TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge Program

Training Report Vol.3 - WRC Rally Portugal / Rally Italia Sardegna

3月から4月にかけ、R2車両でのターマック(舗装路)ラリー3戦を終えた勝田貴元と新井大輝は、車両をR5に戻し、南欧のWRCイベントに参戦。これまで二人がトレーニングを重ねてきたフィンランドの道とは全く異なるポルトガルとイタリアのルーズグラベル(未舗装路)が舞台の、新たな挑戦となった。

Rali de Baiao / Amarante (2017年5月5-6日) 

2週間後に控えるWRCラリー・ポルトガル参戦に向け、R5車両のフィーリングを取り戻し、ポルトガルの特徴的なルーズグラベルステージにあうセッティングを見出すべく、ポルトガル国内のグラベルラリーに参戦。昨年のWRCポルトガルで使用された2つのステージを含む、総SS距離76.47kmのラリーであった。初日はスーパースペシャルステージ(1.46km)2本を終え、勝田が総合2位、新井が3位。翌日、勝田、新井共に スピン等あったものの、二人はラリーをリードし、接戦の末、最終ステージで新井が逆転し、総合1位となった。勝田も1.2秒差の総合2位でラリーを終え、チームはよい形でWRCポルトガル戦を迎えた。

勝田(6号車):「ステージはフィンランドとは全く別物なので、走らせ方やペースノートの作り方を変えて挑みました。この短期間のうちに、ペースノートのフィーリングが格段によくなっているのは自分でも驚くほどです。ヘアピンで足をすくわれスピンしてしまったのは悔しいですが、この難しいグラベルを理解する上で良い経験になりました。今回の反省を踏まえ、しっかり準備をして次戦に臨みます。」

新井(8号車):「総合優勝は初めてなのでうれしいです。今回は、ペースノートにおいて、コーナーの長さを10m単位で測るという変更を加えて臨みました。レッキ中の確認動作が増えて大変でしたが、精度が高くなって安定して走れるようになりました。またそのお蔭でブレーキングの精度も上がりました。WRCポルトガルに向けて良い練習になりました。」

  • 8号車 新井/マクニール組
    8号車 新井/マクニール組
  • 新井、勝田が1、2フィニッシュ
    新井、勝田が1、2フィニッシュ

RALLY REPORT

Rally Portugal (FIA世界ラリー選手権第6戦) - WRC2クラス
2017年5月18-21日(SS数19本、総SS距離349.17km)
総合結果
#45 勝田貴元/マルコ・サルミネン クラス14位、総合36位 (Ford Fiesta R5) 4:45:33.8
#44 新井大輝/グレン・マクニール リタイア (Ford Fiesta R5)

勝田、新井にとって、WRC2への参戦は昨年のラリー・フィンランド、今年2月のラリー・スウェーデンに続き3度目。

序盤から路面が荒れていたデイ2、勝田はSS4でステアリングラック破損によりデイリタイアを余儀なくされる。一方、新井はパンクやホイールの破損に見舞われ、大きなタイムロスをした。

デイ3、ラリー2ルールによって再出走した勝田は、午後のセッティングがうまく決まり、不利な走行順の中でもよい走りを見せたが、最終日は再び不運なエンジントラブルに見舞われた。最終ステージはなんとか走りきったものの、その後、ロードセクションでエンジンがストップ。コ・ドライバーのサルミネンと共に様々な方法を試みてなんとか再始動に成功し、遅着により失格となる10秒前という間一髪でゴール。勝田は最終ステージ終了時点では、クラス12位であったが、タイムコントロールへの遅着で4分50秒のペナルティを受け、最終的にクラス14位となった。新井はデイ3の午前中、ポップオフバルブやブレーキのトラブルを抱えながらも丁寧な走りで大きな問題なくステージをこなしていたが、この日の最終ステージSS15でコースオフし、リタイアとなった。勝田、新井 共に南欧グラベルの洗礼を浴び、ラリーの難しさを痛感する一戦を経験した。

  • 勝田/サルミネン組
    勝田/サルミネン組
  • 新井/マクニール組
    新井/マクニール組
Rally Italia Sardegna (FIA世界ラリー選手権第7戦) - WRC2クラス
2017年6月8-11日(SS数19本、総SS距離312.66km)
総合結果
#38 勝田貴元/マルコ・サルミネン クラス3位、総合14位 (Ford Fiesta R5) 3:43:38.4
#37 新井大輝/グレン・マクニール リタイア (Ford Fiesta R5)

サルディニアのステージは、様々な道のコンディションを含む。表面が目の細かいグラベルに覆われる軟らかい道の下には硬い岩や石が隠れており、路面の状況は刻々と変化する。同じステージを2度目に走る際はさらに岩や石が多くなり、勝田、新井にとっては前戦のポルトガルをも超える難しいラリーとなった。また30度を超える気温も体力を消耗させ、二人にチャレンジングな環境を与えた。

