Round4
全日本ラリー選手権 第4戦 若狭
レポート
全日本ラリー 2017年 第4戦 若狭 レポート

クラス2番手を走行するもシーズン初のリタイア
悔しい結果のなかにも課題と手応えを感じる

 2017年シーズンの全日本ラリー選手権第4戦「若狭ラリー2017 Supported by Sammy」が、5月19日~21日に開催され、TOYOTA GAZOO RacingのTGR Vitz CVT(大倉 聡/豊田 耕司組)は、JN3クラス2位を走行中にマシントラブルでストップ。今シーズン初のリタイアに終わった。

ラリー2日目も2位をキープし、快調な走りを続けていたものの、SS12で駆動系のトラブルが発生、リタイアとなった。
ラリー2日目も2位をキープし、快調な走りを続けていたものの、SS12で駆動系のトラブルが発生、リタイアとなった。

 2戦連続でJN3クラス2位という成績を残したTOYOTA GAZOO Racing。今回はその2戦で出た課題の改善に取り組みラリー本番に臨んだ。チーフメカニックを務める宮本昌司は、「視界向上のために、シートの高さを少しだけ上げています」と、今回に向けての改良点を明かす。また、CVT担当エンジニアの児島星は「低速域での加速性能を向上するように制御を変更しています」と、こちらも前戦からの短い調整期間にもかかわらず、マシンに変更を施した。

ラリー2日目も2位をキープし、快調な走りを続けていたものの、SS12で駆動系のトラブルが発生、リタイアとなった。
ラリー2日目も2位をキープし、快調な走りを続けていたものの、SS12で駆動系のトラブルが発生、リタイアとなった。

 第4戦若狭は、福井県大飯郡おおい町周辺で開催されるターマック(舗装路)ラリー。若狭湾に面した複合リゾート施設「うみんぴあ大飯」にサービスパークが置かれ、ここを起点に山岳エリアのコースを走行する。SS(スペシャルステージ・タイムアタック区間でありタイムが計測されるコース)は道幅が比較的狭く、曲がりくねった低速路が中心。リズムをとるのが難しいうえに、「前走車がインカット(最短でコーナーを曲がるために舗装されていない部分を走行するテクニック)した部分に砂利が路面に出やすいので注意が必要」と、ドライバーの大倉選手は警戒する。
 ラリー初日となった5月20日、大倉選手は「得意なコースだったので、クラスベストタイムを狙っていた」と振り返ったSS7で0.1秒差ながらもベストタイムを獲得。その他のSSもミスなく走行し、クラストップから約30秒差の2番手で初日を終えた。「2回目のサービスでの整備で足回りのセッティングを変更しましたが、あまりタイムに変化はありませんでした。それでも、クルマの全体的な実力が上がっていることを実感しています」と、試行錯誤の中でも手応えを感じたという。
 ラリー2日目も順調に2位を走行していた大倉選手だったが、SS12 のスタートから2.6km地点で駆動系トラブルにより、今シーズン初のリタイアを余儀なくされてしまう。「悔しい結果になってしまいました、終始全開で攻めてトップを狙っていました」と大倉選手はコメント。チーム監督を務める豊岡悟志は、「トラブルの原因をしっかり調べることで、チームとして学ぶことができると信じています」と、次のラリーに向けて前向きに語っている。

めざせ凄腕メカニック 2017 Vol.03
~作業に慣れた中で足りない点はないか、原点に戻って見直しを行う~

◆豊岡悟志(チーム監督)
参戦テーマ:原点に戻って見直しを行う
「シーズンが進む中でサービスにおける作業が定型化されて、『慣れ』で行っていないかという危惧がありました。実際、我々のサービスを訪れた方から『ガレージジャッキの扱いが危険ではないか?』との指摘もありました。客観的にみれば、まだ我々には至らない点がたくさんあるはずですし、あらためてチェックすると、確かに色々と改善点が見つかりました。自分たちで『気づき』、成長することにこの活動を行う意味があります。今回、各スタッフの作業を見ていると、今まで以上に自分たちで考えて動こうという意識が見えました。すぐにすべてがうまくいくわけではありませんが、常に高い意識を持つことが大切だと、あらためて痛感しています」

いくつかの改善点が見つかった若狭ラリー。チーム全員で高い意識を持って取り組む大切さを確認した。
いくつかの改善点が見つかった若狭ラリー。チーム全員で高い意識を持って取り組む大切さを確認した。
ドライバー大倉選手(右)の意見や要望に、真剣に耳を傾けるチーム監督の豊岡(左)。
ドライバー大倉選手(右)の意見や要望に、真剣に耳を傾けるチーム監督の豊岡(左)。

◆宮本昌司(チーフメカニック)
参戦テーマ:ターマック(舗装路)仕様のスペック(仕様)確定と、後半のターマック戦に向けた課題の整理
「次のモントレー(第5戦嬬恋)で今シーズン前半のターマック連戦が終了します。本番が続くと、どうしてもセッティングで手の出せないところが出てきてしまいます。それもあって、シーズンを折り返す今回のタイミングで、CVTの仕様も含めてターマックでベストと言える仕様を固めたいという思いがありました。今回の競技中もバネレート(サスペンションスプリングの固さ)を変更したのですが、現場でのドライバーからの要望も含めて、ある程度柔軟性をもって取り組まなければならないとあらためて実感しました。まだまだ試行錯誤も多いですし、学びの最中ではありますが、後半のターマックラリーも今回の若狭で投入した仕様でしっかり戦っていくつもりです」

