- Round3
- 全日本ラリー選手権 第3戦 久万高原
レポート
2戦連続で2位表彰台を獲得
スポーツ制御CVTで厳しいラリーを走り切り、多くのデータを得る
2017年シーズンの全日本ラリー選手権第3戦「久万高原ラリー Supported by Sammy」が、4月29日~30日に開催され、TOYOTA GAZOO RacingのTGR Vitz CVT(大倉聡/豊田耕司組)は、JN3クラスで2位表彰台を獲得した。
チームとしての今シーズン初参戦となった第2戦「ツール・ド・九州2017 in 唐津 Supported by Sammy」でクラス2位に入り、スポーツ制御CVT(無段変速機)の可能性を示したTOYOTA GAZOO Racing。CVT担当エンジニアの児島星は開幕戦を踏まえ、「唐津ではCVTでも十分戦えることを証明できました。ただ、改善すべき点がまだたくさんあります。今回は特にドライバーから要望のあった発進性能を改善しました」と語る。また、チーフメカニックの宮本昌司は、整備を担当する凄腕技能養成部の社員メカニックに関して、「唐津では必要以上に時間がかかってしまう作業があった」と振り返った。
迎えた久万高原ラリーは、愛媛県久万高原町周辺を走行するターマック(舗装路)ラリーが舞台。サービスパークが置かれる美川スポーツランド周辺のコースは、標高1000m級の高地というだけでなく、1本のSS(スペシャルステージ・タイムアタック区間でありタイムが計測されるコース)が20km以上を超える長距離コースを含み、ラリーカーだけでなく、タイヤにも厳しいラウンドと言える。4月29日朝、久万高原町役場前でセレモニアルスタートが行われ、ラリーは華々しく幕を開けた。
ラリー初日は爽やかな青空が広がり、路面状態はドライ。大倉選手はSS2で水温上昇というトラブルに見舞われながらも、クラス2位につける。サービスで整備作業を挟んだ午後の走行では、下りがメインとなるSS3のタイムで2位に5.9秒差をつけるベストタイムを記録。SS4を2番手タイムでまとめ、初日をクラス2位で終えた。「特に下りの区間ではCVTの強みを感じます」と、大倉選手は手応えを語る。
ラリー2日目も23.85kmの長距離を走るSS5で2番手タイムを記録。さらに、SS6では昨日に続き、本ラウンド2度目となるベストタイムを獲得する。午後の走行も安定したペースで走り切り、2戦連続で2位表彰台を獲得。「この厳しいラリーをフィニッシュできてホッとしています。これだけ長い距離のSSを大きな問題なく走り切れたことで、開発陣も信頼性に自信を持ったはずです」と、大倉選手はCVTの信頼性を高く評価した。
チーム監督を務める豊岡悟志は、「今回はSSでのベストタイムを2回獲得できましたし、2戦連続2位表彰台で競争力の高さを証明できました。一方で課題もはっきりしているので、次戦までに対応したいですね」と、気を引き締めている。
めざせ凄腕メカニック 2017 Vol.02
~CVTのデータを蓄積、課題を明確に。チームとしては対応力の向上~
◆豊岡悟志(チーム監督)
参戦テーマ:チームとしての対応力の向上
「ラリー前に心配していた耐久性に関しては大きな問題はありませんでしたが、自社に戻って入念にチェックする必要があるでしょう。今後、マシンへのダメージの大きいグラベル(未舗装路)走行では、様々なトラブルが発生する可能性があります。その辺りを事前に想定して、しっかりと準備したいです。最初の2つのSSで我々のミスから冷却の問題があり、ドライバーには迷惑をかけてしまいました。この失敗から学び、更にチーム力向上に努めます」
◆宮本昌司(チーフメカニック)
参戦テーマ:動きの無駄を意識して、動作ひとつひとつの精度を考える
「今回は、メカニック同士がお互いの動きをもっと把握して、無駄な動きをなくしたいと考えていました。そこで今まで以上に声を出し合って自分の動きを他のメンバーに伝えるよう心がけました。メンバーの無駄な動きが減ったことが、私もチーフメカニックとして耳で聞いていて分かりました。ただ、まだ無駄な動きが残っているので、メンバーで振返りを行ってさらに改善したいと思います。新たな課題としては、突発的なアクシデントがあると、やはり浮き足立ってしまうということです。ラリーでは予想外の事態への対応力が問われるとあらためて思いました。こちらも、次回に向けて改善したいと思います」
◆児島星(CVT担当エンジニア)
参戦テーマ:CVTの信頼性確保と発進時の加速感不足への対応
