今シーズンのWRCは残すところ2戦となり、いずれもターマック（舗装路）のラリーです。ターマック・ラリーが行われるのは第4戦クロアチア・ラリー以来となり、セントラル・ヨーロピアン・ラリーは今年初めてWRCのカレンダーに加わった新規開催イベントです。このラリー最大の特徴は、欧州の三カ国が舞台となることで、ラリーの中心となるサービスパークはドイツの町「パッサウ」に置かれました。ステージはチェコ、ドイツ、オーストリアの各国で行われ、国や地域ごとにステージのキャラクターは大きく異なりました。ただし、全体的に道幅は狭く、それでいてハイスピードなセクションが多く、市街地の狭路を通過するようなステージもありました。路面は総じてグリップが低く、路肩の泥がインカット走行により大量に掻き出されているようなコーナーもありました。

ラリーは木曜日にチェコの首都プラハで開幕し、その後チェコ国内でデイ1として2本のスーパーSSが行われました。本格的な戦いはフルデイ初日となる金曜日のデイ2からとなりましたが、チェコで行われたステージは大雨の影響もあって特に滑りやすく、小さなミスが大きなアクシデントに繋がるような、難易度の高いステージが続きました。勝田は完全にはクルマに自信を持ち切れない状況ではありましたが、確実性の高い走りで総合5位に。ドイツとオーストリアで行われた土曜日のデイ3は、雨こそぱらつく程度でしたが、路面は濡れていたり泥が大量に出ているところも多く、やはり難しいコンディションでした。勝田は、ヒョンデのテーム・スニネンと総合5、6位の座を巡って激しく戦い、午前中のステージの最後ではやや遅れをとりました。しかし、路面がドライになっていった午後はペースが向上し、3番手タイムを刻むなどしてスニネンを逆転。総合5位でデイ3を終えました。最終日となる日曜日のデイ4では、さらに走りが良くなりSS16で3番手、SS17で2番手のタイムを記録。総合5位の座を最後までしっかりと守り抜き、WRC初開催のトリッキーなターマック・ラリーでドライバーズポイントを獲得しました。

勝田貴元：とても難しくて厳しいラリーでしたが、自分にとっては本当に良い経験になりました。天気もグリップの変化も激しく、土曜日の午前中は苦戦しましたが、チームのエンジニアたちがより良いセットアップを見つけてくれたので、その後は自信を持つことができました。最終的には、クルマのフィーリングはとても良くなりました。もちろん、まだ改善できる部分もありますし、限界ギリギリの走りを楽しむことができたならば、さらにプッシュできたはずです。それでも、非常に厳しかったこの週末を総合5位でフィニッシュできたのは良かったです。また、ターマックのラリーを良いフィーリングで走りきれたのは、ラリージャパンに向けてさらなる自信と余裕を持つためにも重要なことです。ラリージャパンにはヨーロッパとはまた違った難しい路面がありますが、もちろんプッシュして自分にとってのホームラリーで良い結果を残したいと思います。

ユホ・ハンニネン（TGR WRCチャレンジプログラム・インストラクター）：貴元は今週末、本当にいい仕事をしたと思います。今回のラリーのステージは完全に新しいものでしたし、グリップレベルも様々で、全てのドライバーにとって非常に難しいコンディションでした。特に金曜日は、多くの泥が路面に掻き出され、水溜まりも多くありましたが、貴元はそのような厳しいコンディションを上手く乗り切りました。土曜日の午後には、彼の自信とクルマに対するフィーリングが大きく向上し、それ以降は何本かのステージで好タイムを記録しました。そして、そのことは次のラリージャパンに向けて非常にポジティブなことです。昨年のラリージャパンでは表彰台に上ることができましたが、今回も同じような結果が出ることを期待しています。