300LAP2021.9.24
祝300回記念です
本連載コラムも無事に300回を迎える事になりました。ペンを握る木下隆之が、これまでの感謝の言葉と、これからの誓いを宣言します。
気持ちは晴れやかです
2021年9月24日は、僕にとって特別な日である。そして同時に、いつものように淡々と時が流れてもいる。
「ついに…」というか「まだまだ…」というか気持ちの整理ができていないけれど、当コラム「クルマ・スキ・トモニ」が300回を迎えたのである。隔週連載だから、月に2本。一年に24本を休まず寄稿し続けたわけだから、およそ12年半の日々、文章を書き続けた計算になる。
師匠である成瀬弘氏が不慮の事故で天に召されたときに特別追悼記を綴るなど、イレギュラーな執筆も少なくないから、実際には300を超えた数字になるのかもしれない。
「長かったようなあっという間であったような…」
長期にわたって物事を続けてきた者の常套句ではあるが、まさにその言葉が自然に口をついて出そうになる。「ついに…」は300回という節目に到達した喜びであり、「まだまだ…」は、これからも連載を継続するという宣言である。
日々、頭に思い浮かんだネタを、忘れないようにメモすることを習慣にしている。連載開始時には、枕元に準備しておいたメモ帳と鉛筆にスラスラとキーワードを走らせていたと思うけれど、最近ではスマホのメモ帳に、指先でタップする。時代の変化と時の流れを意識すると、やはり「ついに…」なのだが、そのスマホのメモ帳にはネタが山積みになっており、消化する速度を超えて増える一方、その意味では「まだまだ…」なのである。
役員室に呼ばれて…
思い起こされるのは、連載開始を提案されたその日のことだ。
当時、TOYOTA GAZOO Racingを率いていたS室長との食事の席で、それは告げられた。
その日を前後して僕はTOYOTA GAZOO Racingのアドバイザーとなるのだが、サーキットを離れても文章を通じてクルマ好きを増やすという役割を命じられたのだ。
あらためてTOYOTA GAZOO Racingトップであった友山常務(当時)の役員室に呼ばれ、たしかこんな会話をした。
「FBも始めた方がいい」
そう、この頃の僕は、Facebookもやっていなかったのである。
メディアに精通した友山常務はこうも続けた。
「このコラムはトヨタのためではなく、ひとりでも多くクルマ好きを増やすためです。だから忖度はしないでくださいね。素直な思いをストレートに表現してください」
そう念を押されたのである。
僕はその言葉を聞いて、少々驚いた。トヨタという会社は厳格であり、だからトヨタの利益に直結しなければ投資する意味がないと考えるのだと決めつけていた。その懐の深い指示に、気持ちが傾いたのだ。
「連載は長期で考えてください」
僕はこう言った。ひとりでも多くのクルマ好きを増やすためには時間が必要で、そのためには短期連載では達成できないと考えていたからだ。
「もちろんです。駆け足じゃなくてもいいですよ。この連載が終わるのは、これ以上クルマ好きを増やしてもらったら困るという日ですね。それまでは続けてもらいます」
「それは、すぐにというわけではなさそうですね」
僕らは笑い合った。だから「まだまだ…」なのである。
豊田章男社長からも同様の指示を受けている。
あの少年の成長記でもある
記念すべき連載第一回目は「友人のご子息のカートレース奮闘記」である。僕の親友の長男が13歳になったとき、僕は彼にヤマハのレーシングカートをプレゼントした。その様子を小説風の文体で綴っていた。その子は今では大人になり、レースをしている。ついに春の「スーパー耐久富士24時間レース」では、ライバルとして戦うまでに成長した。そう、彼はもう、25歳になったのである。
ひとりの少年が大人になるまでなのだから、なかなかの記録であろう。
感謝をしてもし尽くせない…
これまでこうして連載を続けてこられたのは、とりもなおさず応援してくださる読者の方々のおかげであろう。一方通行のスタイルゆえに、反響なり反論なりを直接絡ませる機会がないが、サーキットでは多くのファンから連載の感想を聞かせていただく。納得した記事や、提案など様々であり、僕のメモ帳の書き込みは減るどころか増えるばかりなのである。
そして連載担当者にも感謝しなければならないだろう。記事の内容は基本的に僕が決める。原稿も自分の責任だ。一字一句、無断で直されることはない。とはいうものの、校正をしていただく過程での注意点は指摘してくださる。
何よりも、一週間おきの連載はスケジュール的には決して楽ではなく、折れそうになる僕の気持ちを奮い立たせてくれるのはありがたい。
場合によっては、連載記事をアップする当日の入稿もあり、その記事が相応しくないと却下されたこともある。掲載を一週間先延ばしという緊急事態では大変迷惑をかけた。
だが、穴を開けたことが一度もないというのは、振り返ってみれば僕が健康でい続けたからに他ならない。
そして何よりも、クルマの世界、とりわけモータースポーツの世界が語るにふさわしい出来事で満たされている事に感謝すべきだろう。
実は連載開始当初は、モータースポーツに限定せずクルマ業界全体が記事対象だった。第5LAPでは、「クルマの助数詞」というタイトルで、クルマによっては数え方が異なるのではないかと語っている。ハマーは爆撃機みたいだから「一機」であり、カイエンは「一頭」メルセデス・スマートは小さいから「一粒」。秋に夜長に読み捨てるにはちょうどいい、人畜無害なネタを披露している。27LAPでは、空港の荷物カートとレーシングカーとの関係を考察したりしている。ネタは自由奔放だった。それがある日を境に、モータースポーツに限定すべしになり、現在に至る。それでもネタ帳が増えるばかりなのだから、モータースポーツ界は子供のように成長し、大人のように日々進化し、溢れるばかりのエネルギーを迸(ほとばし)らせているのである。
という超変則的連載コラムは300回をステップにさらに羽ばたきますので、これまで以上に応援よろしくお願いします。
キノシタの近況
21日は「中秋の名月」でしたね。秋の収穫を祈り、餅や団子で祝う。月は自転と公転が、ちょうど27.3日で一致する。向きと周期が同じになる。だから地球にいると、餅をつくウサギしか拝めないのだが、それも情緒があっていい。月を裏側から見ると、なんのアート性もないからストーリーもない。ゴタゴタしているだけらしいよ。