「耐久性に関しては想定していた通りで、大きな問題はありませんでした。今回、大倉選手からのリクエストもあり発進性能を改良しましたが、それでも『低速域で加速が鈍る時がある』という指摘がありました。まずは制御面をさらに改良して、今後はハード面に関しても改良を検討していきます。大倉選手からは『CVT車両はもっと速くなるはず』と言われています。技術陣としても課題を与えられたと考えていますし、あらためて気が引き締まる思いです」
◆豊田耕司(コ・ドライバー)
参戦テーマ:CVTのデータ収集と、すべてのステージでベストタイムから1kmあたりの差を2秒以内とする
「今回、100kmを超えるSSの距離をしっかり走り切れたのは大きかったです。厳しい環境下でCVTにも負担がかかっているので、次に活かせるデータを持ち帰れたはずです。ライバルに対しても前戦より良い勝負ができました。クルマも熟成されてきていますし、ドライバー大倉の成長もあります。もちろん勝つのは簡単ではありませんが、背中は見えています。次とは言いませんが、今シーズンの中盤戦以降には対等に戦えるようになりたいと思います」
PICK UP
JN4で連覇を狙う、曽根崇仁(P.MU☆DL☆SPM☆INGING86)
2016年シーズン、トヨタ86を駆りJN4クラスで自身初の全日本ラリー選手権チャンピオンに輝いた曽根崇仁/桝谷知彦組。ドライバーの曽根は、九州地区で2年連続チャンピオンになった後、2000年から全日本選手権に参戦するベテランだ。これまでシリーズタイトル獲得のチャンスがありながら、残念ながらもう一歩届かなかったが、昨年はグラベル(未舗装)ラウンドの福島、洞爺で勝利。それ以外のラリーでも順調に表彰台に上がり、54歳にして初めてチャンピオンとなった。
「昨シーズンに引き続きJN4クラス2連覇を目標に掲げて戦っています。ラリーを始めたきっかけは、走ることが好きだったからですね。そして、僕がラリーを始めた頃に憧れの選手がいたんですが、自分が若いドライバーの目標にしてもらえるよう、長く競技を続けています」
第2戦唐津で勝利し、第3戦久万高原も圧倒的なスピードで制して2連勝を飾った。「久万高原ラリーはこれまで勝ったことがなく、一度は勝ちたいとずっと思っていたので、本当にうれしいです」と、喜びを表現した。現在ドライバーズポイントランキングで首位に立っているが、チームは2連覇を確実にすべく、今シーズン中にトヨタ86後期型を投入する計画だという。
もっとラリーを楽しもう
今年の久万高原ラリーでは、久万高原町役場前でセレモニアルスタートが初めて行われました。ラリーカーのスタートに先立ち、地元の有志が戦国時代から続く地元の伝統芸能「久万山五神太鼓」を披露。その後、迫力満点な太鼓のパフォーマンスをバックに、ラリーカーがコースに向かいました。また、両日とも好天に恵まれたこともあり、美川スポーツランドに設けられたサービスパークとイベント広場にはたくさんのラリーファンが集まりました。イベント広場から観戦エリアへ徒歩で移動できるため、多くのファンが迫力溢れるラリーカーの走行シーンを楽しんでいました。
次戦予告
- 5月19~21日 全日本ラリー選手権 第4戦
- 「若狭ラリー 2017」
5月19日~21日に開催される第4戦「若狭ラリー2017」。海と山々に囲まれたターマックラリーとして開催。若狭湾に面した複合リゾート施設、うみんぴあ大飯をメイン会場として、TOYOTA GAZOO RacingブースではヤリスWRCレプリカ等を展示予定。もちろんGAZOO Ladyも皆様と一緒にラリーを盛り上げます!!
関連リンク
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全日本ラリー選手権に参戦
TOYOTA GAZOO Racingは、全日本ラリー選手権のJN3クラスに「TGR Vitz CVT」で参戦する。参戦3年目となる2017年シーズンは、4月7日(金)~9日(日)、佐賀県唐津市で開催される第2戦「ツール・ド・九州2017 in 唐津」がチームにとっての初戦となる。 -
全日本ラリーとは
日本の林道を疾走する、国内最高峰のラリー競技、全日本ラリー選手権 -
チーム
2015年4月、トヨタに発足した凄腕技能養成部の社員メカニックが、全日本ラリーにメカニックとして参戦。競技中に整備や修理などを行うサービス作業だけではなく、実戦の経験を積みながらラリーカーを製作するなど、ラリーを通じて様々な技能を学んできた。