ニュルブルクリンクへの挑戦2016
3.15 富士SWテスト走行レポート
3月15日、富士スピードウェイ本コースを使用して、TOYOTA GAZOO Racingのニュル24時間耐久レースのテスト走行を行った。TOYOTA GAZOO Racingニュルチームの本格始動である。エンジニア/メカニックは昨年からマシンの製作を行い、この日を迎えた。8人の若いメカニックは、まだ個々の動きにたどたどしさや無駄があるものの、マシンの調整に余念がない。
実は2016年はニュル24時間プロジェクトの原点「人とクルマを鍛える」がより色濃くなっている。実はここ数年を振り返ると、TOYOTA GAZOO Racingはニュル24時間で好成績を収めている。ただ、このプロジェクトは“レースに勝つ事”が目的ではなく、このレースで培った技術やノウハウを量産車にフィードバックさせることが最も重要なことである。
「ニュル24時間は“いいクルマづくり”を身につけるための活動です。しかし、人間は“勝つ”と欲が出てしまうのも事実です。すると本質がズレてしまうので、それを本来のポジションに戻す必要がありました」と、チーム監督の金森信明は語る。
今年のメカニックは昨年から引き続き担当する4名と新たに加入した4名の8名。平均年齢30代前半と言う若手主体のチームである。その1人に話を聞くと、「チームは8人なので、できる/できないではなく、やらなければクルマは走るどころか組み上がりません。これまでの部署では自分の領域だけをやっていればよかったのですが、ここではクルマ全てを知る必要があります。先輩に怒られながら日々勉強ですが、辛いと思ったことはありません。「クルマが好き」ですから。
今回のテスト走行には、すべてのドライバーが集結した。暫定ながらも白/赤を基調とするTOYOTA GAZOO Racingの新デザインのレーシングスーツ姿は新鮮で、ニュル本戦へのチームの気持ちが高まった。
テスト走行は3つのモデルがそれぞれの開発状況に合わせたテストを行った。最も順調だったのがLEXUS RC。ドライバーの1人である蒲生尚哉選手は、「順調ですよ。昨年はパワーが足りなくて苦労しましたが、今年はエンジンとシャシーのバランスがよくなっているので、乗りやすいですよ」と語る。
TOYOTA C-HR Racingは、ピットアウト/インを繰り返していたので、初期トラブル続出と思いきや、ドライバーの1人佐藤久実選手は「パワートレインに若干の問題はありますが、それ以外は問題ありません。ピットイン/アウトを繰り返しているのは、細かなセッティングを行っていたからですよ」と。
その一方、LEXUS RC Fは細かいトラブルの調整などで、他の2台と比べるとピットにいる時間が長かったものの、同時にテストを行なっていたGT3マシンに遜色ないタイムを計測。ドライバーの1人である井口卓人選手は「思っていたよりも走り込めていないのは事実ですが、感触は悪くないと思っています」と語ってくれた。
各ドライバーに8人の若手メカニックの印象を聞くと、「動きもキビキビしているし、ドライバーが何を求めているかもよく理解しています。今までの国内テストでは「本当に大丈夫かな?」と心配することもありましたが、今年は特に心配することもなく終えることができました。もちろんまだまだ経験が必要ですが、これまでのメンバーもニュル24時間の時には凄い成長を感じていたので、今年も頑張って欲しいです」と、人も着実に育っていることを実感できた。
ただ、ドライバーのアニキ的存在である木下隆之選手は、「まだ、コミュニケーション不足な部分もありますね。これから彼らと一緒に過ごしたり、ご飯を食べたりして、腹を割って話をして何でも言い合える“信頼関係”を築きたいですね」と。
テスト走行は事故もなく無事に終了。マシンはファクトリーに戻ってから、今回のテストで生まれた課題の改善/修正、カラ―リングなどを施し、その後ドイツのTMG(Toyota Motorsport GmbH)で社員メカニックたちによる調整を行い、4/15-17に開催されるクオリファイ(QF)レースやVLN2へ参戦する。