TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である山本雄紀が、7月5日(金)から7日(日)にかけてエストニアで開催された、FIAヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第4戦「ラリー・エストニア」に、GR Yaris Rally2で参戦。初出場の超高速グラベル(未舗装路)ラリーで全ステージを走破し、総合12位でフィニッシュしました。
ラリー・エストニアは近年、FIA 世界ラリー選手権(WRC)のレギュラーイベントとして開催されていましたが、今年はERCの第4戦として行われました。ERCでは、GR Yaris Rally2を含むRally2車両がトップカテゴリーに位置づけられ、非常に速く才能豊かなドライバーたちがステアリングを握り、毎戦激しいトップ争いが繰り広げられています。ラリー・エストニアのステージは非常にハイスピードで、流れるような高速コーナーが続くという点で、ラリー・フィンランドと多くの共通点があります。しかし、フィンランドと比べると全体的に道幅は狭く、テクニカルなセクションも多くあります。また、路面は比較的軟らかく砂状のセクションも多いため掘れやすく、同じステージを2回目に走行する時には深く、大きな轍が刻まれた路面での戦いになります。
山本にとってエストニアは、ハイパワーな四輪駆動車であるRally2車両で臨む初めての超高速グラベルラリーでしたが、彼と同じくチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかるは、前戦WRCラリー・イタリア サルディニアで骨折した鎖骨の回復過程にあり、残念ながら競技に出場することはできませんでした。ただし、ラリー前のレッキ(ステージの事前下見走行)には参加し、間もなくテストや競技にも復帰できる見込みです。
ラリーは金曜日の夕方に「タルトゥ」でのスーパーSSで競技がスタートし、土曜日は9本合計117.84kmのステージが行われました。山本はコ・ドライバーのマルコ・サルミネンと共に、20台のRally2最後方となる20番手で出走。非常にバリエーション豊かなコンディションで多くの経験を積みました。特に、4本のステージを2回目に走行した際には深い轍が刻まれ、非常にチャレンジングなコンディションでの走行になりました。それでも、山本は数ステージで好タイムを記録し、総合13位で一日を走り切りました。
最終日の日曜日は出走順が逆になり、山本は3番手スタートとなったため、前日とは異なるコンディションを経験することになりました。出走順が早いドライバーたちは、路面の表層を覆うルースグラベル(滑りやすい砂利)を掃き飛ばしながら走ることになり、山本もそのひとりとして滑りやすい路面での対処方法を学びました。また、ステージの一部には泥状の路面もあり、特に最終の「パワーステージ」は雨が土砂降りとなったことで非常に難しい路面コンディションになりました。それでも、山本は問題なく最終ステージも走破し、総合12位で初出場のラリー・エストニアを終えました。
山本雄紀:
今回はとても良い戦いができたと思います。ここ数戦は自分にとってあまりうまく行かなかったので、このラリーを良いフィーリングで終えたいと思っていましたが、うまく行ったと思います。特に、日曜日は本当にトリッキーなコンディションでしたが、それでも全ステージを走り切ることができましたし、それこそが自分にとって最も重要なことだったので、とても満足しています。土曜日は、天候的な面に関しては問題なかったのですが、路面には非常に大きな轍がありました。常に目を光らせてラインを追い、即座にアジャストするいい練習になりました。そして、クルマは轍にうまくマッチし、信頼して走ることができましたし、非常に堅実に一日を戦うことができたと思います。日曜日は、普段とはやや異なる状況でした。路面を覆う大量のルースグラベルを掃き飛ばしながら走る必要があったのですが、それもまた良い経験になりました。それほどハードにはプッシュしなかったのですが、それでもペースは悪くなかったですし、安定していました。ERCは競争が非常に激しいので、上位選手のオンボード映像のデータを分析して改善につなげることができます。全体的には、ラリー・フィンランドに向けて良い学習の機会になりましたし、良い準備ができたと思います。
ユホ・ハンニネン(インストラクター):
困難なイベントが2戦続いた後の今大会は、雄紀にとっていいラリーになったと思います。このようなステージのキャラクターや地域的な特性が、雄紀にとってより馴染のあるものであることは分かっていましたが、コンディションは本当にトリッキーで、かなり頻繁に変化しました。このラリーを完走したことで、雄紀は様々なコンディションで多くの良い経験を積み、長い距離を走ることができました。それは、将来このラリーに再び出場するチャンスが訪れた時のことを考えると、大きなプラスになるはずです。タイムがとても良かった区間もありましたし、より難しい区間ではペースが少し落ちましたが、これまでのイベントよりは良いペースをキープすることができていました。忍耐強く、十分に制御されたスピードで走れるようになったのは良いことですが、まだ学ぶべき点も多くあります。それと同時に、この厳しい戦いの場で、最も速いドライバーたちのレベルを知り、まだまだ道は遠く、やるべきことが多くあることを実感したと思います。今回、ひかるが出場できなかったのは残念でしたが、少なくともレッキは行うことができました。何よりも重要なのは、彼が順調に回復しており、ラリー・フィンランドと、その事前テストに参加できるということです。
ラリー・エストニアの結果
1 Georg Linnamäe/James Morgan (Toyota GR Yaris Rally2)
1h44m33.1s
2 Robert Virves/Craig Drew (Škoda Fabia RS Rally2)
+2.2s
3 Nikolay Gryazin/Andris Mālnieks (Citroën C3 Rally2)
+1m11.2s
4 Mads Østberg/Patrik Barth (Citroën C3 Rally2)
+1m23.2s
5 Hayden Paddon/John Kennard (Hyundai i20 N Rally2)
+1m59.2s
6 Jon Armstrong/Eoin Treacy (Ford Fiesta Rally2)
+2m20.1s
12 山本 雄紀/マルコ・サルミネン (Toyota GR Yaris Rally2)
+4m30.2s
■次回のイベント情報
山本と小暮の次戦は、8月1日から4日にかけてフィンランドで開催されるWRC第9戦「ラリー・フィンランド」です。彼らがこのWRC屈指の超高速グラベルラリーに出場するのは、昨年に続き2度目ですが、去年は比較的ローパワーなRally4車両での出場であり、Rally2車両によるWRC2出場は今回が初となります。また、現在ユバスキュラを拠点に活動している彼らにとって、ユバスキュラを中心に開催されるこのラリーは、第2のホームイベントといえる一戦です。
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