◆児島星(CVT担当エンジニア)
参戦テーマ:発進時や低車速時の再加速性向上のため、CVT制御を変更。その改良の成果を確認する
「ドライバーの大倉選手からは、実際に走った後で『フィーリングが良く、特に発進や加速時に進化が感じられた』とフィードバックがありました。今回は、それほど大きな改良ではありませんでしたが、効果的だったようです。SSベストタイムは1回のみでしたが、クラストップとの差は確実に縮まっているということが、大倉選手からのコメントで裏付けられたと思っています」

いくつかの改善点が見つかった若狭ラリー。チーム全員で高い意識を持って取り組む大切さを確認した。
いくつかの改善点が見つかった若狭ラリー。チーム全員で高い意識を持って取り組む大切さを確認した。
ドライバー大倉選手(右)の意見や要望に、真剣に耳を傾けるチーム監督の豊岡(左)。
ドライバー大倉選手(右)の意見や要望に、真剣に耳を傾けるチーム監督の豊岡(左)。

◆豊田耕司(コ・ドライバー)
参戦テーマ:CVTのデータ収集と、すべてのSSでベストタイムから1kmあたり1秒以内の差とする
「僅差でしたが、1日目にベストタイムを獲得できました。その他のSSでも、ライバルに遅れていますが、これまでの唐津や久万高原と比較すると、確実に差が縮まってきました。クルマも、人も、どんどん昨年のチャンピオンに近づいているという実感があります。CVTという新しい技術でのチャレンジですし、今回のトラブルも貴重なデータになったはずです。次に向けて、チームがしっかり改善してくれると信じています」

PICK UP
JN2クラス連覇を目指す明治慎太郎(YHGd高崎くす子86)

 JN2クラスに参戦する明治慎太郎/北田稔組は、2016年の同クラス年間チャンピオン。今年で38歳になるドライバーの明治は、2003年と2004年に東日本地区で2年連続チャンピオンを獲得後、2007年から本格的に全日本選手権に参戦してきた。2009年に全日本ラリー初優勝を果たした後は、特にターマック戦で成績を残してきたが、昨年は第6戦洞爺と第7戦北海道で連勝するなど、グラベル(未舗装路)戦でも好成績を残す。そして、ターマック戦でも3度の表彰台を獲得し、ついに自身初となる全日本ラリー選手権チャンピオンを獲得した。

2連勝で若狭に臨んだ明治 慎太郎/北田 稔組のトヨタ86。相次ぐトラブルに見舞われるも7位完走を果たした。
2連勝で若狭に臨んだ明治慎太郎/北田稔組のトヨタ86。電気系トラブルに見舞われるも修復し7位完走を果たした。

「昨年はグラベル戦での優勝がタイトル獲得の原動力となったので、今年はターマック戦で優勝してチャンピオンを獲得することが目標です。昨年、初めて86に乗った時は、自分のドライビングスタイルにピッタリのクルマだと思いました。86はコーナリング性能の高さで勝負するクルマだと考えています。走っていて楽しいクルマですね」
 今シーズンは、第2戦唐津と第3戦久万高原で2連勝。クラスタイトル2連覇に向けて好スタートを切った明治だが、第4戦若狭は初日のSSを走行中に電気系トラブルが発生してストップ。エンジンを再始動するまで約8分間を要し、大幅にタイムロスしてしまった。その後、念のためサービスの整備でエンジンまわりの配線を交換したあとはトラブルが解消し、7位で完走を果たした。
「3連勝を狙っていただけに順位は残念ですが、サービスのメカニックに短い時間で配線を交換してもらったおかげで完走することができました」と、チームへの感謝を表した。

2連勝で若狭に臨んだ明治 慎太郎/北田 稔組のトヨタ86。相次ぐトラブルに見舞われるも7位完走を果たした。
2連勝で若狭に臨んだ明治慎太郎/北田稔組のトヨタ86。電気系トラブルに見舞われるも修復し7位完走を果たした。

もっとラリーを楽しもう

TOYOTA GAZOO Racingブースでは、「カメラ女子」たちがヤリスWRCレプリカを囲んで記念撮影。
TOYOTA GAZOO Racingブースでは、「カメラ女子」たちがヤリスWRCレプリカを囲んで記念撮影。

 イベント会場では、日本を代表するラリードライバーであり、WRC(世界ラリー選手権)で日本人初の優勝者となった経歴を持つ篠塚建次郎さんのトークショーが行われました。WRC参戦当時のお話や、今シーズンからトヨタがWRC復帰を果たしたことなど、ラリーファン以外にもわかりやすい語り口でトークを行なっていました。また、GAZOO Lady参加のじゃんけん大会なども開催され、たくさんのファンが会場に集まりました。
 そして、今回の若狭ではTOYOTA GAZOO Racing WOMANのイベントで「東京カメラガールズ」の撮影ツアーが行われ、20名のカメラ女子(おしゃれに写真を楽しむ女性)たちが参加。観戦コースやサービスパークで思い思いにラリーシーンの撮影を堪能していました。

TOYOTA GAZOO Racingブースでは、「カメラ女子」たちがヤリスWRCレプリカを囲んで記念撮影。
TOYOTA GAZOO Racingブースでは、「カメラ女子」たちがヤリスWRCレプリカを囲んで記念撮影。

次戦予告

6月8~11日 全日本ラリー選手権 第5戦
「モントレー2017 in 嬬恋」

6月8日~11日に開催される第5戦「モントレー2017 in 嬬恋」。広大なロケーションをバックに展開されるターマックラリーです。首都圏からのアクセスも良好で、サービスパークやイベント会場が設置されるパルコールつま恋から徒歩でアクセスできる林道SSや特設SSも予定されており、観戦のしやすさも魅力です。TOYOTA GAZOO RacingブースではヤリスWRCレプリカ、2016年の全日本ラリーを戦ったTGR Vitz GRMN turbo等を展示予定でお待ちしております。