TOYOTA GAZOO Racing
ダカール2022へ向け、新型GRダカールハイラックスT1+の準備を完了

2021.11.17(水)- 22:00配信

TOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)は来年1月に開催されるダカールラリー2022に、新たに開発されたGRダカールハイラックスT1+で挑戦します。GRダカールハイラックスT1+の基本的な開発は完了しましたが、来年の年明け早々にスタートが切られるダカールラリー2022へ向けての改良は続けられます。ダカールラリーへの挑戦を通じたもっといいクルマ作りを進めてきた一つの成果として、この新型車両は、2011年から続けられているトヨタのダカールプログラムの中でも最も大きな技術的飛躍を遂げました。

GRダカールハイラックスT1+に新たに搭載される3.5リッターV6ガソリンツインターボエンジンは、発表されて間もない、トヨタのフラッグシップSUVである新型ランドクルーザー300 GR SPORTに搭載されるものをベースとしています。GRダカールハイラックスT1+では、これまで使用されていたものよりも低い回転域でのトルクを強化。車両総重量こそレギュレーションで規定されている2000kgへと増加しましたが、エンジン自体の軽量化により車両バランスなどの改善が図られています。FIAのレギュレーションにより、最大出力は298KW(約400馬力)、最大トルクは660Nmと制限されており、チームはエンジンに関してはほぼ市販状態のものをそのまま使うことができます。ターボユニットとインタークーラーもトヨタの市販標準部品です。レース車両ではインタークーラーの向きが変更されましたが、元々非常に高効率な部品なので、インタークーラー自体は市販のものを使用しています。

車体の大きな変更点のひとつはサスペンションで、ストロークはこれまでの280mmから350mmに延ばされ、32インチから37インチへと外形の大きくなったタイヤを最大限に活用できるようになります。また、タイヤ幅も245mmから320mmへと拡大されます。

タイヤの大径化に対応するため新たに採用されたアルミホイールも、T1+クラス開発における重要なポイントです。チームは排熱効果を考慮し、クリア塗装のみの、アルミ地肌を活かしたフィニッシュとしています。

ボディにおいては、2016年以来一貫してコア・コクピット・レイアウトと、フロントミッドにエンジンを搭載するレイアウトを採用してきています。今季からのレギュレーション変更により、T1+クラスの車両はスペアタイヤをこれまでの3本から1本減った2本しか搭載できないことになります。

ダカールラリー2022に参戦する新型GRダカールハイラックスT1+には、TGRがWRCやWECで採用してきたものと共通の新カラーリングを採用しました。また、2022年から新たに世界選手権となるFIA世界ラリーレイド選手権に参戦する新型ハイラックスもこのカラーリングとなり、TGRファミリーの一員として世界選手権に挑みます。長年にわたってTGRファミリーとしてダカールラリーに参戦してきたハイラックスがこのカラーリングとなることで、3つの世界選手権を戦うチーム全てが象徴的なGRマークを纏うことになります。このGRマークは、世界で戦うTGRのレーシングカーと、エキサイティングな市販車との強いつながりを示すものです。

ナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル組:レッドブル&TOYOTA GAZOO RacingカラーリングのGRダカールハイラックスT1+で参戦
ナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル組:
レッドブル&TOYOTA GAZOO RacingカラーリングのGRダカールハイラックスT1+で参戦

ダカールラリー2022では、チームは4台の新型GRダカールハイラックスT1+を投入します。ドライブするのは、2019年のダカールラリーでトヨタに初の勝利をもたらしたカタール人ドライバーのナッサー・アル-アティヤとフランス人ナビゲーター、マシュー・ボーメル。そして、2009年ダカールウィナーである南アフリカ人ドライバーのジニエル・ド・ヴィリエールは、ダカールラリー2022では、同じ南アフリカ出身のナビゲーター、デニス・マーフィとコンビを組みます。

ダカールラリー2021で初出場ながらステージ5まで上位争いを繰り広げた南アフリカ人コンビのヘンク・ラテガンとブレット・カミングス組も、完走を目指しリベンジ参戦。そして、4台目は同じく南アフリカ出身のシャミア・ヴァリアワとダニー・スタッセンがドライブします。