勝田・サルミネン組は4日間を通し、堅実なペースでミスのない走りを貫いた。デイ3、SS11走行中にエンジンが止まるトラブルやSS15でのパンクはあったものの大事には至らず、勝田はこれまで積み重ねてきたトレーニングの成果を存分に発揮し、WRC2クラス3位で表彰台を勝ち取った。

一方、新井・マクニール組はデイ1のSS1から不運に見舞われた。スタート前に起こった電気系統のトラブルによりペースノートが聞こえず、ワイパーも動かず視界が遮られる中での走行を強いられた。その後、ロードセクションで修理を試みたが直すことができずデイリタイア。デイ2は大きなトラブルなく走行を重ね、デイ3も最初のステージからよいタイムを刻んでいたものの、SS12でコースオフしデイリタイア。デイ4で再び出走したが、SS17でライン上の大きな石をヒットしドライブシャフトとサスペンションが壊れ、リタイアを余儀なくされた。イタリアに続き、新井にとっては厳しい戦いとなった。

  • 勝田選手
    勝田選手
  • 新井/マクニール組
    新井/マクニール組
勝田貴元選手
Takamoto Katsuta

ポルトガルでは、路面が荒れると予想していたので、パンク等のトラブルを起こさないように走りましたが、最初から最後まで本当に色々な事が起きた1戦でした。2日目、速さよりもノートラブルを目標に、うまく走行できていましたが、SS4でステアリングラックが折れて、デイリタイアとなりました。とても悔しかったですが、3日目は頭を切り替え、色々なセッティングを試して理解を深めながら走行しました。それにより、今回のような路面にあったドライビングスタイルについて方向性が見えてきました。精神的にすごく疲れたラリーでしたが、課題であったミスのないラリーができたので、その点は前回の反省点を活かすことができたと思いました。

イタリアはポルトガル以上に難易度の高いラリーでした。イタリアでもノートラブルを目標に走った結果、これまででベストなラリーができたと思っています。高い気温と荒れたコンディションの中で、ブレーキやタイヤを労り、クルマを傷めないスムーズなドライビングを心がけました。今自分にできるベストなドライビングを発見できたと思います。ラリーをこなすたびに、より落ち着いて挑めています。多くを吸収し、反省し、次に繋げるというステップをこれからも続けていきます。

勝田貴元選手
新井大輝選手
Hiroki Arai

ポルトガルの金曜日、2ループ目の轍や石は自分の想像を全て超えていました。避けるように心がけていましたが、パンクをしてしまい、ステアリングアームが曲がり、ホイールが衝撃で二つに割れてしまったので、翌日はその教訓からスプリングを柔らかくセッティングしました。土曜日の最終ステージでコースオフをして、エキゾーストから枯葉に引火。一瞬で車が炎に包まれました。今まで一緒に戦って来た車が燃えているのを見るのはとても辛かったです。様々なことを試し、たくさんのことを学んだラリーでした。

イタリアではエンジニアから事前テストでアドバイスを受けた所を修正しながら臨みました。ハイスピードで慣れた僕のドライビングスタイルだとブレーキに負荷が掛かり過ぎるので、あまり左足ブレーキングを強く掛けないよう心がけました。ステージを追うごとに感覚を掴むことができましたが、距離が10kmを越えるステージになるとブレーキがオーバーヒートしてしまう傾向がありました。問題なく走れたステージでは、スプリットではトップと遜色ないタイムで走行することが出来たので、ドライビングに関しては自信に繋げることが出来ました。
タイムが最終的に結果に結びつかなかったのは残念でしたが、焦ることなく今まで学んできた事を実践できるように精進していきたいです。

新井大輝選手
チーフインストラクター ヨウニ・アンプヤ
チーフインストラクター
ヨウニ・アンプヤ

ポルトガルではトラブルを避け、十分にマージンを取った走りから徐々にペースを上げていくことを目指しました。残念ながら両ドライバーともに金曜日からトラブルが起こってしまい、計画通りには行きませんでしたが、彼らの力を試すよい場となったのは確かです。

勝田、新井にとってこれまでで最も荒れた路面を経験したイタリアは、明暗が分かれる結果となりました。新井はブレーキのオーバーヒートに悩まされ、不運も重なり厳しい一戦となりました。ポルトガルからリタイアが続いてしまいましたが、辛い経験を乗り越えてくれることを期待しています。勝田はこれまで学んできたことを活かし、ミスのないラリーを貫きました。彼の課題であったペースノートについても自信を持てるようになってきています。努力が実を結び始めたことをうれしく思っていますが、気を緩めることなく、さらなる成長に向けてトレーニングを継続します。

チーフインストラクター ヨウニ・アンプヤ

Dear, reader…(読者の皆さんへ)

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