度開催されるアジア大会は、今回45カ国が参加。42の競技と462の種目で競われた。初めて採用された競技が多く、新鮮な思いがしたのも今大会の特徴だった。五輪とは異なって、アジア大会は文化や地域色が強い。新たな競技の追加やルール変更など斬新なアイデアに心がワクワクと躍ったのである。
新たに採用されたおもな種目は、インドネシア古来の武術である「プンチャック・シラット」が代表だ。ウズベキスタンで生まれた「クラッシュ」や旧ソ連が発祥の「サンボ」も初めて種目に加わった。…と聞いても、どんな競技なのか皆目見当もつかない。
そのほか、スポーツクライミングはいきなりの人気だったが、三人制バスケットボール、柔術、頭脳スポーツのブリッジ、パラグライディングなどがある。復活競技ではローラースポーツやドラゴンスポーツだなんて、耳馴染みのない競技もあったりして、なかなか多種多彩なのもアジア大会の特徴なのだ。世界各地の文化や伝統が想像できて面白い。
モータースポーツが競技に初採用された
そんなアジア大会を見ていて興味深い競技を発見した。セパタクローや武術太極拳といったマイナー競技にもおおいに惹きつけられたが、レース屋である僕にはけしてスルーできない競技を発見してしまったのだ。今年、新種目に加わった「ジェットスキー」がそれである。
一般的にジェットスキーやジェットバイクは、パワーウォータークラフト(PWC)と呼ばれ、一括りにされる。いわば海のバイクである。クルーザーと違うのは、スクリューで推進力を得るのではなく、ボディの中に一旦吸い込んだ水を一気に吐き出すことで進むところだ。スタンディングで操る1名乗りのジェットスキーと、1名から3名がまたがって乗るタイプまでさまざま。それぞれ特性が異なる。
いよいよ、パワーウォータークラフトがアジア大会の競技になったことに興奮を隠しきれなかった。
ただし、興奮する一方、疑問が浮かんだのも事実。
「ジェットスキーが種目でいいの?」
否定的な意味ではない。むしろその逆だ。
「ジェットスキーがいいのだったらこっちもどうですか?」
建設的な驚きなのだ。
その理由はこうだ。アジア大会は日本オリンピック委員会が主体となって選手を派遣している。いわば五輪の前哨戦という意味合いがある。そのアジア大会にジェットスキーが加わった。僕にとってジェットスキーは水上のモータースポーツである。水上のモータースポーツがスポーツの祭典の種目になったのであれば、陸上のモータースポーツがアジア大会の種目になっても不思議ではない。とすると近い将来に陸上のモータースポーツが五輪競技にならないとも限らんぞと、脳みそがぐるぐると回転し、思わず頬が緩んだのである。
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競技用はもちろんシングルシーターだ。水面に浮かべたブイをコースに見立てて周回する。
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船体にジェットスクリューを内蔵する。吸った水を強烈な勢いで吐き出すことで推進力を得る。
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スタートダッシュが勝敗を左右する。ライディングだけでなく船体の性能が重要だ。まさに水上のモータースポーツだ。
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体重移動やスロットルワークがカギを握る。波を読む能力も試される。
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スタートは岸辺から。爆音が高鳴る。
ジェットスキーが競技種目となるならばF1だって…
ジェットスキーとモトクロスには、あまり感覚的な違いはない。マシンにまたがり、ハンドルとスロットルを操作しながらライバルより早くゴールするという点では、水上と陸上との違いでしかない。ならば、モトクロスがアジア大会の競技にならない理由はないのだ。
そこから都合よく解釈の羽根を羽ばたかせると、最後は4輪レースに行き着く。ジェットスキーがいいならモトクロスもいいはずだ。モトクロスがいいのなら、ダートトライアルも許されるはずだ。タイヤの数だけしか違いがないのだからね。ダートトライアルが許されるのなら、ラリーでもいい。ラリーが開催可能ならばサーキットレースも可能なのだ。つまり、少々都合のいい論法を振りかざせば、僕らが普段戦っているGT3やGT4が五輪種目になる光明が差したと思うわけ。
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水上のモータースポーツ「ジェットスキー」がアジア大会の種目ならば、ダートのモータースポーツ「モトクロス」が種目になっても全く不思議ではない。
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こうしてみると、ジェットスキーとモトクロスのライディング姿勢は酷似している。
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熱い先陣争いは、水上も陸上も同様だ。
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モトクロスのスタート光景と似ている。
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マシンにまたがりコントロールする。ステージが水上か陸上かの違いでしかない。
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水上のレースがアジア大会の種目ならば、サーキットのモータースポーツが五輪種目になっても不思議ではないという論理。
モータースポーツはこれまで、どこかアスリート系スポーツとは別のものと認識されていた節がある。新聞雑誌のスポーツ欄に紹介されることは稀だ。そんな寂しさを感じていたからか、今回のアジア大会種目になったことは、長いモータースポーツの歴史に風穴を開けるかもしれないと手を叩いたというわけだ。
じつは僕はかつて、ジェットバイクを所有していたことがある。いまから22年前のことだ。海岸沿いをドライブしていたら、大海原を疾走しているジェットバイクを目にした。瞬間的に虜になり、次の週には湘南のマリーナで艇庫契約をしていたほど一目惚れしたのである。
サーキットレース関係者の琴線にも響くようで、海上のマシンを所有するドライバーも少なくない。エンジンを搭載してカッ飛ぶってあたりは、レーシングドライバーのハートにズキュンズキュンと突き刺さるのである。
僕が購入したのはヤマハの2名乗りマリンジェット。2ストロークの85PSエンジンを搭載し、特に旋回性能に定評があった。そのマシンを選んだのは、水上のレースに参戦する気満々だったからだ。
諸般の都合でレース参戦は断念したけれど、もしあのときアジア大会や五輪の種目になっていたら挑戦していたかもしれない。そう思うと、今回公式種目に昇格したことは無視できないのである。
2020年の東京五輪は無理だとしても、2022年のアジア大会中国、もしくは2024年のパリ五輪にレーシングドライバーが派遣されていたりしてね。想像しただけでワクワクする。
キノシタの近況
なん年前だったか、ニュルブルクリンク24時間レース直後に別れがたくなって始まった夏のBBQは、なんだか恒例になってしまった。レースの裏話でヒートアップ。酒瓶がどれほど空になったかわかりません。最後は朝まで雑魚寝です。