新型車両の調整は続けられており、その一環としてこの週末アル-アティヤとド・ヴィリエールは2021年南アフリカクロスカントリーシリーズ(SACCS)の最終戦に出場します。このラリーは、フリーステート州の都市パリス郊外を舞台都市として、400kmに及ぶバラエティ豊かな路面での戦いが繰り広げられます。T1+カテゴリーは今のところSACCSでは認められていないため、アル-アティヤとド・ヴィリエールは選手権ポイント外での参戦となりますが、SACCSのディフェンディングチャンピオンであるラテガン/カミングス組はこれまで戦ってきた仕様のハイラックスで参戦し、選手権ポイント獲得を目指します。

チームは南アフリカ国内での最終テストを終えた後、12月初旬にサウジアラビアへと車両を送るための準備に入ります。ダカールラリー2022の詳細なコースはまだ発表されていませんが、その路面状況は2020年、及び2021年大会と似たものになると予想されています。

ダカールラリー2022への挑戦を通して、TGRはもっといいクルマづくりを続けていきます。

チーム代表 グリン・ホール:
我々の新型GRダカールハイラックスT1+はここ数ヶ月にわたる開発で目覚ましい進化を遂げており、ダカールラリー2022へ向けての準備は完璧に整いました。開発段階から脱し、1月のレースへ向けた調整を続けて行くことになります。ランドクルーザーの新しいエンジンは信頼性が高く、市販状態のまま、エンジンにストレスをかけることなく最大のパフォーマンスを引き出すことができます。

ナッサー・アル-アティヤ:
新しいハイラックスには感銘を受けっぱなしです。特に新たに採用された大径タイヤで厳しい路面に対応できたことが素晴らしいです。エンジンのパワーとトルクも文句なく、この週末、レースコンディションでテストするのが待ち遠しいです。

ジニエル・ド・ヴィリエール:
この数ヶ月間にわたって新型車両の開発に力を入れてきたことで、かなり理想的なセットアップに近づけたと思います。今週末のレースで、最終的な改良の検証ができるはずです。全体的に、ランドクルーザーのエンジンこそが私にとってのハイライトで、とてもパワフルで、テストの中での信頼性もとても高いです。

ヘンク・ラテガン:
ダカールラリー2022を新型GRダカールハイラックスT1+で戦うのが楽しみです。SACCSでは新型車両で走れないのが残念ですが、テストで十分に走り込むことができましたし、特に新しい大径タイヤと延長されたサスペンションは本当に素晴らしいです。

シャミア・ヴァリアワ:
新たなV6エンジンは、最初から非常に印象的でした。V8バージョンの車両でSACCSを戦ってきましたが、新しい車両に乗れるのが待ちきれません。国内レースは残り1戦なので、その後は意識の全てをダカールへと切り替えます。

仕様諸元

エンジン
V35A市販仕様(ランドクルーザー300仕様)
エンジン種類
ガソリン ツインターボ
エンジン制御規則
FIA規定パワーカーブによるブースト圧制限
最大出力
298 kW
最大トルク
660 Nm
エンジンマネージメント
モーテック
トランスミッション
SADEV製6速シーケンシャル
ディファレンシャル
トリプルLSD(前後及び中央)
クラッチ
セラミック製ツインプレート 直径215 mm
シャシー構造
チューブラーフレーム
ホイールベース
3,140 mm
全長
4,810 mm
全幅
2,300 mm
全高
1,890 mm
車重
2,000 kg (FIA規定最低重量(乾燥時))
車体
トヨタ ハイラックス ダブルキャブ ピックアップ コンポジット
フロントサスペンション
ダブルウィッシュボーン ストローク350mm
リアサスペンション
ダブルウィッシュボーン ストローク350mm
ホイール
メソッドレースホイール製 17インチ
タイヤ
BFグッドリッチ製 37インチ
燃料タンク
FT3安全セル 540リッター